第15話 包囲網と、終わりの始まり
絶望的な連
どうするんでしょうか?
凛夏は、心の避難所である山本勇次の配信枠で、
リスナーたちと新作小説のプロット……ではなく、
昨夜の騒動について報告会を開いていた。
「……で、音楽番組とのコラボイベントに
出ることになっちゃいました」
『クリスタル様の提案だよねw』
『連が貢献度1位でミサキちゃんを総合1位にしたら、
みんなで連の枠に行くってやつ!』
コメント欄が盛り上がる中、
凛夏は苦笑混じりに付け加えた。
「連くんから『戻ってきて』ってDMが
2通も来たんですけど、
無視してたら配信にまで乗り込んできて。
……正直、怖かったです」
このコメントを見た勇次は、
画面の向こうで椅子から転げ落ちんばかりに大爆笑した。
「あははは! 自分からブロックしておいて何してんのアイツ!
ギャグの才能あるわ!」
その時、画面中央に
『クリスタルからコラボ配信申請』の通知が躍った。
「えっ、王者から!? 勇次さんにも来てます?」
「来てるね。何これ、怖いんだけどw」
二人が「承認」をタップした瞬間、
画面は5分割のコラボモードへと切り替わった。
そこにはクリスタル、山本勇次、大西直也、
そして直也の親友であるトップライバー、健太の姿があった。
「……あの、俺、何で呼ばれたん?
クリスタルとサシでコラボや思って
正装してきたんやけど」
健太の間の抜けた一言が、豪華すぎる画面に響き渡った。
「いきなりですまんな。直也、例の件や」
クリスタルが重厚な声で切り出すと、
直也がすぐに察して頷いた。
「ミサキのことだよね?」
「えっ、私ですか?」
驚く凛夏をよそに、勇次がニヤリと笑う。
「どうせ蓮の件だろ」
「せや。音楽番組コラボイベント
『The ミュージックサバイバル』にミサキを出す。
条件は昨日言うた通りやが……
正直、連に貢献度1位を維持させたまま、
ミサキを総合1位に押し上げることは可能やと思うか?」
クリスタルの問いに、健太は鼻をほじらんばかりの
無関心さで答えた。
「連? 知らんなぁ。
そんな無名のライバーにそんな資金力あるん?」
「あいつの事務所『ダブルスター』の社長は、
もう連を見捨てたらしいからな。
事務所のバックアップも期待できんだろ」
直也の情報に、凛夏は
「社長、連くんを見捨てたんですか!?」
と目を丸くする。
勇次は呆れたように付け加えた。
「普通に初見リスナー集める努力すればいいのに、
なんであんなにミサキちゃんに執着するのかねぇ」
この地獄のような「公開裁判」を、
サブ垢で潜んでいた連(勝利)は、震えながら見ていた。
コラボ中は入室通知が出ないため、
誰も彼がいることに気づいていない。
「……見てるリスナーに言うとくわ」
クリスタルが画面を射抜くような目で告げる。
「別に連の枠に行きたいなら行けばええ。
止めへん。ただ、あそこが今、何でそんなに過疎っとるんか。
その理由は、みんなが一番よう分かっとるはずやで」
絶体絶命の連は、最後の望みを託して、
社長ではなく担当マネージャーに泣きつきのメールを送った。
しかし、それを受け取ったマネージャーは、
デスクの前で石化した。
「……何、これ。なんでこっちに送ってくるのよ」
いつもは社長を「兄貴」と呼んで
直接やり取りしているはずの連が、
自分にすがってきている。
しかも、内容は
『ミサキを1位にするから助けてほしい』という支離滅裂なもの。
「ミサキちゃんがサバイバルに出るのは知ってるけど……連が1位を狙うって、何? 執着の仕方が怖すぎるんだけど」
頭を抱えるマネージャーに、
隣の席にいたミサキのマネージャーが冷ややかに笑う。
「ミサキ、今はトップ層の姫ですからねぇ。
あのクリスタルがVIP会員ですよ?
多分、彼女をダシにしてトップ層と繋がりたいんでしょ」
「担当変わってくださいよぉ」
「嫌に決まってるでしょ!」
連のマネージャーは絶叫し、
社長の元へ駆け込んだ。
「社長ー! 連が限界突破してます!」
社長は画面も見ずに、鼻歌を歌いながら答えた。
「ああ、連? 『ミサキは諦めろ』って返しておいて。……っていうか、次の契約更新、もうストップしちゃおうかな……」
数分後。
『事務所としては一切協力できません。
自分のことは自分で。
あと、今後の契約については追って連絡します』
マネージャーからのあまりに事務的、
かつ絶望的な返信を読み、
連はスマホを持ったまま白目を剥いた。
「……クビ? 俺、事務所クビになるの……?」
希望に燃えていたはずのイベント前夜。
連の視界は、どす黒い霧に包まれていった。
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