第14話 王者の無茶振りと逆転の条件
とんでもない条件が連を焦らせます
連(勝利)からのコメントとギフトがピタリと止まった。
ミサキ(凛夏)は、彼が恥をかいて退室したのだと思い、
努めて明るく話題を切り替えた。
「さあ、気を取り直して!
小説の新作プロットの話でもしよっか」
枠内は再び、いつもの賑やかさを取り戻す。
トップ層が入れ代わり立ち代わり入室しては
「ミサキちゃん、お疲れ!」と去っていく。
そのたびに「ミサキ枠レベル」の経験値が
モリモリと上昇していく光景は、もはや圧巻だった。
元連リスナーたちが
『トップライバーの枠に迷い込んだみたいやね』
と感心していると、画面にド派手なエフェクトが走る。
最高級ファンクラブ会員の証を背負い、
王者クリスタルが再降臨した。
「クリスタル様、いらっしゃいませ!」
ミサキが元気に挨拶したその時。
画面の下で小さなハートマークのスタンプが跳ねた。
(……え?)
連である。
クリスタルの威圧感にビクッとした連が、
スマホを落とした拍子に操作を誤り、
あろうことか「大好き」のハートを送ってしまったのだ。
「連くん……まだいたの?」
ミサキの引きつった声に、
リスナーたちも
『マジか』
『退室したふりして潜ってたのか』
と驚きを隠せない。
連は真っ赤になって
「ち、違う、これは事故だ!」
と言い訳する間もなく、王者の目に留まった。
『……連? ああ、直也が言うとった、
ミサキをブロックしたっていうアホな男か』
クリスタルの容赦ないコメントに、
連は蛇に睨まれた蛙のように硬直した。
(なんで大西直也がそんなこと知ってんだよ!?
ミサキ、お前バラしたのか!?)
冷や汗を流す連をよそに、
リスナーが状況を補足する。
『さっきミサキちゃんに
「助けてほしい」って泣きついてましたよ』
『ミサキちゃんは秒で断ってましたけどw』
『ふーん、ちょっとギフトランキング見せてな……。
……なんや、レベルの割に人がスッカスカやんけ。
誰一人、助けに行こうっていう奇特な奴はおらんのか?』
クリスタルの問いに、元連リスナーがバッサリ切り捨てる。
『あそこに行くとギフト煽られるし、楽しくないからもう嫌です』
愕然とする連に、
クリスタルがニヤリと笑うような提案を投げ込んだ。
『ミサキ、お前歌上手かったよな。
今度ある音楽番組コラボイベント、出えへんか?
1位は確約でオリジナル曲も作ってもらえる。
それでな……もし連が協力してミサキを1位にできたら、
ミサキのリスナー全員で
一回連の枠に行ったるっていうのはどうや?』
ただし、とクリスタルは付け加える。
『条件は、
イベントのミサキへの貢献度1位が「連」であること。
それ以外は認めへんで』
「賛成!」
「それなら面白い!」
コメント欄が一気に沸き立った。
しかし、当のミサキは乾いた笑いを浮かべる。
「クリスタル様、それほぼ無理ゲーじゃないですか?
プロのアーティストだっているイベントですよ。
みんなで頑張れば可能性はあっても、
貢献度1位を連くんに固定するなんて……」
『その位の努力もせんと、許してもらえると思うなや』
クリスタルの言葉は重い。
『そもそも、ブロックされたんはミサキが悪かったんか?』
「……動画で愚痴ったのは、私にも非がありますけど……」
ミサキが言葉を濁した瞬間。
あの「悪口証拠動画」を送ってきたリスナーが
割って入った。
『ミサキちゃんは悪くない!
バカにした発言をした連くんとももかちゃんが
100%悪いです!』
『……やそうや。なら、連が死ぬ気で努力するべきやな』
クリスタルの断言に、ミサキも覚悟を決めたように呟いた。
「……クリスタル様がそこまで言うなら、イベント、出ようかな」
その瞬間、画面の向こうで連は天を仰いだ。
(1位……!? プロ相手にミサキを1位にするのに、
一体いくらかかるんだよ! 俺の貯金、全部吹っ飛ぶぞ……!)
再起のチャンスという名の
「超高額な罰ゲーム」。
連はガタガタと震えながら、
計算機のアプリを開こうとして指を滑らせた。
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