第10話 計算違いの「ガチ恋」再利用計画
ちょっとおバカな連が登場しますw
配信開始から30分。
連(勝利)は、自分のスマホ画面を見て
深い溜息をついた。
コメント欄を埋めているのは、
白百合ももかの熱烈
(だが中身のない)なメッセージのみ。
かつて「新人期待の星」と
持て囃された面影はどこにもない。
(……静かすぎる。バグか?)
現実逃避気味に別端末を起動し、
入室通知をオフにした状態で
山本勇次の枠を覗き見る。
そこには、
数えきれないほどのリスナーがひしめき合い、
祭りのような熱気で溢れていた。
当然、その中心には
「ミサキ」が楽しそうに笑っている。
「白百合ももか:連くん、みんな最近どうしたんだろー?
全然来ないね」
ももかの無邪気な問いかけが
連の胸に突き刺さる。
「……いるところには、いるんだけどな……」
「白百合ももか:ミサキをブロックしてから、
当時の人たちガタッと来なくなったよね。
信者の子もいたのに」
「……ミサキの話はやめろって」
連が苛立ちを隠せずにいると、
画面に『社長が入室しました』という通知。
社長は閑散としたコメント欄を一瞥し、
容赦ない一言を投げ込んだ。
『社長:……え、何この状況? 放送事故?』
「『何この状況?』は俺が聞きたいですよ!」
連は思わず社長に対して逆ギレ気味に叫んだ。
『社長:え、なんで俺怒られてんの? 怖いんだけど』
社長の困惑したコメントに、
「やべっ」と我に返った連は慌てて
「すみません、八つ当たりです……」と平謝りした。
『社長:さっきちょっと調べたけど』と社長が続ける。
『社長:ミサキに大西直也を紹介したのは、
やっぱり山本勇次だったみたいだね。
そこから直也さんの人脈で、
他のトップ層に一気に輪が広がったらしいよ』
「……やっぱり」
連は確信した。
あの時、
自分が捨てた「ミサキ」というカードを拾い上げ、
最強のデッキに組み込んだのは勇次だったのだ。
「勇次さんとミサキ、仲が良すぎるんですよ。
ももかも見てみろよ」
連に振られたももかは、
『白百合ももか:えー、もしかしてミサキ、
その山本って人にガチ恋?』と、
いつもの「ガチ恋認定」を繰り出す。
『社長:ももかちゃん、
何でもかんでもガチ恋に繋げるのは良くないよ』
社長が呆れたように嗜めるが、連の耳には届かない。
「勇次さんの枠、完全にミサキが主役って感じなんです」
『社長:連、とりあえず
「特定の投げてくれる人」に頼り切るの、
もうやめな。
みんなで盛り上げるスタンスで行かないと、
太客から消えていくよ。
それに連鎖して、
投げないリスナーまで
居心地悪くなって来なくなるからね』
社長の正論が、今の連には毒のように染みた。
「……こうなったら、ミサキを戻すか」
ボソリと呟いた連の言葉に、ももかが即座に反応した。
『白百合ももか:はあ!? ミサキが戻ってくるなら、
ももか、もうここに来ないからね!』
最近、ももかの投げ銭額は目に見えて減っている。
口は出すが金は出さない。
そんな彼女の脅しに、連の心は冷ややかに動いた。
(……ミサキは、あんなに投げられるようになってる。
一時期は俺を死ぬほど好きだったんだ。
本気で謝れば、チョロいミサキのことだ、
きっと戻ってくるはず)
ももかが来なくなるなら、
それはそれで都合がいい。
そうさえ思い始めた連は、
自惚れに満ちた「和解プラン」を練り始める。
だが、彼は致命的なことを見落としていた。
今のミサキ(凛夏)は、
自分をバカにした男の謝罪を待つほど暇ではない。
彼女は今、
自分を正当に評価し、
守ってくれる山本勇次という「大人の男」の包容力に、
完全に夢中になっているのだ。
連の都合の良い妄想など、
今の彼女の世界には1ミリも存在していないことに
彼はまだ気づいていなかった。
お読み下さりありがとうございます
次回もお楽しみに♡




