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命短し滅せよリア充

 春木桜太(はるきおうた)18歳。絶賛片想い中の高校生。彼の思い人、夏野花火(なつのはなび)

「はっはっはー!!爆発しやがれリア充が!!」

 今日もどこかネジが飛んでいる。


「コラー!!またお前か夏野花火!!弾けるのは名前だけにしろ!」

「俺は名前に恥じない男になる!」

 わはははは、なんて高笑いが廊下を駆け抜けて行った。それも爆竹音の後で。

 夏野花火は黙っていれば某アイドル育成会社にでも所属できそうな顔である。切れ長の二重の目、鼻筋は通っているし唇は健康的だ。笑うと見える八重歯も印象的だけれど、一目見ただけでも強く印象に残る綺麗な顔立ちで背は高く、スポーツ万能、成績は学年10位以内から落ちたことがない。

 頭はいいのに親がつけた名前が原因か、非常に弾けた少年である。――主にダメな方向へ。

「廊下を走るなー!」

 と言いながらドタドタ重たい足音を立てて教師が走っていった。薄毛を気にしている学年主任の毛がまたストレスで減るだろう。

(御愁傷様)

 桜太は頬杖をついたまま走る薄毛ゴリラ……もとい、走る学年主任を見送った。

 花火に付き合えば付き合うほど毛根がやる気をなくすというのにご苦労な事だ、と僅かに感動すらした。ほんの毛先ほど。

 花火の頭が弾けていたのは昔からだけれど、突如“校内のリア充一掃作戦”などと意味のわからない事に励みだしたのは先月の話。

 理由など単純すぎる程単純だ。自分が彼女にフラれたからである。それも

『花火って顔はいいのに頭は残念よね』

 なんてある意味尤もな理由で、だ。

 当然彼女に本気だった花火は凹んだ。大いに凹んだ。この世の終わりの様な顔で凹みまくった。湿気た線香花火くらいショボくれていた。流石に可哀想に思って慰めたし気分転換にと連れ出した。

 そうこうしている内に突如燻っていた導火線が火を吹いて一気に弾けたのである。

 校内でイチャつくカップルの側に(ちゃんと人に当たらない様に計算ずくで)爆竹を投げつける、それが“校内のリア充一掃作戦”だ。

 花火の奇行は一部で大いに歓迎されている――主に非リア充。

 教師は一応建前的な説教はするけれど、校内から一歩出れば他人に迷惑をかけることもなく成績も優秀な花火の扱いにはほとほと困っている様子。最近担任はよく胃を押さえているからピロリ菌は胃袋で大活躍しているのだろう。

 何でそんなヤツが好きなのか、桜太は自分でもよくわからない。


「オー太郎~!」

 花火がひょこひょこと寄ってきたのは、クラスメイトが部活やら何やらで散り散りになって教室内に誰もいなくなった後。

「……本名より長いあだ名つけるな」

「え、可愛いじゃん。Q太郎みたいで」

「誰がオバQだ」

 桜太が返せば花火は大爆笑する。毎回のやり取りなのに飽きもせず、毎度大爆笑の花火は笑いの沸点が相当低い。

「それよりお前、そろそろリア充一掃作戦とかバカな事やめたら?」

「やだ。世の中からリア充が消えるまでやる」

「校内以外でやんねぇくせに」

「まずは学校から俺色に染めてやるのだ」

 えへん、と胸を張るアホの額にデコピンを一発。

「気が済んだら程々のとこでやめとけよ」

 そう言ってやれば大きな打ち上げ花火が線香花火になった。まだ傷は癒えていないらしい。

「なぁ、俺の何がダメだったんだよー……」

「言われたろ。頭が残念って」

「堅苦しい男より良くない?」

「豆腐みたいな男よりいいと思うけど?」

「お前はどっちの味方なんだー!!」

 うわー!っと机に突っ伏してしまう花火のつむじを一押しすれば、今度は下痢ツボ押しやがったバカ桜太ー!なんて大騒ぎだ。

 いいんだいいんだ、俺なんてどうせ頭が残念な顔だけの男ですぅー。

 ブツブツ半泣きで唇を尖らせている花火のつむじをもう一押し。

「お前ー!俺を下痢にするつもりか!?何の嫌がらせだー!!」

「リア充に嫉妬してるアホにいい解決策を教えてやろうか?」

 ガバ、と顔を上げた花火の瞳に意地悪気な笑顔の桜太が映り込んで、――花火の視界から消えた。いや、むしろ認識できないくらい近くにきた。

「もう一度リア充になっちまえばいい」

 唇から温もりが離れて、ふ、と吐息がかかる至近距離で桜太の声がする。

 茫然とする花火の鼻をピン、と指で弾き

「そろそろ俺も見てるだけは疲れてきたからな。本気で落としにいくから覚悟しろ」

 鞄を手に教室を出ていく桜太の背後。しばらくキョトンとしたまま唇を押さえていた花火の顔が見る見る内に赤く染まる。

「っっっ、はぁーーーーーーー!!!?」

 放課後の校内に爆竹男の絶叫が響いた。


 ――リア充の命短し、されど復活の機会もまた多し

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