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びんを投げる。推しを拾う。 〜盗賊の子分に転生した隠キャ、不遇ヒロインを助けたらフラグが立った  作者: 二八乃端月


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第19話 エルフの村の運命


 森の中を歩き始めて半刻足らず。


 道なき道を進んでいるが、さすがは森の民。

 先行するガルドとアーシェの足取りには迷いがない。


 もっともガルドが負傷しているため、その歩みはとてもゆっくりではあるけれども。


 俺はと言えば、周囲を警戒し、すぐにびんを取り出せるよう意識しながら二人の後ろを歩いていた。


 実際ここまでに二度、魔物と遭遇している。

 チェインスネークに影喰いコウモリ。

 どちらもガルドとアーシェが援護してくれたおかげでスムーズに倒すことができた。


 正直、出くわしたのが戦いやすい魔物で助かった。

 これが知能が高く群れで行動するフォレストウルフやスカルエイプだったらと思うと、ぞっとする。


 そうして歩いていたのだが––––




「……ぐっ」


 先頭のガルドが、苦しげな呻き声を漏らして木の幹に手をつく。


「師匠!」


 慌てて駆け寄るアーシェ。


「……ん?」


 師匠?

 師匠って?


 そういえば先ほどの戦闘の際、アーシェは彼に指示を仰ぐような仕草をしていたような……


「大丈夫だ、アーシェ。これしきのこと……」


「大丈夫なわけないでしょ。お腹からまた血が出てるじゃないっ」


 泣きそうな顔のエルフの少女。

 一方のガルドは青ざめ、額に脂汗が浮かんでいる。


 猿の爪に毒はないはずだが、いかんせん出血量が多すぎる。

 このまま無理に歩こうとすれば、村に着く前に倒れて動けなくなるだろう。




 ––––仕方ない。


 俺は内心でため息をつき、心の中でそのびんの名を呼んだ。


 手の中に現れるびん。


「動くなよ」


「なっ、人間、きさま何をする気だ––––」


 俺が手を振り上げたのを見て、焦るガルド。

 だが容赦するつもりはない。


 俺は緑色の液体が入ったびんを、ガルドに投げつけた。


 ぱしゃっ!!


「ぬあ!?」


 緑色の液体が飛沫となってガルドの全身に飛び散る。


 普通ならただの嫌がらせ。

 だが、これは魔法薬だ。

 液体が瞬く間に光の粒子となってガルドの身体に吸い込まれていく。


 すると––––


「おおっ?!」


 ガルドの脇腹の傷がみるみる塞がり、ドス黒かった顔色に赤みが戻ってゆく。


「い……痛みが、引いた……?」


 自分の脇腹をさすり、信じられないといった顔をするエルフの猟師。


「ポーションは飲むより振りかけた方が即効性があるんだよ。外傷に関して言えばな」


 ゲーム知識の受け売りだけど。


 さておき、俺がガルドにポーションを投げつけたのには、もう一つ理由がある。


 実は出発前にポーションを使おうとしたら、本人に「余計なことはするな」と睨まれたのだ。

 だったらもう、正面からぶつけてやるしかないだろう。

 この頑固者が。


「……貴重な薬をなぜ俺に使う」


 ガルドがバツの悪そうな顔で睨んでくる。


「別に。同行者が倒れて死んだら目覚めが悪いだろ」


「ふんっ。借りは作らんと言ったはずだが?」


「貸しにするつもりはねえよ」


「どうだかな。人間は信用できん」


 ガルドは憎まれ口を叩きつつも、その表情からは少しだけけんが取れたように見えたのだった。




 怪我が治ったガルドの先導で、再び森を進む。


 少し余裕ができたのか、隣を歩くアーシェが話しかけてきた。


「ありがとう。師匠を助けてくれて」


「師匠?」


 俺が聞くと、アーシェは少し誇らしげに頷いた。


「ええ。ガルドは村一番の猟師なの。私の弓の師匠」


「なるほどな。で、その修行中に猿に襲われたってわけか」


「うっ……」


 アーシェが言葉を詰まらせる。

 図星らしい。


「以前なら……あのような猿風情に遅れを取ることなどなかった」


 前を行くガルドが苦々しい顔で呟く。


「ここ数年だ。魔物が凶暴化し、気軽に森を歩くこともできなくなったのは」


「凶暴化?」


「ああ。我らエルフの領域にまで外の魔物が入り込んでくるようになった。今日のスカルエイプもそうだ。奴らは本来もっと浅い森に住む雑食の魔物。それがこんな森の奥深くまで入り込んで、人や家畜まで襲うようになっちまって……」


 ガルドの言葉に、ある記憶が蘇った。




 ゲーム『シルフェリア・ノーツ』。

 その初期マップの北東、帝国への抜け道の森の中には、なぜか朽ち果てた『廃村』があった。


 人が住んでおらず、崩れかけた家屋の間を魔物が徘徊する不気味な村。

 特にイベントもアイテムもなかったが、なぜかダンジョン扱いになっていた。


(……ひょっとして、あそこがエルフの村だったのか?)


 本来の歴史ゲームでは、今日この森でガルドとアーシェはスカルエイプに殺されていたのかもしれない。


 あるいは、何とか逃げ延びたが森の危険度が増して村を維持できなくなり––––


「父様たちも毎日議論してるわ。このまま森に留まって危険と隣り合わせで生きるのか。それとも誇りを捨て人間の街へ降りて生きるのか」


 アーシェが暗い顔で言う。


「人間と関わるとろくなことにならん。俺たちは森に生まれ、森に生き、森で死ぬんだ。これまでも、これからもな」


 ガルドが吐き捨てるように言う。


 なるほど。

 進むも地獄、退くも地獄というわけか。

 ゲームで『廃村』になっていた理由が分かった気がする。


 凶暴化した魔物に追われ、守りの要であるガルドのような戦士が傷つき、あるいは死に、残されたエルフたちは村を棄てることを選んだ。


(……嫌なこと知っちまったな)


 顔を顰める。

 知らなければ、ただ通り過ぎるだけで済んだのに。




 それからしばらく歩くと、あるところを境に森の空気がガラリと変わった。


 目の前には木が絡み合うようにして出来た天然のアーチ。

 が、よくよく見るとその奥の景色……木々が揺らいでいるように見えた。


 …………ひょっとして、結界か何かだろうか?


「ここが私たちの村の入り口よ」


 アーシェが足を止め、何やら呪文のような言葉を呟く。


 空気が揺らぎ、アーチの向こうに素朴な家々が姿を現した。

 透明な壁––––やはり『結界』だ。


 そのとき、こちらを見た村のエルフたちが悲鳴をあげた。


「あ、あれっ! あれってひょっとしてニンゲンじゃない?!」


「嘘だろ……? なんでニンゲンが!!」


「ガルドとアーシェが連れてきたのか?!」


 エルフたちの、とても友好的とは言えない視線が俺を射抜く。


(まあ、こうなるよな)


 予想していたこととはいえ、あまり愉快じゃない。


 すると––––


「ごめんね。みんな外のヒトと関わる機会がほとんどないから怖がってるのよ」


 アーシェはそう言って申し訳なさそうな顔をすると、彼らに呼びかけた。


「大丈夫! この人は私たちの恩人なの。パパを呼んで来て。話があるの!!」


 パ、パパぁ?!


 族長なり長老なりなら分かるけど、なんでパパなんて言葉が出てくるのか?


 首を傾げる俺に、エルフの少女は笑って言った。


「ようこそ、私たちの村へ!!」



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― 新着の感想 ―
アーシャはお嬢だったのかな? ゲームで見た廃村が、まだ生活してる人がいる状態を見るというのは、ちょっと物悲しい気分を味わってしまうかもしれませんね。 テツヤはこの村とどう向き合うのか? 楽しみです。
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