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びんを投げる。推しを拾う。 〜盗賊の子分に転生した隠キャ、不遇ヒロインを助けたらフラグが立った  作者: 二八乃端月


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第17話 猿の鼻をもぐ花の話


 バシャッ


 猿の後頭部に命中するスライムびん。

 どろりとした粘液があっという間にその頭部を覆う。


 ジュウウウウウ


「ギャッ!? ギィィィッ!!」


 悲鳴をあげ、暴れだすスカルエイプ。


 スライムが仮面の隙間から顔に入り込み、じゅうじゅうと泡立ちながら溶かしていく。


「ギャギャッ!! ギャヒィィィィイイッ!!!!」


 骨の仮面、体毛、皮膚。

 全部をまとめて焼き溶かす。


 その場にひっくり返り、顔を押さえて地面を転がる骨面猿。

 焼けた肉の臭いと、動物の脂が焦げるような臭いが周囲に広がる。


 やがて––––


「ゴボッ ギャゴボッ ゴボゴボゴボゴボッ」


 スライムに溺れるスカルエイプ。

 猿はそのままピクピクと痙攣し、やがてまともに動かなくなる。


(よし、一匹目!)


 すでに二匹目に向かい静かに移動を始めていた俺は、そこで他の猿たちの様子に気がついた。




「ギャッ!?」「ギャギャッ!」


「キィィ!」


 仲間をやられたスカルエイプたちは、俺を指差し騒ぎ始めていた。


(くそ、見つかった!)


 俺はなりふり構わず走りだし、二匹目に接近する。


「ギャギャッ?!」


 驚き戸惑うスカルエイプ。

 俺はそいつの顔面に––––


「『スライム』!!」


 びんを投げつけた。


 バシャッ ジュウウウウウ


「ギャヒィィィィイイッ!!!!」


 猿はスライムを引きはがそうと必死に爪を立てるが、逆に自分の顔を傷つけ指まで一緒に溶かしてしまう。


「ギャアアアア!!」


 断末魔の悲鳴。

 その時、エルフの男がこちらを見た。


「なんだ? 一体なにが……」


 残念だが、今の俺にはゆっくり自己紹介している余裕はない。


「ギャッ!」「ギャギャギャギャッ!!」


 仲間をやられた猿たちが、完全にターゲットを俺に切り替え、猛烈な勢いで投石し始める。


 ビュンッ


「うおっ?!」


 俺は飛んでくる石を避け、慌てて木の陰に飛び込んだ。


 ゴツッ、ゴツッ。


 石や木の実が雨のように飛んできて、地面を叩き、木の幹を砕く。


 シュッ


「っつ!!」


 石が左腕をかすり、鋭い痛みが走る。


 敵は四体。

 こっちは一人。

 このままだと今度は俺がジリ貧だ。


 エルフの二人には、猿たちの注意が俺に向いているうちに攻撃して欲しかったのだが、どうも難しいらしい。


 一人は弓を取り落としたまま木の上だし、もう一人はケガのせいで姿勢を保つのが厳しいように見える。


 なら、俺が一人でなんとかするしかない。


「……よしっ」


 腹を決める。

 そして––––


「ク◯がああああああっっ!!」


 俺は叫び声をあげ、木陰から飛び出した。




 叫びながら猿たちに背を向け、走る。


「ギャ?」


「ギャギャギャ!」


 スカルエイプたちは揶揄うような声を上げると、すぐに俺を追いかけ始める。

 そして雨あられと石が俺の背中に飛んできた。


「うわっ! くそっ、やめろっっ!!」


 頭を抱え、転びそうになりながら必死で走る。

 ……フリをする。


 よろめきながら木と木の間を抜け、フラフラとジグザグに走る。


 そんな俺を追いかける猿たち。

 もはやエルフの二人など眼中にない。


 木から木へ。

 枝から枝へ。


 手足を駆使し、すごい勢いで俺を追いかけてくる。


 元々スカルエイプは獲物を追い立てるのが大好きな魔物だ。

 弱そうな背中を見せて全力で逃げれば、必ずこちらを追ってくる。


 シュッ バシッ

 シュッ バシッ


「っ!」


 回避Lv5。

 投げつけられる石を紙一重で躱しながら、猿たちを引っ張る。


 一度エルフたちがいる広場から離れ、右に旋回。

 そして、また広場を目指す。


 ––––猿どもを、まとめて陽の下に引っ張り出す。


 そして、ついに広場に踊り出た。


「! っ人間?!」


 目を見開くエルフの猟師。

 そんな男に、おれは叫んだ。


「下がれ!! 鼻をつまんでろ!!!!」


「あ?」


 一瞬顔を顰めたエルフは、しかしすぐに大木の影に身を隠す。


「ギャギャッ!」「ギャギャギャギャッ!!」


 木々の間から姿を現す猿たち。

 そんな連中に、俺は––––


「『臭気』ぃっっ!!!!」


 右手に出現したびんを投げつけた。



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― 新着の感想 ―
テツヤってスキルの使い方が上手いので、レベル以上に厄介な存在になってますよね。 スカルエイプ4匹を同時に捌けるほど強いとは思ってませんでしたが、一人で補正ありの四人パーティが通る森を渡ろうとするだけは…
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