仲間達と島を開拓して住んでいたら勝手に他の人達が住み始めたので全ての加護や魔法を解除して引っ越した〜出ていけと言われたから出て行ったら皆は後悔していた〜
よく、分からない。ジラと冒険者をしている時に自分達で島を開拓して快適に自由に住みたいねって話して、程好い無人島を探しそこに住んだ頃まで記憶を遡ってみた。
うん、ここは問題ない。島を開拓して綺麗に地面を整地させた。必要なものはバッグに入ってたし、いざとなれば町に行ける手段も確保していた。
ああ、思い出した。計画と願いが狂いだしたのは商人や人が無断で住み着き始めたんだ。
初めは少人数で特に問題はやはりない。しかし、人が多くなってくると法律もない島は無法地帯で、暴れる人が出始めた。で、自分達ではどうにもならないのでジラにどうにかするよう頼んできたんだ。
ジラは勿論金を払うならと了承した。うん、ここも問題はない。ていうか先住民で島を開拓した自分達に頼みごととは厚かましい。
不法侵入ものだ普通に。違反者が何の権限で頼んでんの?
ジラが仕事でならと言うから一応傍観しておくと決めた。
段々ジラが仕事をしてもお金を払わない人達が出てきたので彼が呆れて頼まれても前払いしか請け負わなくなったもの当然。違う関係のない人達が自警団を名乗るようになったが、それからはノータッチだ。
そして、何故か誰が言い始めたのか知らないが自分を領主と呼ぶようになった。意味不明、はい、ここからもっと変になる。嘆願書が届くようになった。
え、なに、てか、は?って思ったのでジラに聞くと同じ反応をしていたので自分は間違ってない事を確認出来た。自分達の畑に雨を降らせてくれ、とか頭可笑しいんじゃないの?
不法侵入者の為に何故魔力を使わないといけないのだろう。アイナは冒険者時代から魔法使いをしている。
けれど、不法者が勝手にこの島に住み着いたことにより、なぜ他人に対してなにかをせねばならないのか疑問。
「ねぇ、ジラ、ジラってば」
寝ていたジラを揺り起こす。なんか、部屋に入ってこようとしている人達が居るので起こした。
「なんだ」
寝起きだから機嫌悪い。
「怒った人が来てる」
指で外を指す。
「またか。堂々と犯罪やってる奴等は、今度は何が不満なんだ?」
勝手に住み着いた事を遠回しに皮肉る。
「さあ、私には彼らの厚かましさは理解出来ないもん」
そもそも領主と勝手に呼んでいるにしては税金を払っていない。そこからまず可笑しいと思え。
「いつになったら祭りをするんだ!?」
「犯罪を犯すものを放置するな!」
島おこしをしたい人たちの叫びだ。いや、勝手に来といてなに勝手に言いまくってるんだ。おかしい、やはり訳が分からない。
「領主は出ていけー!」
いや、だから貴方達があとから住んだんであって、元々ここに来たのは私達だから。出ていくのは逆に君らである。っていうのも疲れたからもうこの島は捨てることに決めた。
「良いと思う。この島は無法地帯過ぎる。煩いしな」
じゃあ、島に張っていたバリアの魔法や天候の魔法を消しておく。あと、作物を迅速且つ美味しく育てられてもげる魔法も必要ないので消す。全てのかけていた加護を消し始める。
「皆にも声かけておいたわ」
ジラとアイナと共に一緒に来た仲間達に念話で知らせておく。ちまちま出ていくうまの話をしていたので、直ぐに出ていく事が出来るようになっている。
素早く集まった皆に、ジラが出ていこうと言うと皆オオー!と拳を掲げる。皆ジラ好きだよねえ。まあ私もだけどさ。出ていくのは一瞬。
この島はあくまで、吟味した中で一番良さげなところだったから二番目に移れば、良いだけなのだ。出ていけって、勝手に住んだ人に言われたら喜ばれるかもしれないけど、煩すぎるのだから仕方ない。
二番目に目を付けていた島に移った後の島。すぐに異変は起こった。
草木が瑞々しく生い茂っていた島は途端に豪雨が襲った。島に雨を降らせる魔法がかかっていたが、領主の畑だけに豊富に降っていただけ。
領主領主と呼んでいるが本人曰く違うらしいが、島に後から住み出した住人はまだ違うことだと知らない。全く迷惑な勘違いと押し付けだ。
更に島を襲うハリケーンが、直撃して建てられている建物は粉々に消えた。自称、島の住人達が慌てて他称領主の住む家へ押し掛ける。
全く住民を顧みず、願いも聞き届けてくれない(自分勝手)と思っているのだから理不尽な焦りと怒りは、溜まっていく。しかし、そこへ向かうともぬけの殻でジラもアイナも、居なかった。
それどころか、建物がさらさらと砂の様に消えていき嵐の中に取り残された。
「一体領主はどこへ行ったんだ!?」
「きゃああああ!助けてええ!」
風で吹き飛ばされそうになりら皆が木に掴まる。しかし、このハリケーンは自然発生なので、数秒でなくなるわけもない。というわけで、ハリケーンが終わる頃には栄えていた島はその面影もなく、荒れに荒れた島が残る。
「なんなの、なんのよお」
泣きに行く女は、くたくたになった姿でいる。ある男、序盤に領主は出ていけと言っていた男は唖然と、島を見ている。
お望み通り出ていったのに、ワガママな事を脳内で言いまくっているようだ。なんで領主は居ないのか、とか。
「領主様はどこだよ!?」
「は?てめェ領主の家に毎日怒鳴りに言ってたよな?」
「お前だってダチに愚痴もらしてたよな!?おれの事言えんのかよ?」
なんだと、という声を皮切りに乱闘が起こる。わーわーと乱闘しても領主や自警団が来る気配はない。
乱闘でボロボロになっても損しかなく、これからくる災難に対応しにくくなるわけだ。どんなにわめいても、騒いでも誰も助けてくれないと知ったときの皆の顔は正に絶望である。
「なぜ領主は助けてくれないっ!?」
「おれ達が出ていけと言ったからか?」
酷い酷いと言う彼らはボロボロボロボロと涙を流す。その時、奇跡は勿論起きない。
「家が無くなった、くそ」
嘆き悲しみ、それしか残らぬ。
「何がどうなってるんだ」
島への加護も作物の加護も無くなった。それを知らない自称民はパニックだ。
その頃、ジラサイドは。
「ジラ、こっち伐採出来たー」
音符が付きそうな程ご機嫌だ。最近は勝手に住み付いた大人達が、筋違いで勘違いとわめいて騒いで煩かったので機嫌も良くなかった。
というか、国に確認でもすればあの島に領主など存在していないし。
自称民を名乗っているのは、直ぐに浮き彫りになり理解するのは簡単な筈なのだが、それをしなかった彼らの怠慢だった。
「ああ、こっちも家が出来た」
「野菜と果物の種植えたぜー!」
仲間からの声も聞こえて更に楽しくなる。昼間の熱をゆっくり溶かし、肌も心地よい。仲間達の声が空気の中にふわりと聞こえてくる。
「わー!ふかふかあ」
ジラが設置してくれたベッドへダイブをする。ふわふわで、これはモンスターの羊羊というモコモコした部分をドロップさせまくって作った、高級品だ。
自給自足なのでタダだ。ただは良い、ただなのに高級品だなんて贅沢だ。
「やっぱり島には少人数が良いな」
ジラがしみじみ言う。前は少人数が良いということが分からなかったけど、今なら良く良く分かる。やっぱり少人数が良い。
「ジラの言うとおり。私も煩い生活はもう嫌」
うんうん、と頷いた。この島にはやわらかな空気が流れている。
やはり、勝手な事を言う人が居る生活は困るし、身にならない。穏やかな時間が過ぎる。仲間達に呼ばれてまた下へ降りた。
(もうこんな時間だったか)
夕焼けの名残が空の西の端に淡いオレンジとピンクのグラデーションを残し、東の空はゆっくりと深い藍色に染まり始めていた。
水彩の絵の具をそっと混ぜたような、境界線のない色の移ろいが美しい。
島選びは大正解だ。木の葉が密かに触れ合う音が静かさを際立たせた。夜もきっと違う表情を持って、自分に見せてくれることだろう。
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