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始まりを刻む  作者: 桶満修一
第6章 希望を刃に、歴史を牙に
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53話 想定外の出逢い


 牢屋から脱獄した俺たちは人目から避けるように街中を移動していた。

 どうして俺たちが犯罪者みたいな行動をしないといけないんだ。

 あ、だけど俺この世界の法律とかぜんぜん分かんないや。倫理観とかも元の世界と違うだろうし。

 もしかしたら既に何個も法を犯しているかもしれない。


 「ジギラス、どうしよう」

 「この後か?何も考えてなかったのかよ。とりあえずコイツらは逃した方がいいだろう。守るのが面倒……、大変だしな」

 

 今凄い失礼なことを言ったような。

 てか、俺の聞きたいことがじゃなかったんだけど。

 まあ、俺が犯罪者かどうかはいいや。後から確認しよう。


 「逃がす先はコリプランだな。ただ、俺たちもコリプランに行くのはヤベェ。その間に戦争の準備が整っちまうからな。

 まあ、戦争が起きてもいいっていうなら別だが………。トワ坊は違うんだろ?」


 戦争が起きる………。

 それだけはダメだ。

 せっかくミラを倒して危険が遠のいたのにどうして戦い合わなきゃいけないんだ。


 「そうだな。だけど、役人さんたちだけでコリプランに送るのは危険だよな。護衛を付ける必要がある」

 「ならギルドでしょ。護衛依頼をパパっと頼んでさっさと逃げてもらおうよ」


 ギルドか………。

 俺たちの顔が知られてたらヤバいが、まあ大丈夫と信じよう。

 大丈夫、だよな?

 だけどこれ以外に何もいい案が思い浮かばないし、何とかなるなる。


 「じゃあ、決まりだな。おっさんたちももう少しだから頑張ってついてきてくれよ」


 後ろでぜぇぜぇと息を切らしている役人さんは大量の汗を滴らせながら首肯した。



▼△▼△



 トリアス国の首都、シンラのギルドはひどくみすぼらしかった。

 他の国ではギルドはあるいは城と見違えるほどの威厳を保っていた。もちろん、そこに入っていく連中はガラの悪い者も多々いるが、それでも一種のプライドを持っているようにも見えたのだ。

 しかし、ここは廃れていた。

 いたるところのレンガが剝がれているし、入っていく連中もどこかくたびれていた。


 いや、ギルドだけではない。

 ここに来るまでの道の家も、店もどこも貧相なイメージを沸かせてきたのだ。


 「この国って貧乏なの?」

 「さあな。少なくともミラが居座る前はこんなんじゃじゃかったぜ。昔は戦争で儲けてたが、今は戦争を出来なくなったからな。貧乏になっちまったんじゃねえか?城はそんな感じしかなったけど」


 この国の実情がどうなっているのかは分からないが、とりあえず護衛依頼を出さないと。

 

 チリンチリン


 いつも通りの音を鳴らして扉を開ける。

 やっぱり心なしか音が濁っている気がする。


 「依頼を出すのは………あそこだな。行ってくる」


 あとは依頼を受けてくれる人がどれくらいで見つかるかってところだな。

 正直、護衛依頼はあまり人気じゃないから見つかるのに時間がかかるかもしれない。そうしたら待っている間に戦争が始まってしまうなんて最悪の事態もあるかもしれない。


 「考えても仕方ないか。ちょっとここでゆっくりしよう」


 後ろの役人さんたちの疲れがヤバそうだし。

 もっと運動しようぜ。


 「こっからどうする?」

 「おーさまをぶっ倒すってのは?」

 「アホ!んなことしてもなんの解決にもならねぇよ」


 手っ取り早くはあるだろうけどな。

 けどそれをしたら本当に俺たちは指名手配犯だな。

 それも国際指名手配。


 ただ手詰まりなのも確かだ。

 戦争を止めるなんて本当に出来るのか?


 「あら、お久しぶりですね」


 俺たちがうんうんと悩んでいたその時、後ろから声をかけられた。

 振り返るとそこには背の高い女性が1人立っていた。

 光さえも吸呑み込むほどの黒髪を腰まで伸ばし、スラリとした印象を抱かせるが、豊満な双丘がそれを否定する。

 物腰の柔らかそうな雰囲気だが、佇まいから只者ではないことがなんとなく分かる。


 「あ?ミューカリアか?ジギラスだ、久しぶりだな」

 「ええ、本当に。そちらの方は初めてお会いになりますよね。どうもアイシャ・ナイド・ミューカリアです。よしなに」


 そう言うとアイシャは深々と丁寧にお辞儀した。

 どうやらジギラスの知り合いらしい。ジギラスはAランクハンターとして各国を回ってるらしいから知り合いも多いのだと。


 「そーだ、ちょうどいいわ。なぁ、アイシャ。一個護衛依頼を受けてくれないか?」

 

 ちょっと何言ってるんですか、ジギラスさん。

 会ってすぐの人に仕事の話なんてマナー違反ですよ。

 マナー講師もお怒りです。


 「すいません、この国を離れるわけにはいかないので」


 ほらね。

 それに役人の依頼なんて大事なものをぽっとでの人に頼めるわけがないじゃない。


 「ですが、何人かに頼んでおきますね。私の頼みであれば引き受けてくださる方が何人もいますので」


 引き受けてくださるんですか!?

 マナー講師もびっくりです。


 「ありがとな。っと、これで役人の問題は片付いたな。あとは戦争の件なんだけど………」


 おいジギラス!

 なんで他人の前でそんなこと言っちゃうんだよ!


 「戦争?」


 ほら、気になっちゃってる。


 「そうそう、どーやらこの国ってコリプランに戦争を仕掛けるっぽいの。そんで、それを私たちは阻止したいって感じ」


 リーティアさん?

 いきなり話したと思ったらなんてこと口走ってるんですか?


 「『憤怒魔王』の方はどうなったんですか?あの方がいるから戦争はできないと聞いたのですが」


 そんで、なしてこの人も真剣に聞いてくるん?

 聞き流してくれや。


 「まあ色々あってな。『憤怒魔王』もいないんだよ。今戦争をさせるわけにはいかないし、阻止するのを手伝ってくれないか?」


 ジギラスさん、忘れているかもしれませんが、この人はトリアス国民です。

 戦争を止めるなんて反政府運動をしてくれるわけないじゃあありませんか。


 「ええ、いいですよ。他の人たちもそれを望んでいるようなので」


 ほらね、断られた。

 ………………ん?

 

 「いいですよって言いました?」

 「ええ、言いました」

 「もう俺はあなたが分かりません」

 「?申し訳ないです」


 どうしてこの人はそんな簡単に了承してくれるんだろう。

 護衛依頼の件も、今回の件も。


 「よし、お前がいれば心強いぜ。よろしく頼むぜ、〈六神天将〉ミューカリア」


 は?


 「その呼び方はやめてください。アイシャで結構です」


 思考を纏められない俺を置いて、いつの間にか俺たちは〈六神天将〉の1人を仲間にすることに成功していた。



▼△▼△


〈六神天将〉


 魔王に対抗するために設立された人類最強の6人。

 それぞれが想像を絶するほどの力を有し、人類の平和を守る存在である。

 トワたちが手も足も出なかった〈闇犬〉のルミアス・ルリユスを〈六神天将〉に属するリヴェラルが造作もないことのように追い払ったのが記憶に新しい。


 「それにしてもアイシャさんがソレだとは思わなかったな」

 「ねー、たしかに強そうって感じはしたけど、そんな風には見えなかったもんね」


 ベッドに横になりながらアイシャのことを思い出すも、彼女からはリヴェラルの時に感じた圧倒的な雰囲気を感じなかった。

 だがしかし、世界に認められている〈六神天将〉が味方になったと思えば心強いか。今のところ信頼は出来ないけど。


 「それにしても、これからどうしようか」

 「そうだな。戦争を止めるって言ったって何をすればいいのか、皆目見当もつかない。アイシャさんのおかげで役人の人たちは何とかなったけど、肝心なところが解決していないしな」

 「ていうか、いろんなことが一気に起こりすぎて何が何だか分からないよ」


 たしかに。

 コリプランに来たと思ったら王宮に招待されて、かと思えば幽閉されて。戦争が起きそうな話を聞いて脱獄したら〈六神天将〉に出会って協力してもらえるようになって。すごい1日だったな。


 「あ、その脱獄したときの話聞きたいんだけど。アレって超能力だよね?どうして使えたの?やっと使えるようになった………とかじゃないんだよね?」

 「ああ、別に超能力不全が治ったわけじゃない。あの状況だけ使えたんだ。もう使えない」


 あの時の状況を思い出す。

 地下にいて、牢屋の中。室内は魔素を吸収する魔法がかけられていた。時間は夕刻前。太陽は届いてなかった。

 これらの中に俺が超能力を使えた理由があるのか?それとも気づいていない要因があったのか?

 あの時はサイコキネシスしか試していないけど、試していたらパイロキネシスとか空中浮遊も出来たのか?

 う~ん、今は何も分からないけど、いつか分かったらこの世界でも超能力が使えるかもしれないな。

 魔法はあるけど、超能力の方が圧倒的に便利だからな。


 「そっかぁ。使えないかぁ。もしかしたらトワ君の覚醒パートが入ったかなって思ったんだけどなぁ」

 「そう簡単にはいかなかったな。さ、もう寝るぞ。明日からは忙しそうだからな」


 そう言って目を閉じると、意識はすぐに沈んでいった。


お久しぶりです。

親知らずを抜いて萎えていたり、新たに買った本が存外面白かったりと書く時間が取れませんでした。1週間に一回は更新したいなって思っているのでお応援してください。

遅くなってすんません

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