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始まりを刻む  作者: 桶満修一
第6章 希望を刃に、歴史を牙に
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51話 王さま直々の依頼に出発だ!!

 ワームを倒してから一月が経とうとしていた頃、俺たちはエディスのギルドに集まっていた。

 先日トリアスへの役人への護衛依頼というコリプラン国王直々の依頼を受けてしまったため、それをやりに行くのだ。

 

 「めんどくさーい」

 

 ギルドで役人の人たちを待っていると、リーティアが大きなため息とともに愚痴を吐く。

 見ると表情もいつもよりもダランとしている。

 彼女は普段の討伐依頼であれば生き生きとこなすのだが、こういう面倒な依頼は興が乗らないのだろう。


 「そう言うなってリー嬢。報酬は目いっぱい出るって言うし、小旅行だと思ってやろうぜ」


 そんなことを言うのはジギラスだ。

 この依頼を受けた時に一緒にAランクハンターを連れていくことになったのだが、それがコイツである。

 ネチャル国で我らの先輩となり、ミラと戦うときには修行もつけてくれた奴だ。


 「ていうか、なんで役人の護衛程度で私たちが行かなくちゃいけないの?そこら辺のハンターでもよくない?」

 「ん?まあそれは俺たちがミラを倒したからじゃないか?安心して送り出せるってことじゃないか?」

 「それでも警戒しすぎッて感じじゃない?ジギラスも連れてくなんて」


 ああ、たしかにそれはそうだ。

 Aランクというのは伊達ではない。指名してまで依頼するとなると大変な出費になりそうだ。

 でもまあ、王さまからの依頼だしお金は気にしてない………のか?


 「あー………、それは多分……。って商人たちが来たな。この話はまた後で」


 ジギラスが何かを言おうとしたのだが、どうやら彼の言葉通りお待ちかねの役人さんたちが来たようだ。

 馬車の中にでも話の続きでも聞くとするか。




 「うっぷ………」


 果たしてその考えは現実にはならなかった。

 俺もリーティアも物凄い馬車酔いに襲われたからだ。


 「大丈夫か?」

 「ぜんぜんダメ」


 流石にジギラスは問題ないようだが、これは俺たちが悪いというよりも道が悪い。


 「確かに。ミラの領土だったから土地は荒れに荒れてるし、道が舗装されているわけでもない。救いは魔物たちが怖がって出てこないところだな。アイツの魔素が残ってるんだろうな」


 そう。

 今でも思い出せる死闘に加え、彼女が普段から怒りを発散させる場所となっているここは、馬車で通るには適していなさすぎる。

 ガッタンガッタンしてもう無理。リス化しよ。リスリス。リコリス。


 「あと2カ月くらいかかるから頑張れよ」


 トリアスに着くまでに死ぬかも。




 2カ月後、何とか生きてた。

 腹の奥底からくる嘔吐の波。正常に働かなくなる頭。

 全てを我慢した俺たちは、トリアスに立っていた。


 「大げさだよ」

 「否、何も大げさではない。我々は打ち勝ったのだ。人権を失うかもしれなかった闘争の日々に。迫りくる絶望の足音に」

 「なんか口調代わってないか?」


 否、これが我の本来の口調である。

 ………と、冗談はあとにして、とりあえず休みたいな。疲れているのは冗談じゃないし。


 「あ、役人たちが呼んでるぞ。どうやら王宮についてきて欲しいみたいだ。何でもこの国の王様に言われたみたいだぜ」

 「………今日じゃなきゃダメ?」

 「後回しにしたら怒られんじゃないか?」

 「明日じゃダメ?」

 「今行くぞ」


 マジかよ。






 トリアスの王城の前に付いた俺たちは疲れ果てていた。

 目の前に広がる荘厳な銀色の城も、きれいに整備された庭に目を向けることされも面倒に感じるほどにだ。

 ていうか、普通旅を終えてすぐの俺たちを呼ぶか?

 ここの王さまはどうなってんだよ。


 「とりあえず話を聞くだけだろうから早く終わらせようぜ。狭くていいから部屋で寝たい」


 もう馬車の中はイヤだ。

 王城に招待され、案内されるままに歩いていくと玉座の間に通された。

 視界の中にいるのは何人もの兵士を侍らせ、真ん中の豪華な椅子に座っている少しふくよかな男性。

 この人が王さまかな?


 「控えよ」


 おっと、さすがに疲れていても無礼を働くわけにはいかない。

 反逆罪とかで捕まってしまうかもしれない。


 「よく来たな『怯人』に『死人』、それに『天人』か。朕はトリアス国王、偉大なるニコラス・ルイ・トリアスじゃ」


 にこやかな表情なのだが何だか下卑たように感じてしまう。そもそも自分のことを「朕」と呼ぶ人にいい人はいないっておばあちゃんが言ってた。

 リーティアは明らかに表情が曇り、「この人絶対裏で悪いことしてるよ。今のうちにやっつけちゃおう」って言ってくる。気持ちは分かるが静かに。聞こえたらマズイ。


 「そんなに遠くにおるな。もっと近うよれ」

 

 あ、はいはい。

 俺たちが王さまの言葉通りに彼に近づいて跪いたその時、浮遊感を感じた。

 地球にいたころに超能力で空を飛んだ時とはまた別の、フワッとした浮遊感を。

 そう、俺たちは実際に空を飛んでいた。

 いや、違う。俺たちを支えていた地面が急に裏切ったように、俺たちを手放したのだ。

 有り体に言えばそう、落ちていた。


 「は?」


 宙に放り投げられた俺たちが出来たことなんて、そんな頼りない声を出すだけだった。

 この世界にももちろん重力が働いていたことを、全体重を以って実感していた。

 

 たっぷりと宙の旅を堪能した俺たちがたどり着いたのは、灰色の部屋。

 四方を硬質な石材で囲められており、目の前には格子状の模様。

 いや、「格子状」でも「模様」でもない。

 れっきとした鉄格子だ。

 これが意味することは1つ。


 「牢屋?」


 狭い部屋で寝たいとは言ったけど、牢屋でもいいなんて言った覚えはないぞ。


最後の方の落ちていく時の表現は楽しくなっちゃいました。

読みにくかったらごめんなさいね。


今回から新しい章です!

これまでで一番長くなりそうですが、付き合ってくださいね。ゆっくりやっていくので

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