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始まりを刻む  作者: 桶満修一
第5章 大仕事の合間に小仕事
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48話 発覚と発見


 巨大なワームの攻略だが、現状を確認しておこう。

 目の前のワームは人間を餌として暮らしてきているからか、30メートルよりも大きく、細長いからか見た感じでは50メートルはあるんじゃないかと思う。

 皮膚は見た目によらず固く、リーティアの剣ではかすり傷がやっとといったところである。俺にしても、この周囲では魔素が薄く強い魔法を使うことは困難である。

 もちろんここは異世界であり超能力を使えない為、いま俺にできることはサイコキネシスで身体能力を高めることしか出来ない状況だ。

 魔法も使えず、身体能力もリーティアよりも低い。剣技だって全然だ。


 「文字にすると俺の無能ぶりがヤバいな」

 「ん?なんか言った?」


 リーティアなんかと違って自分で魔素を賄えないのが辛いな。

 それでも陽動ぐらいはできるだろうから頑張るか。


 ウウウウゥゥゥ


 コイツも用意された餌を持ってかれてムカついてるのか?うめき声みたいな鳴き声を出して俺たちに襲い掛かってくる。


 「俺ができるだけおとりになるから、リーティアは攻撃に専念してくれ」

 「りょーっかい」


 リーティアの返事を皮切りに俺は巨体へ向かって走り出す。

 魔法を使うことは出来ないが、せめてワームの気をそらすことができればリーティアの攻撃も効いてくるだろう。


 そう思ってリーティアとは別の方向に向かっても、ワームが俺の方に顔を向けることはなかった。

 俺は目立つように行動し、反対にリーティアは身を低くして極力奴の視界から逃れるように動いているにも関わらず、奴は終始リーティアから目をそらさない。


 (危険性を理解しているのか?)


 俺には有効打がなく、リーティアにはある。

 それを魔物が本能的に理解しているという可能性はある。

 しかし、どこか引っかかる。何か重要なことを見落としているような、そんな不安が頭から離れなかった。


 「ちょっとー、どうして私についてくるのー」


 俺が考えている間もリーティアを必死に追いかけている。

 彼女が岩陰などを駆使してワームの視界から逃れようとも、奴は正確に位置を補足し続けて彼女を追いかけていた。


 それなら俺もほとんど効かないだろうが攻撃に参加しようと短刀を振る。刃先の短いそれでは硬質化している皮膚にはまったく効果はないが、硬質化していないところなら別である。

 巨体の全てが硬質化しているわけではなく、ワームの腹の部分は通常の皮膚であり、むしろ他の魔物よりも刃が通りやすい。リーティアを追いかけることに集中しているコイツの腹を刺すことなど容易いことであった。

 そう思って短刀を突き出す。思った通りグサリと気持ちの悪い感触と共にたしかに肉に刺した確信が手に残る。何度やってもこの生き物に刃を突き立てる感触だけはいつも鳥肌が立つ。


 俺が手に気持ちの悪い感触を感じた瞬間、ワームの巨体がブルンと震えて痛みを露わにする。


 「俺を無視するからこうなるんだよっ」

 「トワ君ナーイス」


 リーティアも笑って俺のほうを見てくれて、親指を突き出している。

 少しは効いてくれただろうかとワームの方を見ると、奴は何が起こったのか分からないといった風に辺りを見渡している。それだけで風が起こるのだこら大したものである。

 ともかく、これで俺を無視することは難しくなってリーティアも動きやすくなるだろう。


 目でリーティアに合図を送り、彼女も察してすぐさま身を隠してワームの視界から逃れる。

 よし、自分の傷で狼狽えていたヤツはリーティアを追えていない。完全に彼女を見失った。


 「!?」


 そう思った瞬間、ワームはリーティアの隠れている岩陰から目を離さなくなった。完全に撒いたと思ったのにどうして彼女の居場所が分かるんだ?

 反対に俺のことはまた無視だ。

 一度傷を与えた相手をどうして無視出来るんだ?


 どうして彼女ばっかり狙うんだ?俺のことはまるで見えていないかのように無視をするのに………


 「…………!」


 分かったぞ、コイツの弱点。

 コイツが俺のことを無視して、リーティアばかり狙う理由が。


 「お前、魔素しか見えてないんだろ?」


 コイツの顔にはデカい口しかない。固定観念で目も鼻もあるものだと思っていたがそのまま口しかついてないんだな。どこぞの殺せ●せーみたく小さくて鼻が見えないとかではないのだ。

コイツには俺たちの姿も、声も、匂いすらも分かってない。

 蛇とかにあるビット機能とかと似ているのかも知らんが、ワームは魔素だけを感じて俺たちの居場所を特定している。だから魔素を持つリーティアをどこまでも追いかけて、魔素を持たない俺は無視し続けているってわけだ。


 「なるほどね♪それじゃ、やることは決まったね」

 「ああ、役割交代だ」

 「そろそろ狩るか…♠」


 そう言うや否や、リーティアは岩陰から出てきて手を叩く。

 耳は聞こえないとは分かっているのだろうが、まあポーズであろう。

 

 ワームは変わらずリーティアを追う。ヤツとしては彼女しか見えていないのだから当然か。

 リーティアならば囮は完璧にこなしてくれるだろう。

 問題は俺がワームにしっかりとダメージを与えなければならないことだろう。さっきはワームが腹を見せてくれたから、まだ多少は攻撃が通った。それでもこの巨体の前ではかすり傷みたいなものだけど。

 それでもダメージを与えられのはよかった。

 しかしワームも警戒しているのか、今は上体をほとんど浮かせずにリーティアに突進を繰り返す。それでは俺がヤツの腹にたどり着いて攻撃するのは至難である。


 「うわぁ!危ない」


 リーティアも速度では圧倒しているが、なにぶん敵がデカいと振り切りにくく、一回の攻撃が致命傷になりうる。あまりモタモタしてはいられない。

 そうは言っても現状で打開策が見当たらない。それにこの炎天下の中だとこうやって思考を巡らすことでも体力が取られる。


 「うぅ……」


 そんな精神的にも体力的にも疲れていたのだろう。足元がふらつき近くの壁に手をついて一休み。……?この壁イヤに硬いな。それに少しだけ動いている気もする。


 ……あぁ、イヤな視線を感じる。上からの視線だ。いや、正確には見えてないだろうから視線は感じないんだが、ヤツの顔がこっちを向いてることは分かる。

 そう、俺がいま寄りかかった壁はヤツの、今戦ってるワームの表皮だった。そうだよね、いくら俺が見えないって言ったって、自分が触られたら分かるよね。


 「………‼︎」


 喉から声なら習い悲鳴が出てくる。

 死が迫る恐怖ももちろんあるが、このデカいミミズを触っていることに対する気持ちの悪さが心の奥底から湧き上がってきているのも原因となっていた。

 

 ワームは透明な敵の居場所を掴み、これが好機だと言わんばかりに俺に襲いかかってくる。口をぱっくりと開けて向かってこられるのに、頭の中で色々な記憶が溢れてくる。また走馬灯か。前に見たのはこの世界に来たばかりの時だったかな?


 頭は冷静だが、この体は死を回避しようと様々な力を行使する。そのおかげで今回は助かったのだから感謝せねばなるまい。


 バンッ!!!!


 ヤツの表皮に触れていた手に急激に力が集まるのを感じる。使い慣れたあの力だ。

 瞬間、手で触れていた表皮が抉れ、勢いよく血が吹き出る。その痛みに悶えワームは逃げるように俺から距離をとる。


 何が起きた?

 

 今俺は間違いなく超能力を、サイコキネシスを使って攻撃した。

 この世界に来て使えなくなったはずの超能力を。

 ヤツの肉を抉り取り、俺の命を救った。

 どういうことだ?超能力は使えなくなったんじゃなかったのか?


 試しに右手を前に出してワームを吹き飛ばそうとサイコキネシスを発動しようとするも、ワームには何の影響も見られず、不発に終わった。

 いや、違う。

 サイコキネシスは発動出来ているんだ。地球にいた頃よりも効果範囲が極端に小さくなっただけで、俺の超能力は消えていなかった。

 たしかにそうだった。

 俺が普段魔法を使えているのも、魔素を超能力で動かしているからだった。


 「トワ君!?何が起きたの?」

 

 リーティアが驚きの表情とともに話しかけてくるが、今は詳しく話している時間はない。

 正直これが発覚したのはかなりの朗報で、俺のパワーアップを報告したい気持ちはあるが少し我慢だ。


 「あとでゆっくり説明する。リーティアは引き続きヤツの気を引いてくれ」

 「りょーかい!信じてるからね」

 「ああ、任せろ」


ブックマークをしてくれると私の意欲につながります。

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