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始まりを刻む  作者: 桶満修一
第4章 孤独の超越者
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33話 武器調達



 「よし、とりあえず『憤怒魔王』戦に向けて色々買いだめしとくか」


 初めに調達するのは武器である。

 1年前の豚帝王戦でリーティアが長年使ってきた短刀は血にまみれおよそ使えるような状況ではなくなっていた。それでももったいないからと騙しだまし使ってきたが、今回の魔王戦で不安な武器を使うことはためらわれる。

 そういうわけでこれを機に新しい得物を買うことにした。


 「お金は底をついちゃうけど仕方ないよね。魔王倒したら報奨金が出るし少しぐらい平気だよね。ついでにトワ君の武器とかも買いたいよね~。ずっと魔法だけっていうのも近接怖いでしょ。なにかほしいのとかある?」

 「ロングソードとかはいきなりじゃ使えないと思うんだよな……。そう考えると僕は短刀やナイフあたりがいいのかな?あと用意しておきたいのが……。」


 ―――――

 ――――


 「へー、そんなの必要なのね。おっけー分かったわ。さっそく買いに行こっか」


 戦いで必要になるものを決めたところで2人は昨日行った商店街へ足を運ぶ。

 未だ『憤怒』襲撃は民間には知らされてないのか、商店街は先日と変わらずに盛況で本当に『憤怒魔王』が迫ってきているのかを疑ってしまいそうであった。

 

 最初は2人の戦闘に直接かかわってくる武器を調達する武器屋に向かった。

 店の前にはいくつかの甲冑のようなものやきれいに磨かれた剣、戦斧などが置かれており、どれも丁寧に手入れされているのが見て取れた。

 店内に入ると無精ひげを生やした中年の男性が「らっしゃい」となおざりに出迎えてくれた。


 「おじちゃん、なんかいい感じのナイフない?2,3本。」

 「金はあんのか?嬢ちゃんたち。」

 「ええ、あるわよ。後先考えられない状況だから、ちょっと無理するけどね」


 リーティアの言葉のすべては正確には理解できなかっただろうが、店主は「そうか」というと店の奥へ入っていき、少しすると手に籠を抱えて帰って来た。

 その籠の中には何本かのナイフが入っており、店主は「好きなの選べ」といって作業に戻った。


 「ねね、妖刀みたいなのないの?『俺の運とコイツの呪いどっちが強ェか試してみようか』ってやつやりたいんだけど」

 「お前とゾロを比べるのおこがましすぎるだろ。そもそもナイフじゃアレできないだろ」


 籠の中身を漁りながらふざけたことをぬかす彼女を無視して、良さそうな短刀を探す。といっても地球暮らしが長いトワに良い代物など分かるわけもなく手が止まる。


 「なあ、なんかおすすめのものってないのか?」

 「得物の良し悪しも分かんねえのか、坊主。じゃあまあ、適当なのを見繕ってやるよ」

 「頼む、魔王と戦うからいいのを頼むぞ」

 「ハァ!?」


 店主はトワの言葉に衝撃を受けて椅子から転がり落ちる。机に手をかけて起き上がってもその顔には驚きが張り付いていた。


 「冗談だろう?『憤怒魔王』と戦うっていうのか。超越者だぞ?」

 「本気だ……。そんなことはいいからなんかいいのはないのか?」


 目を見開き信じられないものを見るかのようにしながらナイフを探し出す。

 魔王に挑む者はこれまでも数多くいただろうが、それを実際に見るのは初めてなのだろう。


 数分経ち、店主は長剣と短剣をだった。

 刃は鈍く光り、柄は地味だが味のある模様で2人の手にもよく合うものだった。


 「へー、いいわね、コレ。せっかくだし名前つけようかな」

 「名前なんて付けなくていいだろ、めんどくさい」

 「えー、このボロボロのやつにもつけてたんだよ。『コジロウ』ってかっこいい名前を。う~ん、決めた。『ムサシ』にしよう」

 「そうなると僕のが『ニャース』になるから却下だ」


 これから魔王に挑むとは思えない2人の会話を聞き、仏頂面だった店主の顔が綻ぶ。


 「ま、勝てるかは知らんが頑張れよ。応援してるわ」


 2人の勝敗が彼の命に関わると知らないからか、それは軽すぎる言葉であった。もっとも、この世界ではそれを知っていたとしても、その言葉の重みが増すかは分からないが。


 「任せなさい!私とトワ君が絶対にあいつを倒すんだから!」


 その言葉をニカッと笑って店を出ていく。

 既に姿が見えなくなった扉を店主はどこか羨ましそうに見ていた。


 

 こうして2人はいくつかの店をめぐり戦準備を整えていく。

 結局2人が手にした短剣には特に名前を付けることはなかったが、リーティアは不満そうだった。

 

 「―――よし、これで買うものは全部だね。いやー、お金ほとんどなくなっちゃったよ」

 「『憤怒魔王』倒したら国から金もらえるんだろ。なにも問題ないじゃないか」

 

 1年間貯めに貯めた2人の所持金は日本円で4桁ほどになってしまい、今ではそこらの出店で間食を食べることにまで気を使っている。まあ、2人としては死ぬか報奨金を得るかの2択であるから一時の金の有無など気にしていないのだろうが……。


 「今日は戦準備で1日を使っちゃったから、討伐は明日ってことでいいわよね。」


 両手いっぱいに荷物を抱え宿に帰る。


 「わわッ、おねーさん!たくさんお買い物しましたねー。お土産はありますかー?」

 「わー、スイカちゃん、今日もかわいいねー。ごめんね今日はお土産ないんだ。また今度買ってくるから楽しみにしててね」

 「ほんとですか!?いやー楽しみが増えました!ありがとうございます!」


 目を輝かせて喜ぶスイカに破顔させるリーティア。昨日は出迎えてくれなかったこともあり、スイカに甘々なリーティアであった。

 スイカに挨拶をして部屋に戻り、身体を拭いてすぐに布団に入る。

 明日はディポニーでの最大の戦いになるだろうが、それを気負っていないのだろうか。 

 否、彼らはむしろこの世界で1番恐怖しているとさえ言えた。

 リーティアはともかく、トワは今でも死にかけた時を夢に見るほどに死を恐れ、忌み嫌っている。しかしそれでも彼が止まらない理由は1つだった。


 「―――それが僕の生きる理由だからな」


 死を恐れる男は死を許さない。

 異常なこの世界を彼の慣れている世界に染め上げる。

 ただ、そのエゴだけが理由であった。

 

 その夜は2人は夢も見ることなく泥のように眠った。



ロケット団のメンバーって変わったんですっけ?主人公は代わったけど、ロケット団は代わってない?

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