23話 始動 躍動 絶望
超越者がいた。
その者は激情を孕み、狂うほどの怒りをその身に纏っていた。
振るう拳は臓物を潰し、眼光で意識を刈り取るその者は太古の昔より生き永らえている。
天より授かりし力でもって暴威を振るう。
その者の名は『憤怒魔王』
7つの凶星の一つ。
超越者は確かに動き出す。
「それでは今日の授業はここまで。各自復讐を忘れないように」
先生がその一言を告げると、生徒たちは待っていたと言わんばかりに席を立ち教室を後にしていく。
この学校が強制ではなくお金を払って自主的に来る学校とはいえ、授業が面倒くさくなることはあるのだろう。
しかし、地球の時と同じく課題は出されるし、テストもある。これらが提出回数に満たなかったり、クリアできなかったりすると進級出来ないから授業には真面目に出なくちゃいけないのは変わらない。
あ、そう言えば僕も課題が残ってたな。
「トワさんも討伐課題残ってるんですか?」
「まあな。後回しにしていたってのもあるし、普通に時間がなかったからな」
僕の課題が残っているのに気付いたのか、アルジェが顔を覗き込ませながら聞いてくる。
討伐課題と言うのは、たまに学校側から出される課題の一つで指定の魔物を討伐するというなかなかハードな課題である。基本的には3人以上で課題をこなすことを推奨され、討伐した魔物と人数によって評価が決まってくる。
ちなみに、僕たちが最初にアルジェたちとあった時はちょうどこの討伐課題をやっていたそうだ。
「それじゃあ一緒に行きましょうよ。トワさんたちと一緒だと心強いですし」
「おっ、それいいね!それだと俺っちも楽できそうだし」
「カンガルー、頼りすぎちゃダメだよ」
ユナに言われて「ハハハ」と頭を掻いているカンガルーのことを甘やかさないように心の中で決める。
ただ、課題を一緒にこなすのはいいかもな。ここら辺は帝王種が出ないようだが、それでも不測の事態があるのが魔物との戦闘だ。そういう点では一緒に行動した方がお互いの安全のためになる。
それに、ちょっと青春っぽいし。
「じゃあ今から行くか。リーティアもそれでいいか?」
「もっちろん!どうせ暇だしね」
「お前は他の課題も結構溜まってるだろ」
さて、学校を出て魔物の出る場所に遣って来たのだが、なんだか様子が変ーーーらしい。
僕には分からないのだが、リーティアが首を傾げているから何かがおかしいのだろう。強い魔物がいる気配もしないし、命の危機があるわけでもないのだから何がおかしいのだろうか?
ん?気配がしない?
「魔物少なくないか?」
「トワ君も気づいた?さっきから全然魔物の気配がしないんだよね。というより人の気配もない。ちょっと異常だよ」
僕も彼女ほど気配を探れるわけではないが、1年間ハンターとして活動してきて何となくだが気配を感じ取れるようになってきたのだが、言われてみればおかしい。魔物が見つからないのはともなく、他のハンターの人たちも見つからないんて。
こんなことハンターとしてやってきて一度もないのだから。イヤなことだが、この世界はもっと死に溢れているのだ。
「う~ん。少し怖いし帰ろうか。課題はまた別の日にやりに来よう」
「了解。ごめん、みんな早いけど帰ろう」
アルジェたちは何も分かっていない風であったが、僕たちの指示に従ってくれた。魔法が使える彼らだが、実践経験が少ないからかこのような事態に慣れていないように見える。
帰ったらギルドと先生たちに報告しておくか。ギルドだったら何か情報を持っているかもしれないからな。
「―っ!みんな静かに!」
気の抜けかけていた僕たちはリーティアのその言葉で一瞬にして緊張が張り詰める。
口元に手を当てるリーティアは、額に汗をにじませながら耳を澄ますように遠くを見やる。
一体……何が。
困惑を抱えながらも、僕も彼女を習うように耳を澄ます。
そして次第に聞こえてくる不気味な音。
その音は少しずつ、しかし確実に大きくなって僕らの下へと迫ってくる。
「逃げて!!走って!!」
リーティアが指示を出した途端、僕らは反射するかのように走り出していた。
それが根源的恐怖が引き起こしたのかは定かではないが、どうでもいい。
考えている余裕なんてなかった。
力の限り走ることしか僕らには出来なかった。
この危機から逃れるしか、僕らが生きる道はなかった。
「スタンピードだ!!!!」
僕らの遥か後ろには数百匹の魔物が蠢く気配を強く感じる。
先ほどまでの静寂が嘘のようだ。
背後から聞こえてくる轟音からは、久方ぶりの死を感じた。
少し短いですけど、区切り的にちょうどいいかなって感じなのでごめんなさい。
皆さんはお盆休みに入られたのですかね?変わらず8月の間は平日に2つずつ投稿していきます。




