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始まりを刻む  作者: 桶満修一
第3章 魔法学校編
21/56

21話 遊び②

 トワがアルジェに誘われてアオフーに行ったころ、テラスで暇そうにしていたリーティアにもユナが話しかけていた、


 「リーティアちゃん。ちょっと2人で出かけない?」

 「ん?ユナじゃん。オッケーちょっと待って」


 ユナから誘ってくるなんて珍しい〜

 トワ君もアルジェたちとどっか行っちゃったし、ちょうどいいかもね。


 「それで、どこ行くとか決まってる?」


 


 「美味しいもの食べに行こ!」って誘われてここに来たけど、ここでよかったかな?

 私たちが来たのはエディスの街で有名な甘味処。

 この世界、ほんっと〜〜に甘いものが少なくて最近通ってるんだよね。

 けっこう砂糖をふんだんに使ってくれるから、地球で舌が肥えてる私も満足しちゃう出来なんよ。

 店長の名前もサトーさんだから砂糖の星の下で生まれたのかもしれない。


 「ここでいい?」

 「うん!ココ気になってたんだ。ありがとう」


 フフ、なぜお礼を言われたのか分からないぜ。

 喜んでくれてるんだったらいいんだけど。

 

 店内に入ると甘〜い香りが鼻を抜けていく。

 うむ、コレだけで幸福感がすごい。

 もうお腹いっぱい。いや、それは嘘だけど。


 「うーん、パンケーキでいいかな?ユナは?」

 「えっと……、私も同じので」

 「りょーかい」


 注文をしてちょっとすると、お待ちかねのパンケーキがやってきた。

 パンケーキって言っても地球みたいにふわふわじゃなくて、耳を切り取った分厚いパンを2枚重ねている。

 その上に真っ白のクリームと蜂蜜がたっぷりとかかってて、もう待ちきれない!

 いただきまーす!


 ハムッ


 「うっまーーい!」


 パンにまで染み込んだ上品な甘みとそれをかき消さない蜂蜜の苦味。口に入れた瞬間にとろけるクリームはまるで儚い夢のよう。

 ………うん、後半何言ってるか分かんなくなったけど美味しいのには変わりない。

 幸福の絶頂をオールウェイズ提供してくれるこのお店は最高や!


 「美味しい………」


 うむうむ、ユナも満足しているようだね。

 美味しさのあまり目を輝かせてパンケーキを見ているユナは、見ているこっちまで幸せにしてくれる。美味しいもの食べてる子見るのこんなにいいものやったんやなぁ。りつを。

 「リーティアちゃん!コレさいっこうに美味しいよ!」

 「フッフッフ、そうじゃろうとも。そうじゃろうとも」


 幸せそうな子を見ながら食べるパンケーキはうまいぞい。

 もうバクバクと食べれちゃう。

 アレ!?味がしない。まるで空気を食べているみたいな。

 ああ、食べ終わったのか。ククッ、一瞬の出来事だった。読み飛ばしたと錯覚してしまうほど一瞬で食べ終わってしまった。

 あ、ユナはゆっくり食べな。喉に詰まらせないようにね。


 


 「よーし、ごちそうさま。お勘定しちゃうから先出てていいよー」

 「ダ、ダメだよ!私たちはと、友達でしょ?ちゃんと自分の分は自分で出さなきゃ」

 「えー、でも私の方が稼いでるよ?それでも?」

 「それでも」

 

 うーん、そういうもんかー。

 私はぜんぜん奢ることに抵抗ないんだけど、ユナがそう言うんだったらそういうもんなんだなー。

 ヘヘヘ、友達か………。

 久しぶりの感覚だなぁ。

 こっちに来てから女の子の友達なんてできたことなかったし、友達とこういうとこ来るのけっこう夢だったんだよね。


 「じゃあユナ、一緒にお勘定行こ!」

 「うん!」

 



 ご飯を食べた後は運動して消化しないとね。

 ということで、やってきました『アオフー』!

 ココは最近出来たってことで有名になってて、いつか行きたいなーって思ってたんだ。まさかこんなに早く来れる機会が来るなんて。

 て言っても、なんのスポーツがあるかなんて知らないんだけど。

 ラグビーとかあるのかな。


 「わっ、見て見てユナ。ダーツなんてあるよ!やったことある?」

 「ううん、リーティアちゃんはあるの?」

 「まったく」


 私はもっと体を動かすのが好きだからね。

 ダーツも楽しそうだけど、他のスポーツをやりたいかなぁ。

 なんか良いのないかな?


 「おっ!バスケなんてあるんだ!しかも2on2も出来るし。ユナ、コレやらない?」

 「バスケ……?楽しいの?」

 「もち!」

 「じゃあ、やろ!ルール教えてね」


 ルールなんて簡単ですよ。

 要は3歩歩かずにリングにボールを入れるだけだからね。

 細かいことまで言ったらたくさんあるけど、遊びだしいいでしょ。

 よし、決まったことだしさっそくいきましょー!




 バスケのコーナーにやって来ると、もう相手のチームが待っていた。

 相手は男の子2人だったけど、なんら問題はないね。


 「よろしくー」

 「うん、よろしく」


 勝負は10ポイントマッチ。

 一回ボールを奪ったらスリーポイントの線まで下がらないといけないっていう、まあ一般的なルールかな?

 最初は私たちの攻撃から。

 こっちが女子2人だから譲ってくれたと思うんだけど、後悔させてあげなきゃ。


 「行くよ!ユナ」

 「うん!」


 笛の音が鳴って響いて試合が始まる。

 ボールは私からユナへ、ユナから私へと男の子たちの間を縫うように走っていく。

 普段の気の弱さからユナは運動が苦手って思われがちだけど、これでも魔物と戦っているのだから結構動けるんだよね。

 というか、地球だったらクラスで「すごーい!」ってなるくらいには運動できると思う。まあ、イコールバスケが出来るってわけではないんだけどね。

 

 「リーティアちゃん!」

 「まっかせなさい」


 ユナから回ってきたボールを華麗にレイアップで決める。

 今回のルールだったら2点も3点も関係なく1ポイントだ。

 そして、私たちの攻撃は終わって次は男の子チームの攻撃。


 「やるなぁ。お前ら」

 「フフフ、まあね」

 「俺らが勝ったら、この後少し付き合ってもらってもいい?」

 「ここは出会い系が来るところじゃないよ、少年。ま、勝てたら考えてあげてもいいよ」


 まったく、私たちの魅力にあてられちゃったか。

 浮気はしたくないし、ここは少し本気でやっておこうかな。

 とは言っても身体強化は使わないけどね。大人気ないし。

 そんなの使わなくてもユナと私だったら余裕で勝てるだろうし。


 「そんじゃあ、次は俺たちの攻撃だな」


 男の子はそう言ってボールを床に勢いよく突き始める。

 ダンッダンッと空間を揺らすような強い音が劈く。

 確かにボールを強く突いたほうがとられにくいけど、いくらなんでもコレは強すぎでしょ。ボールが手から離れて戻ってくるのにほとんど時間差がない。

 早すぎて私でも見るのが精一杯なんだけど。


 「はあっ!」


 くっそ、抜かされた。

 男の子はそのままゴールを決めてあっさりとこっちの攻撃ターンに回って来る。

 うーん、少し見くびってたかな?

 体を当てるとかだったら簡単なんだけど、ボールを取るってなるとかなり難しいかも。

 とりあえず、ゴールを外すわけにはいかなくなったな〜。


 ……………………

 ……………

 ………


 試合を初めてだいたい20分。

 点数は8対9。一回私たちの攻撃が止められて今は私たちの攻撃。結構厳しい展開になったなぁ。

 ここで決めるのは絶対条件。

 そんでもってこの後の男の子たちの攻撃を止めなければ私たちの負けだ。何回か見たからあのドリブルの癖はつかんできたけど、それでも早さに翻弄されちゃってゴールを止めるまでいけない。

 あー、浮気になっちゃうのはイヤだな。


 「クッソ」

 「よし、余裕~」」


 これで9対9。

 次が正念場。

 でもまったくもって作戦が思いつかない。トワ君がいたらやる気も出るし、ロウがいたら作戦を出してくれるのかもしれないけど、私ひとりじゃどうにもできない。


 「ねぇねぇリーティアちゃん」


 しょうがないから身体強化を使うかと思っているとユナが小声で話しかけてきた。

 ユナから話しかけてくるなんて珍しいなぁ。


 「どうしたの?あ、負けそうってこと?大丈夫、ユナには手を出させないから」

 「あ、ありがとう………。って、そうじゃなくて。それもそうなんだけど一つ試したいことがあるんだ…………」

 「え?」




 「しゃあっ、これを決めたら今日一日付き合ってもらうからな」

 「ほんとにガキのくせに盛りすぎでしょ。まあ、そういうのは勝ってから言いなね」


 ゲームの始まる合図を知らせるかのように男の子がドリブルを突き始める。

 何度見てもすごい早さのドリブルだよ。地球にいたら全国大会とかに行けるんじゃないかなぁ。魔素が体に在ったら身体能力が上がるとかあるのかなぁ。

 おっと、油断している場合じゃないか。

 男の子はドンッドンッとすごい音を立てながら一瞬のすきを突いてーーー


 「はい、終了ーーーはぁ!?」


 私を抜かして笑みを浮かべた相手だったけど、目の前に広がる光景に仰天する。

 彼の前にはさっきまでゴールしたでもう一人のマークをしていたユナが立ち塞がっていた。

 圧倒的速さでドリブルをしていた彼はいきなり現れた壁に上手に止まることは出来ず、体勢を崩してしまい、その隙にユナがボールを彼の手からはじく。

 やった!成功した!


 「ユナ最高!天才!」

 「た、たまたまだよ。偶然うまくいっただけだって」

 「全然偶然じゃないって!」


 実際ユナの作戦はぴったりハマった。


 『試したいことがあるんだけど…………。あのドリブルの人がドリブルを始めたら私がマークを外れてリーティアちゃんのサポートに行くの。そしたらすぐには止まれなくてブロックできると思うんだ。私のマークしてる人はシュートが外れた時を警戒してゴール下から動けないし、ドリブルの人はドリブルに集中して周りが見えてない。うまくいけば防御できると思うんだけど…………」

 

 言葉の通りゴール下から動けなかったアイツはカバーに行けなかった。

 もちろん声は出して注意したんだろうけど…………


 「おい、あの女が来てるって教えてくれよ!」

 「何度も言ったよ。聞こえてなかったんだろ」

 「んなわけあるかよ」


 自分のドリブルの音で聞こえてなかったみたいだね。

 まあ、あんな轟音の中心地にいればしょうがないんだろうけど、欠点もあるってことだね。

 もう1人もゴールを何回か外されてたから動くに動けなかったんだろうね。

 さて、次しっかり決めて終わろう。


 「しゃあねえ!止めるぞ!」

 「おお!」


 やる気になってるとこ悪いけど、勝たせてもらうよ。

 せっかくのユナの最高の作戦を潰すわけにはいかないからね。


 「ハッ!」


 フェイントを付けて1人抜かしてゴールは目の前。

 だけどまだ1人が私の前で仁王立ち。さっきの私たちのパクリかな?

 体勢を崩した私はこのままじゃ止められちゃう。私ひとりなら。


 「ユナ!」

 「うん!リーティアちゃん!」


 スリーポイントラインに立っているユナへとバックパス。

 ボールを受け取ったユナは緊張した表情を浮かべるも、覚悟を決めたのかゆっくりとシュートモーションに入る。

 

 「入るわけがない!」


 そうかもね。

 でも覚悟を決めた魔導士の底力を舐めちゃいけないよ。


 ーーシュッーー


 ボールが彼女の手から離れて宙を舞う。

 その瞬間全員の息が止まり、ボールを目で追う。

 リングをくぐるボールを。


 「~~~~!!!」

 「ナイス!ユナ!逆転勝ちだよ」

 「マジ……かよ。負けた…………」


 自分が信じられないみたいに両手を見つめてるユナだけど、自分が勝ったていう感覚が戻って来たのか涙目で私に抱き着いてくる。


 「やった、やったよ~」

 「大げさだよ。ただのミニゲームだよ」

 「こういうの勝てたの初めてだったから。うれしくて、つい。最後のシュートの感覚がまだ手に残ってるよ」

 「それじゃあ、これがこれからの勝利の始まりになると良いね」

 「うん!リーティアちゃんの期待に応えられたかな?」

 「期待以上だよ。もっと自信もって」


 初めてでスリーポイント決められる人なんてそうそういないのに、ユナは謙虚だなぁ。

 「私のおかげで勝てた」って言ってもいいくらいなのに。


 「そんなことで私たちの勝ちだね」

 「…………ああ、俺らの負けだ。すげぇな、そっちの子も。またリベンジさせてくれよ」

 「機会があったらね。女の子をあんな誘い方しちゃダメだからね」


 そう言うと男の子たちは帰っていった。

 素直な子なのかな。人の言うことにも、欲望にも。

 …………はーーーー、楽しかった!

 思いっきり体を動かして、しかも勝ってさいっこうに楽しかった!


 「このあとどうする?まだ時間あるし、もう少しアオフー回ろっか?」

 「うん、そうしたい。――――ってあれ、アルジェ君たちじゃない?」

 「ほんとだ、トワ君もいる」

 「声かける?」

 「―――ううん、平気。今はユナと遊んでいるんだからね」


まってね!もう少しで戦闘に入るから!日常会が書きたい気分だったの!

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