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始まりを刻む  作者: 桶満修一
第2章 ハンターの仕事
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13話 崩壊の音

 翌日から住民の人に調査を行った。

 最近噂になっている『闇犬』について、そいつらは活動しているのか。その2点だ。

 できれば『闇犬』はどのくらい強いのかも知りたいけど、構成員を知ることが出来ないんだから難しいだろうな。


 「どう?『闇犬』って知ってる?」

 

 さっそくリーティアが道ゆく人に聞いてみる


 「誰?」

 「なーんだ、『闇犬』ってのもそこまで有名じゃないみたいだね」

 「有名じゃないのは僕たちの方だぞ」


 ほら、怯えた表情でこっちを見てるし。

 いきなり質問したらこうなるのは目に見えてるだろ。

 あ、待って。大声出そうとしてる。


 「すいません、僕たちハンターで王都に異変がないかを調査してるんです。協力してくれませんか?」

 「な、なるほどね。それならそうと早く言ってよね」


 本当におっしゃる通りです。


 「その『闇犬』っての聞いたことあるわ。世界中を騒がしてるって噂で、確か今ここにもいるっぽいのよね。だけど別に、何か変って感じはしないわよ。小さい喧嘩なんかはしょっちゅうあるけど、そんなん日常茶飯事でしょ?」


 たしかにクリプン町でもハンター同士の喧嘩はよく見るし、それは王都も同じなのだろうな。

 

 「まあ、もし『闇犬』さんが暴れても大丈夫よ。何てったってリヴェラル様がいらっしゃるんだもの」


 リヴェラル………、ああ例の『六神天将』の1人か。どうやら相当に心酔してるみたいだ。


 「そのリヴェラルさんってそんなに強いんですか?」

 「何言ってるのよ!この国に降りかかる災害をもう何回も防いでくださってるのよ。強いなんてもんじゃないわよ」


 うわぁ、圧がすごい。

 あれだよ、狂信者ってこういう感じのことを言うんだよな。

 あんまりリヴェラルのことを貶さないほうがよさそうだな。

 いや、もとより貶すつもりなんてないけど。


 「そんな感じだから『闇犬』が何をしようとも問題ないわよ。あの人たちが何をしたいのかなんて知らないけど」


 と言い残してどこかに行ってしまった。

 ありがとう、名前も知らぬ人。

 全然新しい情報を貰えなかったけど切り替えよう。次の人がめっちゃ知ってるかもしれないし。


 「すいませーん」

 「誰?」



 その後も道ゆく人何人かに聞き込みをしたが、特段変わった情報は得れなかった。

 『闇犬』という名前は知ってるけど、目的も王都にいるのかも分からない。

 いたとしてもリヴェラルがいるから大丈夫。

 だいたいの人がこの2つを答えるくらいで、王都に異変があるとは思えないらしい。


 「ここまで信じられるリヴェラルって人に会ってみたいね」


 確かにな。みんなに手放しで信用されるほど強いとか、よほどいいやつ何だろうな。

 日も傾いてきたし今日はもう終わりにするか。

 


 翌日も、翌々日も聞き込みの調査を行ったが、目新しい情報は何もなく、むしろ曖昧な情報が増えてきた。

 実は人のために動く心優しい組織だとか。

 殺戮を繰り返す犯罪組織だとか。

 真の目的は世界征服だとか。

 根も葉もない噂が飛び交い、何が本当で何が嘘なのかさっぱりわからない。

 だんだん出てくる情報も曖昧になってきた。

 しかし不思議なことに、確証のない情報が増えれば増えるほど言いようのない恐怖が湧き上がってきていた。



 「うーん、これ以上ここにいても大したこと知れなそうだし、そろそろ帰る?」


 王都に来て5日目、リーティアが痺れをきたしたようで帰宅を提案してきた。

 調査に飽きたというのも理由の一つではあるのだが、このノイスという王都を見飽きてきたのだろう。王都と言っても所詮は中世レベルの建物があるだけで地球出身の僕たちとしては目新しくないし、仲のいい人がいるわけでもない。

 早く帰りたくなるのも分かるというもんだ。


 「そうだな、今日中に支度して明日帰るとすーーー」


 ドオオオオオオオオオオンッッッ!!!


 「!?」


 僕の言葉は街を揺らす爆音によって遮られた。

 咄嗟に振り返ると、煌びやかな王都の一画が炎に包まれ炎上していた。


 「な……にが?」


 状況が飲み込めないまま発した言葉は形を成さず、混迷の中に消えて行く。

 呆然とした気持ちで炎上する街を眺めていると、視界の隅で女が立っているのが見えた。


 金色の長い髪を靡かせて王都を見下すように立っている女に嫌でも視線がいってしまう。一瞬、逃げ遅れたのかとも思ったが、女の笑みを見てそれは違うのだと分からされる。

 あれは冷笑。

 あれは一連の事を為した者がする成功の証。

 女に目を奪われていると、その女は街全体に響くように声をあげる。


 「俺の名前はルミアス・ルリユス!高貴なる『闇犬』の一員にしてこの地を征服する者。俺の目的を邪魔する者は皆灰燼と帰すことを知れ」


 あまりにも一方的で、それでいて本当にそれが可能である事を知らしめるような威圧感を放ちながらルミアスは言う。

 彼女の全身から発せられる魔力は熱を持っているようで、息をするのさえも苦しい。いや、これは本当に熱が原因なのかも分からない。

 暑いはずなのに震えが止まらない。

 僕が震えている間にもルミアスは王都を炎の海に沈ませている。


 「!?トワ君何やってんの!早く隠れて!」


 物陰から出ようとした僕を慌てて止めるリーティアに服の端を引っ張られる。


 「誰かがアイツを止めないと………。街が、人がどんどん壊れていく。だから……」

「だからトワ君が止めるって言うの!?無理だよ!」

 「そんなの分からない!」 

 「分かるの!トワ君には感じられないだろうけど、アイツの漏れてくる魔素量だけで私の何倍もあるの!接近戦なら分かんないかも知れないけど、近づく前に消し炭になっちゃうよ!」


 リーティアの言葉は的を得ている。

 今の僕の力ではどう頑張ってもジギラスと同程度のAランクの力を持っていると言われているルミアスに勝つことは難しいだろう。

 だけど、正論だけじゃ僕は止まれない。

 止まっちゃいけない。

 

 「じゃあどうすんだよ!このままじゃ王都が沈むぞ!」

 「それは……………」


 僕じゃ勝てないなんて本当は分かってる。

 でも、せめて時間は稼がなきゃ。

 どうせ一度捨てた命なんだ。

 みんなのために捨てられるんだったら、今ここで!


 「…………君が行く必要はない」


 瞬間、突風が吹いたかと思うと肩に手が置かれていた。

 肩に手が置かれるまで存在に気づけないほどの存在なのに、目の前の男から発せられる威圧感はルミアスに匹敵する、もしくは彼女を超えるほどなのだ。

 男は眩しいほどの白髪を指で撫でてルミアスのもとに歩いて行く。



 「僕がいるから。『六神天将(ゼクスクヴァルト)』が一人、リヴェラルがね」


ルミアス・ルミユス。

めちゃくちゃ名前を間違える。どっちが名前だったっけ、ってずっとなってる

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