11話 ロウの戦い方
敵は普段の俺たちじゃ絶対に倒せないオーガ。
対する俺たちは近接戦が得意な俺とリーティア。プラス、おまけ程度に魔法が使えるトワ。
「どうするの?」
リーティアが聞いてくる。
オーガの特徴としては、オークとは比較にならない程の膂力と、群れを率いて相手を押しつぶす知能。それに加えて、簡単な攻撃じゃ傷もつかないぐらいの、強靭な肉体だろう。
今回は周りに仲間が見当たらないところを見ると、戦闘の音が聞こえてやってきたはぐれ個体だろう。
それでも、こっちには嘘か本当か知らんが、オークロードを倒した2人がいるから戦えると思うのだが………。
「あの時はアドレナリンがドバドバ出て出し、正直限界を何度も超えてたと思う。もう一回できるかって聞かれたら素直に頷けないかな。それに、あの時にできた傷とかで満足には動けないかな」
アドレナリンが何なのかは分からんが、そうか今の俺たち以上の力以上は期待できないか。
そうなればかなり厳しい戦いになる。ああ、ヤバいな。
「?ロウ、なんで笑ってんの?」
「あ?」
今、俺笑ってたか?
まあいい。やってやるよ。
「リーティアっ、お前は少し時間を稼いでおいてくれ。そんぐらいはできるだろ?」
「もっちろん。リーちゃんにまかせてよ」
リーティアはすぐに短剣を構えてオーガの方へ駆けていく。恐怖ってもんがないのか?あいつは。
「よし、トワはいつでも火球を撃てるように魔法陣の準備だ。俺の合図にピッタリ合わせられるようにしとけよ」
「了解だ。しくじるなよ」
「こっちのセリフだよ。生意気な奴だな」
覚悟しろよ、オーガ。群れから離れて俺たちのところに来たのが間違いだってすぐに分からせてやるからな。
俺もリーティアに続いて剣をオーガに振るうも、強靭な腕に阻まれてしまって刃が通らない。くそっ、やっぱりコイツの不意を突かないと攻撃は通りそうにないな。
俺の剣を防ぐとヤツの拳が振り下ろされる。まともに食らえば、内臓が破裂して肉が抉れる一撃必殺の拳だ。だが、今の俺にとってはあまりに鈍重だ。冷静になったらこのぐらいの攻撃、何回でも避けられるんだよ。
それでも連発されたら逃げ場もなくなるものだが、そうなる前にリーティアが気を引いてくれて標的が俺から彼女に変わる。やっぱりいい女だな。
そして何度も切り結んでいくうちに、1つの違和感に気づく。
普通の魔物であったらしない動作だ。
普段の俺だったら気づかなかったであろうその小さな違和感は、一度気づいてしまえばあまりにも大きな弱点として露呈してしまう。
「それに、弱点も掴んだ。最高だぜ、リーティア」
「えへへ、そうかな~」
群れからはぐれた個体だからあるんじゃないかと睨んでいたが、予想が命中したようだ。そうなれば、こいつを殺すのも時間がかからないかもしれないな。
オーガが思い一撃を俺に向かって放ったそれを剣で受け流す。地面がいくらか陥没するのが、それの威力を教えてくれるがそんなのを気にしている余裕はない。
ヤツの体勢が崩れて俺とリーティアから目を離した隙を突いて、後ろのトワに合図を送る。
「撃て!ヨコだ!」
言葉足らずの俺の合図を完璧に理解してトワが数瞬の遅れもなく〈火球〉は放たれた。
魔法を放つうえで気を付けなければいけないのはヤツの体皮の硬さだ。強い魔法であれば気にしなくていいのだが、〈火球〉程度じゃ絶対に身体をよろけさせることなど出来ないし、その身を焼くことすら難しい。それでも俺はトワの〈火球〉が形勢を変えると信じている。
爛々と輝く火球は目で追えない程の速さで空を走り、オーガの顔のすぐ横に着弾する。
予想通り大したダメージにはなっていないが、眩い魔法は別の効果をもたらす。
その光り輝く魔法弾に目を奪われ、対象は動きを止めたのだ。
今がチャンスだ。
ザンッ
音を立てることなくヤツの脚の健を切ると、オーガは頭を垂れるかのように手を地面につけてバランスを崩す。
リーティアの方を見ると無言でうなずいて、勢いよく駆けだす。ああ、分かってくれると信じてたぜ。
リーティアの短剣じゃあ、オーガの首を切り落とすのは不可能だ。リーティアも分かっているのか、優しく剣を放るとガッチリと両手でそれを握り振り下ろす。
「きれいだ………」
剣を振り下ろす美少女の姿に思わず言葉が漏れる。
その言葉がオーガが聞く最後の言葉となっただろう。
数瞬後には彼の頭は胴に別れを告げ、コロンと足元に転がってきていたのだから。
ふーっと一息ついて、絞り出すように言葉が俺の口から出てくる。
「勝ったな」
振り返ると危ない戦いだったな。
俺もリーティアも一発も喰らわなかったことがうまく出来てるし、ムカつくがトワの火球も抜群のタイミングと着弾箇所だった。
ヤツの弱点がなかったら一体どうなっていたか。
「そういえば、結局弱点って何だったの?」
「目だよ。アイツはどこかでケガをしたのか、生まれつきか知らんが目が良く見えてなかった。最初の俺への攻撃もその後も、俺たちが攻撃をした後に殴ってきてただろ?だからそうなんじゃないかって思ったんだよ」
もっとも、完全に見えてないわけじゃないだろうがな。相手が止まってたりしたら自信をもって拳を振れるんだろうし、一番最初の一発がその後のよりも早く感じたのは勘違いじゃなかったんだな。
「じゃあ、トワ君の火球もそれを狙ったってこと?」
「ああ、そうだ。少しでも目が見えてたら光ってる方に意識が向くだろ?普段目をあまり使ってないんだったらなおのこと。まあ、あれだけの火力があったら普通に当てた方が良かったかもしれねえけどな」
それだけは予想が外れた。
大方、あいつの魔法は豆鉄砲ぐらいだと思ってたが、想定を軽く超えてきた。魔法陣に時間を賭ければあれだけの威力が出るとは………。
「すまん、お前を見くびった。許してくれ」
「!謝る必要なんてない。倒せたんだからいいじゃないか」
少しびっくりしたように瞬きして俺にそう返してくれる。
いい奴なのがムカつくぜ。
「おー、ちゃんと倒せたじゃねえか。やるなー」
その声に振り返るとジギラスさんが手を振って駆け寄ってくる。
この人がいてくれたおかげで周りを気にせずに戦えたのだが、それだったら最初からこの人がオーガと戦えばよかったと思うのだが………。
「それじゃあ、訓練にならないとでもいうんでしょ?」
「おっ、よく分かってんじゃねえか。よし、持てる奴だけ持って帰るぞ」
本当にこの人の強さは図れねえな。
Aランクはどれだけ遠いんだよ。
みんなが素材の回収をしている中、俺はオーガの頭を持ってよろついているトワに近づき話しかける。
「とりあえずは認めてやる。だが、今度少しでも力不足だと感じたらすぐにぶっ飛ばしてやるからな」
「だから、僕とリーティアはそういうのじゃないからな」
信じあってる2人がそういうのじゃないはずないだろ。負ける気はないけどな。
こうして俺の、俺たちの共同依頼は終わった。




