#143 夏休みは終わらない
「千歳ちゃん?」
「何か言うことあるよな?」
「ご…ごめんだっピ!」
みなさんどうも、千歳さんに笑顔で尋問している飛翔です。何も伝えてないわけじゃないんだよ。まぁ…希死念慮というのはあったんだけどね…
「千歳さん、ちょっと旅に行ってくるよ。」
「おぉ!どこに?」
「夜見川。」
「もしかして死ぬんですか?」
「それはわからんけど。まぁ、行ってくる。あ、他の住民にも伝えておいてね。」
「あ、はい。」
あの朝、確かにこう言ったんだ。でも…この状況だと千歳はみんなに伝えるのを忘れた。そしてたまたま手紙に気づいた瑞穂が結花と一緒に心配して夜見川に来たというわけだ。あれ?…もしかしてこれは僕が悪いのか?
「でも…まさかそうなると思わなかったっピ!」
「…千歳、飛翔を軽く見過ぎだよ…」
「もしかしたら飛翔さんはあの場所で絶望して死んでいたかもしれない」
「…千歳ちゃん…飛翔さんは…わたくしたちにもこの世界にも必要なんです…」
「えぇ…」
「…それにあずさとこのはは飛翔がいなくなったから探す時…とても言葉にできない顔をしてました!」
「そうだな…あの顔はただの悲しいや寂しいだとかそんな易しいものじゃなかった。一晩泣いて、出る時に部屋覗いたら涙で目が腫れてた。それほど悲しかったんです。」
「伝えてほしかった…」
「そうですわ…」
「ご、ごめん。」
「ま、まぁ…」
そのあと少しだけ泣いていた。これを見て死のうだなんて、勝手に旅に出るなんて思っててもやってはいけないんだと思った。大事な人がすぐそばにいるのに。しかし、話を聞いて気になることがあった。
「ところで凛は?」
「あー…実は凛は飛翔が旅行に行ったその日、就職先の都合で神楽阪から引っ越したんだ。」
「どうせみなみのか大湊でしょ。」
「いや、石森ですわ。だから…もうすぐ6部屋ぐらい空くのかな…」
「石森なら…あの神社の巫女でもやるのか…?」
「飛翔、とっても察しがいいな。」
「凛さんには残念ですが、あの神社でも元気にやって欲しいですわ。」
「そういえば6人…この世界に来るって。」
「そういえば9月に6人転生してくるって聞いたな。今度大きなセレモニーをやるって。」
「全員ここに住むといいですけど…」
「まぁ、来月だからな。…そうだ、それまで空き部屋使って塾でも開こうぜ。」
「それいいですわね!」
こうしてシェアハウスでは夏休み限定で個人塾が開校することになった。これが吉となるか凶となるかわからないが教えられるだけ教えたい。夏休みだから図書館も学食もないこの日常でも、楽しめるものが一つあるだけでうれしいものである。




