エピローグ
「げ、今日も創真いるの?」
「いるに決まってるだろ。そういうコンサートなんだから」
「あはは、冗談だよ。今日もよろしく」
「うん。今日の連弾は勝手に弾かないように頼むよ」
「勝手になんか弾いてないじゃん。昨日はああいう風に弾きたいなって思ったから弾いただけだもん」
「それを勝手って言うんだよ!あんなめちゃくちゃして、合わせる側は大変なんだから!」
「お客さんも喜んでたし、創真もあれくらい文句言わずについて来てよ」
25歳にもなってわーわーと子供のように言い合う二人を、私とあかりちゃんはやれやれと思いながら眺めていた。真白君の師匠、虹村さん主催のコンクールに招待された私とあかりちゃんは開演前に挨拶に来たのだけど、様子を窺うまでもなく元気そうだ。
「ごめんね。あの二人が一緒になると毎回あんな感じで。ほんと嫌になる」
虹村さんは二人を見て頭を掻く。
「あはは…」
「奏も真白君もあの頃から何も変わってない……」
そう言いながらもあかりちゃんの表情には笑みが浮かんでいる。
「ほら!そろそろ開演だよ!準備して!」
「はーい」
虹村さんが手を叩くと、二人はまるで子供のような返事をした。
「あ、カレンちゃん、あかり!」
「私たちはここで見とくから。ほら、お客さん待ってるよ!早く行く!」
あかりちゃんが奏ちゃんの背中を押す。
世界を股にかける二人の日本人ピアニスト、真白創真と音無奏のコンサートは連日超満員だった。
二人は今日も誰かのために、そして自分のために、それぞれの幸せを奏で続けている。それは使命だからじゃない。純粋に、ピアノが大好きだからだ。
きっとこれからも、二人はピアノを弾き続ける。




