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黄泉大神の随に  作者: たそちゃんぴ
2/2

家族1


俺の名は優。一家の大黒柱で父親だ。


愛する妻と、2人の子と幸せに暮らすため、今日も仕事に励む。


仕事は鍛冶屋。農具を主に作っている。


もともと婿入りして継いだ仕事だったが、性に合ってたようで、今では余裕がある生活が出来る程度に注文がきている。


カンカンカンカン


鉄を叩く音が鳴り響く。

ここは、ど田舎もいいとこ、それも更に山奥。

聞こえるのは鳥のさえずりや、川のせせらぎぐらいなものだ。



「夜ご飯できたわよー。」


(おっと、うちの可愛い奥さんの声もあった)


「紅、呼びに来てくれてありがとう。片付けたらいくよ。」


「分かったわ、早くしてね!冷める前にね!サクもハナもそろそろ帰りましょう。」


「「はーーーい!」」


仕事場の周りで遊んでいた子どもたちが元気にかけてゆく。


(さて、さっさと終わらせますか)


火の始末、道具の片付け、明日の段取りを手早くこなす。


「ふぅ…意外とかかってしまった。」

片付けが終わり、俺は神棚に手を合わす。


「火の神様、今日も無事仕事ができました。感謝感謝ー!」


若干ふざけながら手を擦り合わせ、拝む。


(鍛冶屋は火が命だ、必ず手を合わせ拝むこと、だっけな。生前お義父さんに酸っぱく言われたからなー)



そして、家への帰路についた。といっても、歩いて15分程だ。俺は急いで山をくだった。そろそろ我が家が見えてくるはず。


(あれ?なんか家の方が明る…い?)


日が沈みかけ、暗くなった森を抜けた先。視界に入ったそれは、轟々と勢いを増した炎に包まれた我が家だった。



「ーーーーーーーーっ!!」



声にならない叫びあげ、俺は駆け出した。


火の勢いの弱い壁をぶち破り家へと入る。

「紅っ!!サクっ!!ハナーーっごほっごほっ」


煙も回りつつある。時間がない。焦って探すが、誰の姿もない。


(もしかして避難できたのか?)


そんな思いがよぎったとき、視界の端に何かがいた。



「あーー、失敗かー。やっぱり無理やり入った身体じゃだめかー。」


投げやりにりに何かを呟く。床に仰向けに寝転ぶそれは、皮膚がドロドロと溶け出し、原型が無くなろうとしていた。


そいつの左手には、俺が妻に贈った指輪がついていた……。


(あぁ……あ、ぁぁぁ、なぜ、、なぜ)




こちらが絶句していると奴が喋った。


「あ。こいつの家族かな?ごめんね?もう手遅れなんだー。一応手は尽くしてみたけれど、もう無理だねっ!!……だから、さっさと離れな。」



そう言うと、奴は手をこちらに向ける。


「お前、家族になにをー」

そう言いかけたときには身体が勢いよく外に吹き飛ばされていた。


「ぐはぁっ」


3回、4回と地面を転がり、木にぶつかり止まった俺はよろよろと身体を起こした。



吹き飛ばされた直後、家は更に炎の勢いが増し近づくことさえ出来ない。


(くそっ……俺の家族……紅、サク、ハナ、どこだ。どこにいる。いてくれっ…!)

血の味がする。痛みの走る身体を引きづりながら、周囲を探し回った。




「み、見つけた!!」

家から少し離れた茂みの奥に我が子を見つけた。


だけど1人だった。


急いで容態を確認する。



呼吸もしてる。顔色もいい。火傷もない。だけど


(ーーっ…片手がない!)


左の手首から下がなかった。

傷口はなぜか塞がっている。


悲しみと数多の疑問が浮かぶが、思考が追いつかない。今は兎に角、


(急いで安全な場所に!)


子どもを両手で抱え立ち上がる。

その時、背後の燃え盛る家の方から音がした。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ



慌てて振り向くと、異様な光景が広がる。


炎が収束していく。まるで、家の中心に吸収されるように。そしていつしか2mほどの球体になったと思った瞬間、


目を塞ぎそうになるほどの眩い光の柱に包まれ、炎の球体は消え去っていた。




1時間後。

俺は子どもを連れ、麓の町まで降りていた。

幸いにも車は燃えていなかったので、さほど時間はかからなかった。そして俺は、急いで町の診療所に駆け込んだ。



「先生、子どもをお願いします。」


「はいはい、任せない。だけど帰ったらちゃんと説明してもらうよ?」

白衣を着た初老の女性は困った顔で見てくる。

子どもの左手をみても慌てないあたり、相当に肝が据わっている。


本当は子どもの側にいたい。だけど、まだ1人見つかっていないのだ。


「すみません、俺にも分からなくて…とりあえず行かなきゃ……。」

未だに意識の戻らない子どもを診療所に預けると、俺はもう一度家のあった場所に戻った。

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