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第五十八話 完成しました!




 シャマトさんと気になる別れ方をして一週間。


「お、おおおお…」


 さて、その一週間で何が起きたかと言うと…


「お、おおお、おおおおおおおおおおお…!」


 変な声が出てるけど、どうか許してほしい。


 だって、今、俺の前には…


「これが、俺の…」


 完成したばかりの自分のお店があるのだから!


 一週間前まで寂れた外観の空き家が新築のように綺麗に、しっかりと存在している!


「ま~ったく。何が『ちょっとした改装』じゃ。」


 感動している俺の横にいるグレットさんがため息をついた。


「後半ほとんど『新築作ってる』もんじゃ!ったく…」


 そう言い終わるとグレットさんはニカッと笑い、


「こんなに面白い現場は初めてじゃ!お前さんとの意見のぶつけ合いも楽しかったしのお!」


 そして、満足そうに頷いた。


「【アームズ工房】の歴史の中でも、最高の出来じゃ。」


 その言葉だけで俺にとっては充分過ぎるものだ。


「本当にありがとうございます。」


 外観は改装が終わっただけあってとても綺麗だけど、見た目は商店街にあるお店と変わらない、この世界で良く視る一般的な造りにしてもらった。


 内装も商品を置く棚や高価な商品を置く展示ケースなどを設置しているけど、特別目立つような造りはしていない。


 理由は当然ある。


 当初の計画では俺はコンビニのような見た目のお店を作ろうと思っていた。外はガラス張りにして、広い売り場に商品をたくさん置いて、色々な物を手に取ってもらおうと。


 現代日本じゃ珍しくないコンビニも異世界なら目立つこと間違いない!


 だけど、グレットさんがいきなりストップをかけてきた。


「確かに目立つがの…初見の人間は入りづらいぞ?」


 そう言われて、俺も気づいた。


 お店のインパクトがどれだけあったとしても、実際に店に入るとは限らない。なんなら「変な店だな」と思われるだけで入ろうという気持ちすらなくなってしまうかもしれない。


 それに問題点は他にもあった。


 家電量販店などの専門店ならともかく、俺の知る限りコンビニで店員さんに商品説明を求めた人はほとんどいなかった。


 コンビニに置いてある商品は説明なんかなくても問題ないくらい単純な物、もしくはすでに一度は使った事のある物ばかり置かれていたからだ。


 でも、ここは現代日本じゃなくて異世界だ。


 【廃棄工場】を使って、たくさんの商品を置いたとしても、説明無しでその使い方が分かるとは思えない。フライパンの蓋が【窓盾】なんて武器になってしまうぐらいだ。


 …あれは俺が悪かったんだけど。


 商品の説明をお願いされても時間が足りないし、何よりいくら元手がかからないと言っても、そんなに商品を置いたとして在庫が管理出来るのか。


 現代日本と違って、監視カメラもないのだから、万引きをされる可能性も充分にある。


 そんな訳でグレットさんと相談して、外観も内装もユーランではよくある普通のお店らしいものにしてもらった。


 ただ、広さだけは他の店の二倍はある。


 元々は一軒の空き家を使うだけだったんだけど、設計上、もっと場所が必要となったので隣の空き家を壊してその分、店を広くしてもらった。


 そんな大工事を一週間で終わらせられる当たり、さすがと言うべきか。


 お店には大きな窓から気持ちいい風が入ってくるし、日の光もしっかり行き渡っている。



 そして、他のお店と違ってこだわった部分もある。


 商品を置く棚だ。


 材質は木材で塗装はなし。


 木材本来の柔らかい色にしてもらっている。


 棚も最初は俺の身長と同じくらいの現代日本のコンビニに置いてあるような背の高い物にしようとしたけど、全部、俺の身長の半分ぐらいに高さにしている。


 高さがなくなって俺の眼が届きやすいって意味もあるけど、背の低い人や子供でも商品が見やすい高さに統一する事で、誰でも手に触れられるようにした。


 高価な商品を入れる展示ケースの一部はお会計をするカウンター内の壁に絵のように飾ってみた。


 人が込んでいて商品を全部見ることが出来なくても、お会計の時に必ず見てもらえるようにだ。


 当然、棚と展示ケースも【アームズ工房】製の特注だ。


 グレットさんに俺の考えた棚と展示ケースを伝えると『…任せろ、ハイキ!最高級の木材でやってやらあ!』と火の着いた職人さん達と無茶苦茶な速さで仕上げてくれた。


「ハイキの兄さんの考えは親方に突き刺さるものだったんでしょう。意外と繊細な所ありますから。」


 ランドさんがこっそり教えてくれたけど、そんな感じで棚も必要な数が揃った。


 一応、お客さんが来るお店としてはこんな感じだ。


 カウンターの奥には店の事務所と応接室も造ってもらったから、事務作業や急な来客にも対応は出来るようにした。


 コンロ魔具も設置してもらったから、お茶や簡単な料理も出来る。


 素人意見だけど、それなりに気遣いのお店にはしたつもりだ。



 ちなみにここまでが前半だ(・・・・・・・・)


 …じゃあ、グレットさんの『後半新築造ってるもんじゃ』とはどういう意味なのか?


 それは…


「しっかし、お前さん。店の地下にあんなもの造るとは…今までなかったぞ?」


 グレットさんはお店の地面を指さした。


「管理部屋と倉庫なら分かるが…生活スペースと風呂場、トイレ…本当に貴族の家、造っているみたいじゃった。」


 そうです。


 お風呂場を作ってもらいました!


 あ、もちろん、サイラさんから買った魔石バスタブが使えるようにしてもらっている。


 魔石バスタブはもう設置しているけど、魔石バスタブに直接配管をつないでいる訳でもないので【収納】にすぐ入れられるようにもしている。


 ただ、地下にお風呂場を造っても蒸気や熱、水の問題もあったので、そこを解決出来るようにグレットさん達と念入りに打ち合わせはした。


 結果的に、お風呂場で出る蒸気や熱、排水は配水管や排熱管を作ってもらって解決。排水も垂れ流しにするのではなく、サイラさんに『浄化用魔道具』を用意してもらっているので、環境も大丈夫。


 生活スペースには今俺がお世話になっている小鳥の宿よりも広い間取りにしている。


 大きな家具はベッドと机に椅子、それに棚が一つ置いてあるだけで、今後色々な物を補充すると思う。


 何にせよ、これで今まで農業地に行かないと食べられなかったカップ麺やカレーを安心して食べる事が出来る!


 だからと言って、小鳥の宿から引っ越す予定は今のところない。


 食事の利用なんかには使うけど、地下は秘密基地みたいな位置づけだ。


 やっぱりこういう隠れ家ってのはワクワクする!


 場所もしっかり広いし!


「『空き家二軒分の場所が必要になった』と伝えたら、ギルゼ支部長も苦笑いしておったぞ。」


 …それは本当にごめんなさい。


 一階に事務所作ったり、地下から色々な配管を通したり、地下のスペースを確保しようとすると、どうしても二軒分は必要だったんです。


 ギルゼさんだけじゃなく、役所にも事情を話したり、住民の人にもご理解いただいたり、まあ、大変でした。


 なんだかんだで必要な許可は全部いただきましたけど!


 とにかく、ハイキ商店。


 無事完成しました。


 オープンまでもう少しです。






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