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第五話 自分の状態を確認したらすごい事になってました



「……」


 どこまでも広い地平線、鼻に香る草の匂い、吹き抜ける風が気持ち良く、深呼吸する。


「ふう。」


 車のエンジン音も雑踏の音もない、静かな新鮮な空気を思いっきり身体に取り込む。


 本当に異世界に来たんだ。


 スマートフォンや本で読んだあの異世界へ。


 ただ、俺が望むのは冒険活劇じゃない。


 静かで平和な生活だ。


 命のやりとりも争いも無縁な生活だけが望みだ。


「…ってあれ?」


 今更だが、俺は自分の格好を視て驚いた。


 服も靴も自分が買った事も売っている事も見た事が無いものだった。


 まるで、冒険ゲームの村人のような…


 ブウウン、ブウウン、ブウウン!


「お!?電話か?」


 慌ててポケットに入っていたスマートフォンを取り出し………


「…なんで?」


 なんでスマートフォンが?


 それに電話?


 着信画面には『女神』の文字が浮かんでいる。


 意を決して電話に出る。


「…もしもし。」


「あ、通じた通じた!元気?大丈夫?」


 間違いない。


 女神様の声だ。


 でも、どうして?


「実はね、君に伝えていなかった事があって。少しだけ時間もらえる?」


「はい、もちろん。」


 まさか、異世界でスマートフォンを使って電話するとは思わなかった。


 さっきの異世界の感動が吹っ飛んだけど、これはこれで充分すごい事だ。


 女神様と電話してるんだから。


「まず、スマートフォンだけど。これは貴方専用のアイテムなの。貴方しか使えないし、望めばどこにでも現れる。それに絶対に壊れないし、充電不要。ただし、前の世界とは繋がらないから。」


「出来るのは女神様との連絡だけって事ですか?」


「…いいえ!それだけの為に前のの世界の物を送る訳はないです!はい!本当に!」


「そ、そうですか?」


 なんか急に早口になったけど、もしかして別れ際の『神殿に来て』を思い出して、気まずくなったのか?

 確かにしばらくのお別れって感じだったのに、体感五分も経ってないし。


「そのスマートフォンには貴方専用のアプリを入れているの。通話しながら操作してみて。」


 言われるがまま通話状態のまま、画面を操作してみる。


 前の世界で自分が使っていたスマートフォンそのままだ。


「…なんだこれ?」


 元々、スマートフォンには遊んでいたゲームアプリとSNSアプリばかり入っていたけど、今はほとんど消えていた。


 トップ画面に並んでいるアプリは、


【通話】

【メール】

【スキル一覧】

【状態確認】

【収納】

【最新貨幣価値】

【治安情報】



 となっていた。


「【通話】は私との連絡が出来るわ。【メール】は一方的な連絡になるけど、役立つ情報もあるからちゃんとチェックしてね。」


「……」


「それから【スキル一覧】で今の貴方の【スキル】が細かく分かるし、【状態確認】では健康状態も見れる。【収納】を使えば貴方の【スキル】と連動して荷物を自由に出し入れ出来るの。【最新貨幣価値】と【治安情報】は今いる土地の事が分かるから参考にして。」


「…………」


 え、何これ?


 すごすぎじゃない?


【スキル】なくてもこのスマートフォンだけで生きていけるんじゃ…


「あ、あの女神様?これ、色々とマズイんじゃ?」


 前の人が相当なクレーマーだったと聞いたけど、自分も知らず知らずそうなっていたのか?


 だとしたら、本当に申し訳ない。


 それにこれだけしてもらったら、女神様も色々大変なんじゃ…


 そんな俺の心境を察してか女神様の慌てた声がスマートフォンから聞こえる。


「ああ、大丈夫!だって、君には【スキル】を三つあげたでしょ。それを補う補助アイテムはあげちゃいけないって決まりはなかったし、言ったでしょ?お礼って。」


「あ…」


 思い出すのは、女神様とのあの唇の感触。


 柔らかくて、それにその…


「と、とにかく!貴方の服装も目立たない物にしたし、念のためお金と食料も【収納】に入れているから!あと貴方の身体を十八歳ぐらいに戻したわ。」


「え?」


 思わぬ言葉に一気に頭が冷めた。


 女神様は静かな声が俺の耳に響く。


「…貴方、二十歳の時に騙されて怪我をしたでしょ。そのせいで激しい運動が難しくなった。だから、怪我もしてなくて一番体力のあった十八歳に戻したの。事後報告でごめんね。」


「…女神様。」


 すっかり忘れていた。


 二十歳の時に俺は友達だと思っていた奴に騙され、身代わりにされたのだ。


 そいつがやった事の詳細は今も知らないけど、とにかくそいつは呼び出されて来た俺に『自分も被害者だ』と言い張り、バットや武器を持った男達と一緒に俺へ暴力を振るった。


 唯一の救いは、たまたま通りかかった人が通報してくれた事。


 最悪だったのは、その時のせいで足を怪我して走る事が難しくなった事。


 どうでもよかったのは、警察が捜査した事で、そいつの嘘がバレた事。噂ではどこかの怖い組織で地獄のような責め苦を今も受けているらしい。


「…ありがとうございます、女神様。」


 もうすっかり治らないと思っていた足まで治してもらえるとは思えなかった。


 本当に感謝しかない。


「そろそろ切るわね。今の貴方には魔力もあるから魔法も使おうと思えば使えるわ。詳しくは【状態確認】を見てね。じゃあ、またね!」


 早口で別れの言葉を言う間もなく、電話は切られた。


 ツー、ツー、と聞き慣れた電子音もすぐに出なくなった。


「よし、行こう。」


 気持ちを新たに一歩踏み出す。


 生き抜く術は充分過ぎるほど用意してもらった。


 ここからは俺の意志で進むんだ。


 まずはユーランと言う街へ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公にしっかりと芯があって読んでて応援したくなる
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