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第四十六話 お店探しを始めました

更新が大変空いてしまい、申し訳ありませんでした!

病気とかもなく元気でしたが、色々な事が重なってしまい、かなり長い間お待たせする事になりました…

不定期更新は変わらずですが、前みたいに更新数を戻していく予定ですのでよろしくお願いします!




「見つからないもんだな~。」


 人通りの多い商業区を歩きながら、つい呟いていた。


 商業ギルドの特例ランクアップを受けて、五日。


 俺は持っていた紙の束を片手に悩んでいた。


 この束は、ギルゼさんがピックアップしてくれた新しいお店の候補だ。


 一枚一枚にお店の住所や間取り、それに周囲にどんな店があって、どういう目的の人が来るのか丁寧にまとめてあるので、店を決める条件も分からなかった俺にはありがたいものだった。


 ただ、リストをもらった日から見て回ってはいるけど、実際足を運んでみて「これだ!」と思う物件にはまだ出会っていない。


 俺の考えが固まっていないのも原因だろうし、そもそもお店の経営なんて出来るのかって悩みもだけど…


 それとは別に…


 面倒な問題も起きていた。


 と言うか、九割方それのせいだ。


 今日はその問題とは関わりたくないけど…


「…うわ。」


 声が出てしまった…


 内見する予定だった物件まであと少しだという距離で、その面倒を見つけてしまった。


「…なんでまた。」


 目的の物件の前で、腕を組んで待ち構えている男性がいた。


 念のために言っておくけど、ギルゼさんの紹介してくれた人じゃない。


 人違いだと思いたいけど、【神眼】に見間違いはないし、何よりこの数日で視るのも嫌になったほどの金ぴかアクセサリーの輝きがそれを証明している。


「………」


 …よし、ここは後回しにして、別の物件を視よう。


 そう考え、引き返そうと背を向けた瞬間、


「おお、ハイキ様!」


 俺を呼ぶ大声が聞こえてしまった。


 気づかないふりをして逃げようと思ったけどすでに遅い。


 ジャラジャラと、あちこちに着けている金ぴかアクセサリーが揺れ動く音がもうそこまで迫っていた。


 俺はため息をつきながら振り返り、走ってきた男性…シャマトさんに頭を下げた。


「…こんにちは、シャマトさん。」


 俺の挨拶にシャマトさんも頭を下げつつ、


「どうもお世話になります、ハイキ様!いや~、奇遇ですね~。私はたまたま!本当にたまたま通りかかって!」


 あからさまにウソだと分かる言い方をしながら距離を詰めてきた。


「ははは、それは奇遇ですね…」

 

 自分でも分かるくらい固い笑いをしているのが分かる。


 目的の物件に眼を一瞬向け、すぐに行動に移す事にした。


「申し訳ありません。急いでいるので失礼しますね。」


 そのまま最低限の言葉だけで俺は物件へと向かおうとしたけど、


「ああ!あの物件見に行くんですね!止めた方がいいですよ!ハイキ様には合いません!」


 シャマトさんはそのまま俺の横に着くと、こちらが聞いてもいない事を延々と話し続ける。


「あの物件は天井がかなり低いので圧迫感が出るんですよ。壁も古いので会話が外まで聞こえますし、ハイキ様の商品と周囲の店の雰囲気が…」


 と、とにかくマイナスになる言葉だけをドンドン流し込んでくる。


 耳をふさぎたいけど、どうせ意味はない。


「という訳で私の紹介する物件なら間違いなしかと!」


 そして、最後はそこに行き着く。


「我がアニオス不動産ならBランクのハイキ様にふさわしい高級物件をいくらでもご紹介出来ます!ハイキ様のような方がこんなチンケな店を選ぶなど勿体ない事です!」


 アニオス不動産はユーランで一番大きな不動産会社で主に貴族の顧客が多いそうだ。 


 シャマトさんはかなり上の役職らしいけど、自らこうして俺に会いに来ている…いや、待ち伏せか。


 どこから聞きつけたのか、俺がギルゼさんに紹介してもらった物件を視に行くと必ず現われて、内見しようとした物件の欠点を頼んでもいないのに言い続けて、自分の持つ物件の自慢と言う名の営業をかけてくる。

 

 どれだけ素っ気なく断っても全く悪びれずに着いてくるし、正直な所この人のせいで内見どころか、一人でゆっくり考える時間もなくなってしまっている。


 夜にいつもの場所(農業地の森)でカップラーメンを食べようと出かけると、五分もしないうちに出会うし、昼過ぎに商業ギルドに行く為に小鳥の宿を出たら、小鳥の宿の前にいたし…


 …常に見張られている感じだ。


 かなり怖い。


 一番厄介なのはシャマトさんの動きが読めない事だ。


 どこにいるかは目視でしか見つけられないし、こちらが気づくとすぐに反応して追いかけてくる。


 俺の【危険察知】もスマートフォンの【治安情報】アプリも対応出来ない。


 あくまでも目的は『物件を売りたい(・・・・・・・)』なので『敵意もない(・・・・・)』し、【治安情報】アプリが反応するほどの『悪意もない(・・・・・)』からだ。


 …どうしようか。


 ギルゼさんに相談する事も考えたけど、この人のしつこさは充分過ぎるほど分かった。


 さっきみたいに「偶然会った」と言い張ってこれからも着いてくるに違いない。


 正面から断る事も考えたけど、今度は宿にまで押しかけてきそうだし…


「仕方ないか…」


 俺はそう言って、一度足を止めた。


 もうあと数歩までの物件を視るのは諦めた。


「おや、どうされました?」


 同じように立ち止まったシャマトさんに俺はもう一度頭を下げる。


「すみません。用事を思い出したので失礼します。」


 そのままシャマトさんの返事を待たずに、


「では…!」


 俺は商業区の道を思いっきり走り出した。


「は、ハイキ様あああああ!?」


 後ろからシャマトさんの声が聞こえるけど、俺は無視して通りを駆け抜けていく。


 道は混んでいないと言っても、人はいるし、置物などの障害物はある。


 全力疾走をすれば誰かにぶつかってもおかしくないし、スピードを落とせばシャマトさんに追いつかれるかもしれない。


 でも、それは現代日本の俺だったらだ。


 今の俺には【神眼】と【第一領域】の身体がある。


 最適な道を【神眼】で見極めて、無茶な動きが必要なら【第一領域】を解放して、その道を迷う事なく突っ切る。


 もし、スピードを落としてもこれならそう簡単には追いつかれないはずだ。


 五分も走れば撒く事が出来るだろう。


「…問題は山積みだな。」


 ため息をつきながらも俺の足は止まる事はなかった。

 




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