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第四十二話 前向きに考える事にしました



「ハイキ様、ハイキ様!?」


「は、はい…」


 何度も呼びかける声に俺は我に返った。


 目の前には心配そうに俺を見つめる年配の男性…いや、


「…失礼しました。支部長。」


 ユーランの商業ギルドのトップ、ギルゼ支部長に俺は頭を下げた。


「すみません、どうやら気が動転していたみたいで…」


 俺はスマートフォンの【収納】から水…いや、神聖水を飲みながらもう一度今の状況を思い返していた。

 レミトおばあさんと別れた後、小鳥の宿へ帰った俺は部屋で一息ついていたんだ。

 そしたら、商業ギルドから人が来て、いきなり支部長室へ連れてこられて…


「……」


 『営業停止命令を受けた』んだった。


 神聖水を飲み干すと、頭がすっきりとしていた。

 自覚したって事も大きいんだろうけど、確かに神聖水を飲むと精神面も回復している気がする。


「…営業停止の理由をお聞きしてもよろしいですか?」


 俺はそう切り出した。

 と言っても、原因はなんとなく予想出来ているけど。


 ギルゼ支部長はメガネをあげると、机の上に置かれていた書類を手に持った。


「原因は露店通りの治安悪化を防ぐ為です。すでに周囲の店からも苦情が寄せられています。貴方が毎回冒険者と戦う事で、客が逃げる、商品が蹴り飛ばされる、商談が破談になったなど…一部の間では賭け事も横行しているとの報告もあります。」


「…そうですか。」


 薄々分かってはいた。

 レミトおばあさんのように俺を心配してくれたり、好意的な人もいれば、俺の事を良く思っていない人達もいる事に。


「今や露店通り内でも貴方を追い出したいグループと貴方を残したいグループに分かれています。そこで、商業ギルドの決定は『商業ギルドEランクのハイキ様は露店通りの営業を停止する』と言った物でした。」



「…分かりました。ご迷惑をおかけしました。」


 俺は決定に大人しく従う事にした。


 考えようによっては本腰を入れるチャンスだ。


 露店通りの露店ではどの道キャパオーバー状態だったし、Dランクに昇格して商業区のどこかで店を構えるのもいいかもしれない。

 

 …特例ランクアップは難しくなりそうだけど。


 俺がそんな風に今後の事を色々悩んでいると、


「…何故、何も反論しないのです?」


 支部長が真剣な顔でそう聞いてきた。


「ハイキ様。今回の件、私は貴方様から文句を言われても仕方がないとも思っています。ですが、貴方は落ち込みこそしても恨み言の一つもない…何故です?」


「………」


 正直な話、どうして俺が?って気持ちはあった。


 だって、問題を起こしているのは冒険者達で、俺は仕方なく戦っているだけだった。それなのに、俺だけが罰を受けるのは…ムカついた。


 でも…


「その判断は正しいと俺が思ったからです。」


 商業ギルドの判断は別の見方をすれば『全体の利益より周囲の安全を優先した』って事だ。

『多少の被害が出ても利益を上げろ』だったら、俺は反発していただろうし…ああ、なんて言えばいいのか…


「まあ、少しは怒ってもいますけど…周りを危ない目に遭わせてまで儲けようとは思わないです。」


 結局、それだ。


 俺のせいで誰かに迷惑をかけたくないだけだ。


「じゃあ、お話はこれでよろしいですか。これからの事を考えないといけないので。」


 まずは露店通りに行って、レミトおばあさん達に詫びと挨拶だな。


 で、その後、店を探して…


「ほう、ずいぶんと謙虚な商人もいたもんだ!」


 バンッ!っと扉が開くと、誰かが…って、背!

 二メートルはあるんじゃないかってぐらいの男の人だった。

 髪は白髪も交じっているからそこそこの年齢だろうけど…


 腕も俺よりずっと太いし、服の袖からもあちこち傷が視える。


「はあ、まったく。もう少しお待ちいただいてもよかったのに…」


 支部長が拗ねたように言うと、入ってきた男の人はガハハと笑うと空いていた椅子を持ってきて、支部長の横に座った。


「そう言うなよ。こいつがどんな人間かは充分過ぎるほど分かった。」


 男の人はそこで俺を見ると、


「冒険者ギルドユーラン支部支部長オルゼだ。お前に話がある。」


 呆然とする俺にニカッと笑った。




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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ、どうにもならなかったら、ほかの街に行って、そこでまた、露天から始めればいいんだし、いいんじゃない? この街に固執する意味もないし
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