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第四話 異世界へ行く準備が出来ました



「じゃあ、準備はいい?」


「はい!」


 俺は女神様に元気よく答えた。


 あの後、女神様は俺が書いた二つの【スキル】を両方許可してくれた。


 俺が手に入れた【スキル】は全部で三つ。


 多分、その…チートってものだ。


「あの、本当にありがとうございます。」


 女神様に俺は深々と頭を下げた。

 下げる事しか出来なかった。


「俺、本当に嬉しかったです。いっぱいお話出来たし、色々教えてもらったし…それにその…」


 最後の言葉は声に出せなかったが、女神様は首を振って笑ってくれた。


「私こそ、ありがとうね。貴方はとても謙虚。だからこそ、あの【スキル】が生まれたんだけど…少しだけ心配。」


 女神様は俺が渡した三枚の紙を視て何かを決意したように頷いた。


「…少しだけ【スキル】を修正するわ。大本は変えないけど、細かい修正だけ。いいかしら?」


 断る理由はなかった。

 ここまでしてもらったんだ。

 これで嫌だと言ったら、失礼になる。


「ありがとう。じゃあ、最後に確認よ。今から行く世界は貴方のいた世界とはまるで違う。【スキル】を使う人間も多いし、モンスターと魔法が当たり前の世界よ。」


「…はい。」


 緊張で喉が渇くけど、覚悟は出来ている。


 死んだら終わり…当たり前だけど、一度経験したからこそ分かる。

 

 俺は死にたくない。


 今度こそ、静かに暮らすんだ。


「転移先はユーランって大きな街の近く…見晴らしのいい草原にしておくわ。モンスターもほとんどいないし、その国は差別もない。まずは、ユーランで過ごして常識を学びなさい。」


「はい。」


 そうだ。

 スマートフォンもないし、二十四時間営業のコンビニもない。

 これまでの常識が一切通じない世界だ。

 気をつけないと。


「最後に…これは優しい貴方へ私からのお礼よ。」


 女神様の美しい顔が急に近づき、


「!?」


 唇に柔らかい何かが当たった。


 やわらかいし、暖かくて、それに女神様のまつげがこんな近くで…



「いってらっしゃい。私に会いたくなったら、神殿に行きなさい。待ってるから。」


 女神様のはにかんだ顔が消えかかろうとしていた。


 だから、思うままに叫んだ。


「女神様、ありがとうございます!俺、頑張りますから!」


 その声が聞こえたかどうかは分からないけど、女神様は頷いて手を振ってくれた。



*****



「………」


 彼が完全に転移したと確認し、その場で静かに体育座りをする。


 最後に聞こえたあの子の言葉と直前にした自分の行動を思い出す。


 …思い出す。


 ……思い出す。



 ………思い出し、


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」



 恥ずかしさで床をゴロゴロと転がる、鏡なんて見なくても分かる、顔は真っ赤だし、悶絶は留まらない。



 やってしまった!


 つい、やってしまった!


「だって仕方ないじゃない!あんな最悪な男の次に来たのが、あんなにいい子だなんて!嫌な顔もしないで私の話も聞いてくれるし、気遣いも…それに!」


 綺麗だった。


 見た目でなく、魂の色が。


 直前に来ていた男が欲の塊の濁ったドブの色なら、あの子はどこまで視ても飽きない美しい虹の色だ。

 

 だから、つい世話を焼いてしまった。


 何でも出来るお姉さんに思われたくて、つい、つい、つい、やり過ぎてしまった。


 実際、彼が考えた【スキル】は三つだけだが、それとは別に転移をする際に特別な事をした。


「ま、いいでしょ。私、一番偉いし。それに…これぐらいしないと…」


 と、唐突に頭を切り換える。


 彼の直前に来ていた最悪な男…あの男と彼は同じ世界にいる。


 あの男が生き残る確率は低いだろうけど、もし、生き残り欲望のままに暴れ出したら…


「…あの子しかいないか。」


 【スキル】の詳細が書かれた三枚の紙の文字を指でなぞり、修正と加筆を行う。


 これでよし。


 あとは彼の無事を祈ろう。


 でも…


「うう、早く会いたいな~。でも、神殿は遠いし……」



 少しだけ、落ち込ませてください。


 仕事は明日からやりますから。


 ………


 …よく考えたら、説明が不十分だったわよね。


 そうね、女神ですからちゃんと説明が必要よね?


 送り出して何も説明しないで終わりだと、それこそダ女神よね!?


 なら!


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