第三十話 千里の道も一歩からでした
久しぶりの更新です!
遅くなってすみませんでした!!
これからもお願いします!
魔石バスタブを手に入れた事で、お湯の問題は解決した。
当然それで終わりじゃない。
必要な物は揃ったと思っても肝心な物の用意が出来ていなかったり、当たり前にしていた事に必要な道具を見落としていたり、そもそも忘れている物もたくさんあるかもしれない。
魔石バスタブを持ち帰ったその日、小鳥の宿の部屋で俺は紙とボールペンを使って、メモを書いていた。
現代日本でお風呂に入る時に何を使っていたか、何をしていたのか…たまにでもいい。とにかくやっていた事に必要な物を思い出しながら、俺はペンを走らせた。
すでに持っているとか、手に入るとかは関係なく、とにかく使っていた物を書くとこんな感じだ。
・洗面器
・椅子
・石けん
・シャンプー
・トリートメント
・洗顔剤
・入浴剤
・化粧水
・乳液
・くし
・タオル(洗い用)
・バスタオル
・ドライヤー
…思った以上にあった。
洗面器と椅子なんて紙に書くまで思いつきもしなかった。
入浴剤はたまに使っていた程度だから、絶対に必要ってわけじゃない。
それにドライヤーなんて最初から無理と分かっている。
それよりも洗顔剤が欲しい!
昔からニキビが出来やすい体質だから、洗顔剤は色々試したし、化粧水や乳液は肌の為に十八歳からずっと使っていた。
今は顔を洗う時に石けん(割れ)を使っているけど、洗顔剤で洗った後のスカッとした気分をもう一度感じたいし、出来れば愛用していたメーカーの物が欲しい…!
運が良いのか、異世界に来てからまだニキビは出来ていないけど、時間の問題だ。
どうか見つかりますように!
そう願いながら【廃棄工場】を使って探してみると、確保出来たのは
・洗面器(割れ)
・椅子(割れ)
・石けん(割れ)
・ボトルシャンプー(規定量未満)
・ボトルトリートメント(規定量未満)
・くし(折れ)
・洗い用タオル(破れ)
・バスタオル(破れ)
思った以上の成果だった。
シャンプーとトリートメントに表示された【規定量未満】はどうやらメーカーの設定重量よりも少ないと言う事らしい。
【神眼】で視たけど量で言えば、標準より十回分くらい少ないぐらいだ。
数はどれも結構な量があったから、洗面器と椅子、くしは数を揃えて【破壊と再生】で壊れる前の状態に直せた。
洗顔剤や化粧水、乳液は見つからなかったけど、とりあえず良しとしておこう。
本当に【廃棄工場】を造ってもらって良かった…
レベル2になって『生活用品』が解放されたおかげで現代日本での生活が大分近づいてきた。
これでお風呂に入る道具の準備は出来た。
…残る問題は一つ。
そして、最大の問題だ。
「…やっぱり、難しいよな。」
たった一つの難問。
それは場所探しだ。
お風呂に入っても大丈夫な場所を見つけるのに俺は手間取っていた。
農業地の奥にある森でお風呂に入ろうかと考えたけど、食事をした場所は入り口から遠いとは言え、誰が来るか分からない。作業をしに来た人達や森の様子を見に来たあのおじさんにのんきにお風呂に入っている所を視られるのは中々キツい…
それにお風呂を使うと言う事は、石けんやシャンプーが混じったお湯などを周囲に巻き散らす事になる。
食事をした時に出るゴミなら【廃棄工場】で処分出来るけど、身体や頭を洗った時に出る泡を全て【廃棄工場】で回収して処理するのは難しい。
さすがに垂れ流しのままじゃ周囲にも多少の影響は出るかもしれない。
環境保護とかそこまで大層な事を言うつもりはないけど、あの場所は木を伐採した跡もあったし、あの周辺の木も農業地の収入源なら問題になりそうな事はしたくない。
最悪出禁になる可能性もある。
そうなったら、現代食も食べられない…!
なにより…俺のせいで迷惑をかけたくない。
あの優しい農家のおじさんや他の人に迷惑かけてまで自分のやりたい事をしようと思うほど、図々しくはなれない。
そんな訳で俺は場所探しでお預けを食らいっぱなしだった。
…お風呂への道はまだ遠い。