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第二十六話 相談に行きました

今更ですが、ブックマーク数100突破に加え、高評価もいただきありがとうございます!!

更新は週一回するかしないかになっていますが、一話一話楽しんでいただけるように書かせていただいています!これからもお願いします!



 異世界に来てから、かけ離れていた入浴…


 その願いが叶う目前まで来た!


 簡易バスタブに現代日本の石けんという武器を手に入れた以上、迷う必要はない。


 服を脱ぎ捨て、いざ、風呂へ!



 …と、そう簡単にはいかなかった。


 無理です、無理。


 カレーを食べた後、俺は片付けをして小鳥の宿に戻っていた。


 大通りのケンカはさすがに夜も遅い時間だったので終わっていて、変なトラブルにもモルス達にも出会う事なく無事に帰り着く事が出来た。


 …どうしてお風呂に入らなかったか?


 バスタブが組み立てられなかったとかじゃない。


 説明書は英語だったけど絵も描かれていて組み立てる事はそんなに難しくはなかった。



 でも、肝心の…


 お湯がない!


 それが帰った理由だ。


 簡易バスタブはあくまでもビニール製のバスタブ。


 お湯を溜めるだけしか出来ないし、お湯を沸かす事も不可能。


 使うお湯は別に用意しないといけない。


 コンロ魔具があるからお湯は沸かせるけど問題は量だ。


 レトルトカレーを温めるのとは訳が違う。


 鍋いっぱいにお湯を沸かしても、簡易バスタブに入る量はとても少ないし、次のお湯が沸く頃には簡易バスタブに入れたお湯は冷めてしまっている。それに沸騰するほどのお湯をビニールのバスタブに流し込めばビニールが溶けてしまうだろうし…


 お湯が沸く度に【収納】に回収して、簡易バスタブが満タンになる量を溜める方法も考えたけど、どれだけ時間がかかるか分からない。お風呂なんて考えもしなかったから水の準備も出来ていないし、女神様からもらった水に余裕があると言っても限度はある。


 あと、動物もいる野外で何の準備もしないで、無防備になるのは抵抗があった。


 そんな感じで色々無理難題が多かったので、風呂はまだ先の話になった。


 ただ、本当に運は良かった。


 カレーなんて匂いの強い食べ物を食べた後の事を何も考えていなかったので、【廃棄工場】の生活用品の中に歯ブラシ(外装不良)と歯磨き粉(規定量未満)があった時は助かった。


 念入りに歯磨きして帰ったからかフーさん達にも特に何も聞かれなかった。



 そして、次の日。


 俺はある店の前に来ていた。



 農業地と小鳥の宿の中間地点、俺が裏路地へ行く理由になったケンカ騒ぎが毎日行われている大通り。



 その一番奥にある小さな店。

 隣に並んでいる店が三件続けて空き家なせいもあってか、寂れた風にも見えるこの店に用があった。


「…よし。」


 息を整えて俺は店の扉に手をかけた。


「お邪魔します。」


 俺がそう言いながら店の扉を開くと、


「いらっしゃいませ…あら、ハイキさん?」


 背の高い女の人が眼をパチクリさせていた。


「こんにちは。」


 挨拶をして、改めて俺はその人を視た。


 俺よりも身長が高くて、どこか上品そうな雰囲気を出しているけど、近寄りにくい感じは全くしない。


「ええ、こんにちわ。」


 微笑んで挨拶を返すだけでも絵になるくらい、とても綺麗な美人さんだ。


 それにその…出るところはとんでもないくらい出てるけど、折れそうなくらい線の細いスタイル。


 歳は俺より少し上な事もあってか、出来るお姉さんって言葉がピッタリだ。


 だけど、この人はただのお姉さんじゃない。


 頭にかけているメガネがそう言っている。


 頭の上に乗っているメガネは普通のメガネじゃない。


 現代日本のファッションでつけているようなおしゃれアイテムとも違う、ゴツくて大きなメガネだ。


 視力検査でかけさせられるようなメガネよりも一回り以上大きくて、色々なダイヤルが着いているそのメガネを、お姉さんは何の違和感もないように身につけている。


「ひょっとして、昨日の携帯コンロ型魔道具六号に何か不備が?でしたら、すぐに修理しますが?」


 そう言って腕まくりをするお姉さんを俺は慌てて止めた。


「いえ、違います!今日は別件で来たんですよ、サイラさん。」


 お姉さん…サイラさんはこのお店の店主兼開発者だ。


 このお店…サイラ魔道具店は魔道具を専門に造っているお店で今も営業中なんだけど…


「あらそうなんですか?二日もお客さんが来るなんて初めてです。これはお祝いですね~。」


 と、サイラさんが言うように客足はほとんど来ない。


 『高火力の火を起こせる魔道具』の事で、フーさんに紹介してもらっていなかったら、俺もここには来なかっただろう。

 

 サイラさんは魔道具の天才で、他の魔道具の店や業界からも一目置かれているそうだ。


 そんなサイラさんとフーさんは小さい時からの友人で、フーさん曰く『見た目は完璧(・・・・・・)』な人。


「おっとりしてるように見えて、頭の中は魔道具の事ばかりで生活も食事も滅茶苦茶。それなのに『胸がまた大きくなって…』とか『肌のケア?いいえ、特には…』とか…それを天然でやるから…理不尽すぎる…!」


 …後半、聞いちゃいけない事を聞いた気がするけど、とりあえずそういう人らしい。


「では、何用でこちらに来られたのですか?」


 首をかしげるその仕草に少しグッときたけど、俺はすぐに指で自分の太ももをつねった。


 落ち着け、落ち着け…!


 こんな二人きりの場所でセクハラとか言われたら、逃げ場もないし、弁解の余地もない…


 何かするつもりは当然ないけど、何を思われるかは分からない。


 いくら異世界でもそこはしっかりしないと!


 うん、距離感は大事!


 なによりもまずは先に言う事がある。


「昨日の魔道具は本当に助かりました。ありがとうございます。」


 あのコンロ型魔道具はとても役に立った。


 火力も安定していて少しの風でも問題なく使えた。


 安い買い物じゃなかったと思っていたけど、今後を考えれば全然大した事のない出費だった。


「いえいえ、お役に立てて何よりです。」


 サイラさんはそう言ってくれてるけど、それだけじゃない。


 偶然だけど…レベルアップした【廃棄工場】で重要な事も分かった。


【廃棄工場】と【破壊と再生(スクラップ&ビルド)】…この二つの決定的な弱点も。


 それをカバーする為にもサイラさんの力は必要になる。


 …でも、この話はまた今度にしよう。


 結局、今の【廃棄工場】には大量のお湯を沸かせそうな物はなかった。


 …お風呂はサイラさんに頼るしかないんだ。


 俺は意を決して、口を開いた。


「実は…」


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― 新着の感想 ―
[一言] 夏なら、川で行水することも………………(゜_゜ )
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