第二十五話 【廃棄工場】レベル2になりました
【廃棄工場】は不要な物に【廃棄実行】をする事でレベルが上がって、使える物の種類が増えていく。
その事は知っていた。
だけど、【廃棄実行】を使ったのはこれが初めてなのになんでレベルが上がったんだ?
レベルアップってそんなに簡単なのかな。
「念の為…」
そう言いながら、試しに【処分品】じゃない場所に入れていたボールペン(壊れ)を一本、【処分品】に移動させて【廃棄処分】をしてみた。
………
………………
………………………………
何も起こらない。
何か条件があるのかな?
たくさん【廃棄処分】するとか?
…………………………あ。
「…そうか。」
思い返せば【処分品】の項目には(腐り)の食べ物だけでもかなり量があった。それに、なんだかんだで菓子パンのビニール袋や普段の生活で出たゴミもそれなりに溜め込んでいた。
【回収】の練習って理由で街中に落ちているゴミも集めていたし…
…自動処分は初めから切っていたから、一回でもレベルアップ出来る量のゴミはあったって事か。
…どれだけ溜め込んでいたんだろう。
気をつけないと【廃棄工場】がゴミ屋敷になるかも。
まあ、それはさておき…
「それでは。」
レベルアップしたなら、何が使えるか確認してみよう。
『生活用品』と『調理器具』…どちらも興味がある。
最初は『生活用品』を視る。
やっぱり、風呂とかも気になるし…
さすがにバスタブは置いてないだろうけど。
もしかしたら…ね?
そう祈りながら『生活用品』の項目を視てみると、
「お!」
ズラッと並ぶ品目の中にすぐ眼に着いた物があった。
バスタブじゃないけど、これも欲しかった物だ!
すぐに【廃棄工場】を取り出してみると、見慣れた…牛の絵が描かれた小さな青い小箱が大量に出てきた。
えっと、だいたい五十個くらい?
いくつか潰れている物もあるけど…
比較的綺麗そうな小箱を開けると、この世界では匂わなかった独特の香りが中のビニール袋越しにも伝わってきた。
お米とは違うけど、これも懐かしい匂いだ。
袋を開けて、真っ白なその中身を【神眼】で調べる。
石けん(割れ)…有名メーカーの石けん。お手頃価格で品質も高い。配送中に段ボールが落下をし、かなりの数の中身に割れが発見された為、廃棄された。効能に変わりはないが、崩れやすい。
確かに俺の持っている白い石けんには大きな割れ目が入っている。
使えばすぐに四つぐらいに分かれそうだし、現代日本じゃ売り物にはならないだろう。
…でも、この異世界でそれは関係ない。
街を視たり、商業ギルドで調べたりして分かったけど、石けんの需要は意外と多い。
宿や料理を出す場所だけじゃなくて、一般的な人にも石けんは馴染みがあるらしい。
…なら、どうして風呂は貴族だけなんだよ!?
…と最初は思ったけど、それには別の理由があったので、今は納得しています。
話を戻すけど、石けんは街の商店でも売られているし、手の届く値段で売り買いされている。
ただ、色や匂いは俺の知る石けんとは違っていた。
それにこの世界の石けんには大きく三つの種類があった。
・庶民向け
・業者向け
・貴族向け
この三つだ。
庶民向けは一般的な家庭で使われている安い物だ。
値段は銅貨七枚前後で、大きさはまちまち。
試しに買った物はペットボトルのキャップと同じ大きさだった。
大きい物は値段も少し上がるけど、それでも【廃棄工場】から出した石けんの半分もないみたいだ。
色は真っ白とはとても言えない茶色で、匂いもあまりよくなかったし、泡立ちも悪くて、逆に汚れているんじゃないかとも思った。
【神眼】で視る限り、殺菌効果はあるようだけど。
業者向けは宿屋や料理を出す店、それに裕福な家庭で使われている石けんだ。
こちらは銀貨八枚。
大きさは俺の持っている石けんと同じぐらいで、色はやっぱり茶色だ。
泡立ちと匂いは庶民向けよりも良いけど、現代日本と比べると差は明らかだし、値段も高い。
ただ、これでも適正価格らしい。
貴族向けの石けんは名前の通り、貴族だけに造られている。
これはどうやっても手に入らなかった。
石けんを売ってくれた人の話だと、匂いも泡立ちも全然違う高級な物なので貴族御用達のお店でしか取り扱いもないそうだ。
それにそういう店は普通の人は立ち寄れないし、無理に入ろうとすれば逮捕されるとか…
業者向けを買った時に大体の値段は教えてくれたけど、一番安い物でも小金貨五枚はいるって…
そんな石けんの事を思い出しながら、俺はそのまま品目をチェックしていく。
生活用品の中には欲しかった物が結構多く、どんどん取り出していく。
もちろん、ちゃんと安全に使えそうな物を。
「これなら…もしかして…」
確認を始めて五分が経った頃だった。
「ああっ!!」
とうとう見つけてしまった。
早速待ち望んでいたそれを【廃棄工場】から取り出す。
出てきたのは、英語で何かが書かれている大きな箱。
ただ、外箱は滅茶苦茶に潰れていて、文字もところどころ破けている。
ボロボロの箱を開けて、中身に【神眼】を使う。
簡易バスタブ(外装不良)…組み立て式のビニール製の簡易浴槽。保温性もあり、大人一人がゆっくり浸かれる。形はドラム管に近いが、ビニール製なので直火は危険。海外製品で日本での輸送中に外装が壊れた為、日本で廃棄処分となった。
「よっしゃあああああああ!」
心からの叫びで森の生き物が驚いて動き出す音が聞こえたが、どうでもよかった。
ついに念願の風呂を手に入れた!