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第二十一話 ギルドカードを作りました


「はい、ではこちらが当ギルドのギルドカードとなります。」


 受付の綺麗なお姉さんは笑顔で俺に一枚の白いカードを渡してくれた。


「これが…ギルドカードですか。」


 ギルドカードにはいくつかの項目が書かれていた。

 


 名前…ハイキ

 年齢…十八歳

 種族…人間

 ランク…E



 そして、大きく書かれていたのは所属ギルドの名前。


「おお…!」


【商業ギルド】の文字も。


 この世界で初めて手に入れた証明書だ。


 試験が簡単だったとは言え、やっぱり自力で手に入れた物は感動する!

 


「あの…ハイキ様?」


 お姉さんの声にすぐに俺は我に返った。


「あ、す、すみません…!」


 すぐに頭を下げると、お姉さんは少し笑いながら説明を続けてくれた。


「ご説明は先ほどお話した通りになります。ハイキ様の登録は露店を主としたEランクにて登録しております。住民や通行の邪魔にならない場所での商売は許可されていますが、くれぐれもお気をつけください。ハイキ様が今後、店舗の拡大、支店などをお持ちになる際は当ギルドにて改めてランク変更などの手続きが必要となります。」


「…はい。」


 正直、そんな機会ないと思うけど…


 俺、露店で一人のんびりしているだけでいいし。


 大きな店を構えるなんて想像も出来ないよ。


 うん…無理無理。


「最後に…以前、Eランクでの登録後に一本道の真ん中で店を構えて、通行人に無理矢理物を買わせようとした方もいました。このような悪質な行いをした場合、ギルドカード剥奪処分を受ける事もありますのでご注意ください。」


 何それ…


 そんな迷惑行為する店なんて誰も行かないでしょ。


 現代日本なら大炎上だよ。


「…どこの世界にもいるんですね。」


「はい?」


「いいえ!なんでもありません!失礼しました!」


 俺はまた頭を下げて、そそくさと建物を出た。


「ふ~~~~。」


 外に出てようやく息をつく。


 ああ、緊張した!


 ここまで来る展開が色々ありすぎて大変だったけど、受付のお姉さんが優しい人で本当によかった!


 気になる事全部を教えてもらったおかげで、安心して商業ギルドに登録出来たし。


「…でもなあ。」


 振り返って、改めて自分がいた建物…


 商業ギルドを見る。


 五階建てのレンガ造りの建物。


 金ぴかの派手な飾りはないけど、どこかのお屋敷と間違えるんじゃないかってぐらい大きな建物全てが、商業ギルドの施設らしい。


 受付のお姉さんが言うには、ユーランの街の予算もここで話し合っているとか。


 まあ、縁のない話だ。 


 なにはともあれ…


「とりあえず、目的は達成かな。」


 ギルドカードは手に入れたし、さっさと帰ろう。


 俺は、小鳥の宿に戻る事にした。


 昨日の一件の後だから、襲撃されるんじゃないかと心配したけど、今のところは何もない。


 それに…今は(・・)ギルドカード(・・・・・・)があるから(・・・・・)、昨日よりは安全…らしい。


「…まさか、こんなに早く取る事になるとは。」


 ギルドカードを見ながら、俺は今朝の事を思い出していた。



*******



「ハイキ。アンタどこのギルドに所属しているんだい?」


 朝食の時に女将さんが料理を食べている俺にそう尋ねてきた。


「ギルド…ですか?」


 暖かい大粒のコーンスープとスープに浸され、ほどよい食感になった黒パンを口に詰め込んで、俺は手を止めた。


「そうだよ。アンタ、冒険者って柄じゃないだろうし…商業ギルドかい?それとも他のギルド?」


 ああ、異世界物語によくある『ギルド』か。


 確か冒険者ギルドだったら、依頼を受けたりして、お金を稼いだり、ランクを上げたり、モンスターの素材で武器や防具を造るんだっけ。


「ええと…」


 当然だけど、異世界生活三日目の俺はどのギルドにも所属していない。

 と言うか、ギルドの存在自体言われるまで忘れていた。

 いや、仕方ないでしょ。


 だって、二日で色々ありすぎたし!


「俺はどこにも入っていませんよ。」


 入る予定もない。


「入っていない!?どこにもかい!?」


 女将さんの驚いた顔を見て、俺は頷いた。


「俺のいた村、その…ギルドがなかったんで。」


 嘘をつくのは心が痛いけど、『異世界から来ました、テヘ!』なんて言った暁には今後の信頼関係は二度と直せないほど崩れるだろう。


 快適な小鳥の宿から、病院へかつぎ込まれるかもしれない…


「でも、門番の人に聞きましたよ。お金稼ぐなら露店ぐらいなら、役場で申請すればいいって。」


 これは本当の話だ。


 ユーランに入る時に門番の人に「商売をしたい」と言ったら、「役場で申請すれば問題ない」とはっきりと言っていた。


 この世界で生きていく為に仕事をするなら、俺は冒険者よりも商売人の方が向いていると思っている。


 コミュ障の俺に出来るかは不安だけど、いつまでも女神様のお金に頼る訳にもいかない。


 【廃棄工場】さえあれば売る物はいくらでも用意出来るし、ボールペンのようなものでもお金になるのは昨日分かった。


 まずはしばらく市場を見て、売れそうな物を考える。


【廃棄工場】からそれに近い物を集め、必要なら【破壊と再生(スクラップ&ビルド)】で修理する。


 元手はタダだから、そこそこの値段で売っても充分儲けにはなる。


 それなりに稼いで静かに暮らすんだ。


 ギルドとか大きな組織に関わると、とんでもない無茶難題を押しつけられそうだし…


 その点、役場に申請するだけの露店なら気を遣わなくてもいい。


 俺が店長で従業員だから、売り上げが悪くても怒られる事はないし、イチャモンつけられたら休みにすればいい。


 食べるだけなら、【廃棄工場】から食べられそうな物を出せばいいし。


「…なるほどね。よし、ハイキ。」


 女将さんは俺の肩をガシッと強く掴むと、


「アンタ、今すぐギルドに入りな。」


 怖い顔で俺にそう言った。



 ええと、どういうこと?


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― 新着の感想 ―
[一言] 鉛筆とかの方が安全なんだけど、なんでボールペンなんだろう………………(゜_゜ ) 社会人だからかな?鉛筆、使わなくなるもんね、下書きしない人なら
[一言] 身元不明の浮浪者でいるか身元証明できる人でいるかの違いよね
2021/04/14 14:51 退会済み
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