第十八話 とにかく逃げてみました
一週間ぶりの更新です!
遅れて申し訳ありませんでした!
私用で忙しくなっていますが、出来るだけ更新は以前と同じようにするつもりです!
これからもお願いします!
『脅威レベルはハイキ様に敵意及び悪意を持った者の危険度を数字化したものです。評価は五段階で、数字が増えるほど危険度が高くなります。』
「ご親切にどうも!」
無機質な電子音声で説明するスマートフォンにそう返し、俺は裏路地を駆け抜けていた。
後ろは視ていないけど、誰かが追っている事は分かる。
隠すつもりがなくなったのか、気配も走る音も丸わかりだ。
何かにぶつかったような音と怒る声も聞こえてくる。
裏路地は意外と物で溢れている。
酒瓶や寝ている人、ゴミに木箱…
暗いから目の前までこないと何も見えない。
【神眼】を発動させたままじゃなければ俺も何かにぶつかっていた。
たまに歩いている人にぶつかりそうになるけど、何とか避けて、追跡する人達から距離を取る。
このまま逃げ切る…!
「………」
戦おうという気持ちがなかった訳じゃない。
女神様から【スキル】をもらって、身体も十八歳…怪我をする前に戻っているからこうして走れるようになっているし、体力もある…
でも、戦いたいとは思わない。
ケンカをまともにした事もない。
相手を傷つける覚悟もない。
【スキル】を使えば、殺してしまうかもしれない。
それにもめ事を起こせば、今後の生活に関わるかもしれない。
だから逃げる。
俺は平穏で静かな生活が欲しいだけ。
その為には、面倒事には関わらないようにする!
「ごほっ。」
いつの間にか息が上がってきた。
多分、時間では五分も経っていないはずだ。
十八歳は一番体力があった歳なのに…
「うわ!」
何もない場所で足がもつれて転びそうになるけど、何とか体勢を立て直す。
危なかった。
足がもつれるなんて、十八歳じゃ有り得なかった…
「…!」
そうか。
分かった。
どうして、体力が一番ある頃なのにこんなに疲れているのか。
二十歳になって怪我をしてからは激しい運動を一切してこなかった。
いや、もっとだ。
高校を卒業してからまともな運動なんてしなかった。
食べても太りにくかったから運動をする理由もなかったし、元々の性格もあって運動を自分からしようとは考えもしなかった。
いくら体力があって『走る事』がまた出来るようになっても、『効率的な走り方』なんて身体は忘れている。ただがむしゃらに足を動かしている今の走り方は、授業で運動をさせられていた十八歳の時よりもずっと体力を消費して、スピードも落ちているんだろう。
それがこの疲れの原因だ。
…走り方も直さないとダメだな。
身体のフォームを意識すると、ちょっとは楽になった。
気持ちの問題だろうけど…
それに、暗い道に少し灯りが差してきた、
あと少し。
頭にたたき込んだ地図だと、次の角を曲がって、まっすぐ走れば小鳥の宿の近くの大通りへ出る道だ。
人の多い大通りへ出ればさすがに襲いかかってはこないはず。
あと十メートルもない!
この角を曲がれーーー
「っ!」
俺はすぐに足を止め、角の手前で止まった。
「……」
そのまま前を見たまま、視線を外さないようにゆっくりと後ろへ下がる。
すると、
「おや~!勘だけは鋭いね~!」
ぬるっと、角からスキンヘッドの男が現れた。
俺よりも大きく、服越しでも身体も筋肉が浮き出ている。
明らかにただのチンピラとかじゃない。
「こっから先は通行止めで~す。通行料だしてくださ~い。」
軽い口調とは裏腹に獲物を視るような冷たい眼。
何より、姿を視るより先に、曲がり角から見えた不気味な気配。
「これが…」
これが【神眼】で視える悪意。
スキンヘッドの男からは今もそれがはっきりと見える。
すると後ろからドタバタと足音が聞こえ、振り返ると柄の悪そうな男二人がニヤニヤと笑っていた。
「は~い、これで逃げ場なし。じゃあ、有り金もらおうか。出さないなら…」
スキンヘッドは服のポケットから長いナイフを出すと、
「殺すから。」
そう低い声で俺に刃を向けた。