第十五話 【破壊と再生】(スクラップ&ビルド)は凄い【スキル】でした
俺が女神様にお願いした【スキル】の名前は【リサイクル】だった。
【スキル一覧】みたいに表示するなら、こんな感じ。
【リサイクル】…壊れた物や不良品から新しい物を再生する。生物には適応されないが、生命反応がない物には使用可能。
【リサイクル】と【廃棄工場】を一緒に使えば、異世界でも現代日本の物を持ち込めるんじゃないかと思って考えた結果だった。
で、女神様が『少しだけ修正』した【リサイクル】が現在こちらになっています。
【破壊と再生】…戦闘利用可能スキル。指定した範囲の物を問答無用で破壊する。生物などにも関係なく使用出来る。また破壊した物はその物質を利用した別の物へと再生が可能。ただし、死亡した生物は除く。
…面影がほとんどなくなっていた。
と言う訳で、俺はユーランの中でも今、一番人気のない農業地の森に来て、色々と実験をしていた。
「ふ~。」
かれこれ三時間。
Tシャツから絹糸造りに成功した後、昼ご飯に【廃棄工場】から焼きそばパン(潰れ)、【収納】から飲みかけだった水…まだ【収納】に百本とかなりの本数があった…でお腹を満たして、【破壊と再生】を試した結果、色んな事が分かった。
自分の性格が凝り性なのもあって、結構細かくなったけど、大体こんな感じだ。
一つ、【破壊と再生】で物を再生させるにはあらかじめ再生する物のイメージが必要。
さっき、服を糸に分解したように再生する物をしっかり考えていると、その通りの物が出来上がるけど、何も考えなかったら粉々になるだけだった。
この『粉々』ってのは例えじゃなくて、本当にそうなるという事。
服や紙など薄くてプレスされても影響なさそうな物はどうなるかと思ったけど、どういう原理かどんな物も粉々…塵になっていました。
…怖い。
二つ、元から壊れている物を再生する事は可能だが、欠損などがある場合は不可能。
【破壊と再生】は一度破壊した物を別の物へ再生出来る。
『壊れた物』を『直った物』にも出来る。
制限はあるけど。
具体的には、部品がうまく噛み合っていないとか中身の電子部品がショートしているとかは再生出来るけど、部品が元からない物は再生出来ない。
中の回路がちゃんとつながっていないせいで液晶に時間表示がされないキャラ物のソーラーデジタル時計は【破壊と再生】を使った後は、(壊れ)が消えて、時計としての機能を取り戻していた。
ただ、引っかけパーツが折れたボールペン(壊れ)は何回やっても、引っかけパーツは直らず、(壊れ)のままだった。
『無から有は生み出せない』…だったっけ?
【破壊と再生】を使って直そうとしても、最初からないものはどうにもできないみたいだ。
ただし、次に分かった事もあった。
三つ、欠損して壊れている物を再生するには壊れた部分を補う素材が必要な事。
引っかけパーツが折れたボールペン(壊れ)を二本、切り株の上に置いて、直ったイメージをしっかりして【破壊と再生】を使ってみると、引っかけパーツが修復された一本のボールペンが出来上がった。もちろん、(壊れ)はない。
ただ、完全に直すには同じ素材が必要なようで、近くに落ちていた木の枝とボールペン(壊れ)に【破壊と再生】を使っても、引っかけパーツは木製になっていた。
ボールペン(壊れ)が直ったのは一本分を引っかけパーツの素材にしたからで、さすがに素材が違うものじゃ完全には直らないみたいだ。
四つ、一度に直せるものは種類に限らず、一つだけ。
ボールペン(壊れ)二本で、修理されたボールペンが一本出来る。
なので、ボールペン(壊れ)を切り株に十本並べて【破壊と再生】を使えば、五本直ると思ったけど、切り株の上に残ったのは修理された一本だけだった。
ボールペン(壊れ)九本は修理の素材になったようで、九本分のボールペンで直されたボールペンを【神眼】で視ても、ただのボールペンのままだった。
素材をどれだけ使っても、直る物の数は増えないし、それ以上にはならないようだ。
そして、最後の五つ目。
【破壊と再生】は無音で使用出来る。
これは色々やっている中で偶然見つけた。
一瞬とは言え、あまりにも音がうるさいので
「無音で出来たらな~」
と思って使ってみたら、無音になりました。
出てくるプレス機は相変わらず見えたけど。
結局、【破壊と再生】は俺のイメージが強く関係している事が分かった。
【リサイクル】のイメージがあったからか、【破壊】のイメージがプレス機で押しつぶされるイメージだったし…
「まだまだやってみるか。」
そんなこんなで俺は日が傾き始めるまで、実験を続ける事にした。
疲れたけど、おかげで無音発動は完全にマスターしたし、範囲調節も感覚が掴めたし、充分な出来じゃないかな。