表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/112

第十二話 思わぬ問題に直面しました


「はあ…」


 部屋に戻った俺はうなだれていた。


 ほんの数分前まで異世界料理を堪能していたのに…


 きっかけはフーさんに聞いた一言だった。


「お風呂はどこにありますか?」


 風呂に入る。


 それは習慣であり、当たり前だった。



 …現代日本なら。



「お風呂?ハイキさん、お風呂はお金持ちの家にしかないよ。」


 苦笑いしたフーさんから渡されたのはお湯の入った洗面器とタオルだった。


「…なんですかこれ。」


 俺の質問に対しての答えは


「え、身体を拭くんだよ。当たり前でしょ?」


 無慈悲な一言だった。



 どうやらこの世界ではお湯もしくは水で湿らせたタオルで身体を拭く事が当たり前で、風呂は貴族など一部の人間しか持っていないそうだ。

 当然、シャンプー、リンスなどはない…


「…まあ、これでもマシだよな。」


 部屋で身体を拭きながらそう口に出す。


 お湯をもらえるだけでもありがたい事だ。


 真水を頭から被る事になってたら風邪を引いてしまってもおかしくない。



 こういう時、現代日本と異世界の差を実感する。


 女神様も言っていたな。


『ユーランで過ごして常識を学びなさい』って。


 確かに現代日本で過ごした俺の常識はこの世界では通じない事も多い。



 明日は色々と調べてみよう。


「ふう…」


 身体拭きが終わり、一息つく。


 思い返せばこの一日は怒濤の連続だった。


 女神様との出会い、異世界転移、【スキル】の発動、異世界料理に、常識の違い…

 


 このままゆっくりと眠りたいところだが、その前にやる事がある。


 ベッドに腰掛け、俺は


「やるか。」


 そうつぶやいて、【廃棄工場】を起動した。




 やる事は女神様の言っていたフィルター設定と廃棄予定品の確認だ。


 この【廃棄工場】が現在扱っている物は

・食料品

・衣類

・雑貨



 この三種類。


 まずはこれにフィルター機能を使う事でより使いやすく調整する。


 例えば、どうやっても食べられない物は自動で【廃棄処分】にしたりとか。


 あと、この【廃棄工場】がどこまで物を取り扱っているかの確認だ。


 食料品と衣類はいいけど、雑貨だとかなり幅が広い。


 それらの確認だ。


 これ次第で今後何が出来るか変わってくる。


「さあ、どうなるかな。」




 そんなこんなでベッドに座って三十分後。







「で、出来た…」


 俺はくたくたになってベッドに倒れ込んだ。


【廃棄工場】のフィルター設定は思っていた以上にかなり細かく設定出来たのもあって、妙に凝ってしまった。

 

 それだけに成果もあったけど。


 まず、食料品にはいくつかの設定を作った。


 【食用可】か【食用不可】だ。


 これまでは食料品を選び、そこから食料の種類を選んでいたが、それは食べられない物も同時に並んでいた。


 だから【食用可】か【食用不可】で完全にその部分を区別する。

 基準としては(腐)、(汚)、(臭)、などが付いた物は全て【食用不可】だ。


 それ以外は【食用可】にする。


 今後、新しい表示が出れば、その都度判断し、フィルターで振り分けていく。


 【廃棄工場】から取り出した時にも【神眼】を使って、二重チェックをすれば問題はないはずだ。



 次に、衣類も同じようにした。


 こちらは【使用可】か【使用不可】だ。


 衣類は(汚れ)と(臭い)もあったが、(破れ)や(刺繍ミス)、(デザインミス)などもあった。


 (汚)と(臭)は【使用不可】にした。


 最後に雑貨だけど…これは特にフィルター設定をいじらなかった。


 と言うよりも出来なかった。


 雑貨にも(汚)や(臭)はあったけど、ほとんどが(壊れ)だった。


 その(壊れ)もひとくくりに出来なかった。



 試しに(壊れ)が付いていたボールペンとA4コピー用紙束を出してみると、ボールペンは服などに引っかけるパーツが折れていただけだった。コピー用紙も角が潰れていただけで、それ以外は問題がなかった。


 ペン自体は文字が書けたし、角が潰れた紙もしっかり文字が写った。


 どちらも(壊れ)が付いていたのに。


 と言う訳で雑貨はしばらく放置する事にした。


 そして、【廃棄工場】の【廃棄処分】はしばらくしない事にした。


 決まった時間に行う自動設定も出来たけど、まだ先にした。


 ペンとコピー用紙のように役に立つ物があるかもしれないし、俺はこの世界をまだ何も知らない。

 

 俺にとってのゴミがこの世界には価値ある物になる可能性は充分にある。


 作業はここまでにして、今日はもう休むとしよう。


「…女神様、本当にありがとうございます。おやすみなさい。」


 多分、聞こえてはいないだろうけど、そうつぶやいた後、俺は瞼を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] コピー機はよれたコピー用紙入れると巻き込んで壊れるから、余計にそうなるよね(゜ー゜)(。_。)ウンウン
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ