第十話 所持金を確認したらドン引きしました
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『小鳥の宿』に入ると、一階はテーブルと椅子が並び、食事をしている人がちらほら見えた。
寝泊まりだけでなく食事も出来るみたいだ。
「おや、いらっしゃい。」
入ってすぐにフーさんと同じ赤髪の恰幅のいい女性が俺に挨拶をしてきた。
人当たりのいい笑顔にフーさんのお母さんかなと思ったが、
「お母さん!この人がハイキさん!アシトさんからの紹介!」
どうやら当たりだったようだ。
フーさんのお母さんは「ああ!」と言いながら、
「アシトさんから聞いてるよ!いいよ、部屋なら空いてるし、三食食事付で一泊銀貨三枚だよ。」
銀貨三枚が安いのか高いのか分からないが、手持ちには困っていない。
せっかくの紹介だし、この親子なら安心していいだろう。
「でしたら、とりあえず十日分でお願いします。食事は必要ない時があるかもしれませんが、その時はご連絡しますので。」
十日分の宿代、銀貨三十枚を女将さんに渡すと、女将さんは驚いた顔をしたが、すぐに大笑いした。
「いや~、アシトさんが紹介するだけあるね!礼儀もしっかりしてるし、金払いもいい!延長する時は遠慮無く言いなよ!」
女将さんはそう言って俺にカギを渡してくれた。
「部屋は二階の一番奥、夜食や酒は別料金ね。困った事があったら私かフーにね。」
「ハイキさん、十日間よろしくね!」
二人の言葉に俺も笑顔を返す。
「ええ、よろしくお願いします。」
*******
部屋はベッドとテーブル、椅子が置かれているだけの簡素な物だった。
ベッドを触ってみて分かったが、部屋のベッドは現代日本のホテルベッドと違い、中々の固さのマットレスだった。
ホテルのずっしり沈む布団とは正反対の…学校の体育の授業で使ったマットに近いな。
とは言え、雨風を凌げる場所が出来たのはよかった。
フーさんが少し話してくれたが、宿によっては従業員が眠っている客の荷物を盗むという事も珍しくないと言う。
カギもかかっていてもマスターキーを使えば難なく部屋に入れるし、食事に睡眠薬を混ぜる方法もあるとか…
あの親子はそんな事をするようには見えないし、わざわざそんな話をしたと言う事は心配する必要はないだろう。
俺はベッドに倒れると、スマートフォンを取り出した。
ユーランに入る入場料に銀貨七枚、宿代に銀貨三十枚。
今日の出費としては銀貨三十七枚。
…正直、どれだけの金額かさっぱり分からなかった。
ユーランに入る前に【収納】から適当に貨幣は出していたが、一体何がいくらの価値なのか、俺は知らない。それに【収納】から取り出す時に、銀貨の枚数もそこそこあったし、『金貨』の文字も見えていたのであまり気にしなかったのもある。
フーさんに聞けば色々教えてくれそうだが、『貨幣の価値も知らないで来た田舎者』と思われるのはキツい。
今後何か活動するにしても、支障が出る可能性もある。
…と言う訳で、女神様。
使わせてもらいます。
女神様の手厚いサービスに感謝しながら、俺はスマートフォンの【最新貨幣価値】アプリをタップした。
アプリが起動し、すぐに画面に文字と色々な貨幣の写真が表示される。
【ユーランの貨幣情報】
『ユーランで主に使用される貨幣の価値は次の通りです。
・大金貨…日本円で約百万円
・中金貨…日本円で約十万円
・小金貨…日本円で約一万円
・銀貨…日本円で約千円
・銅貨…日本円で約百円
なお、日本で言う一円、十円単位の貨幣は存在しません。
また、大金貨を除く貨幣は十枚で一つ上の貨幣に交換出来ます。
物価ですが、現在大きな変動はなく、安定しています。』
「なるほど…」
今日の出費は日本円で三万七千円という事か。
少し大きい出費だったかな。
俺は【収納】アプリを開き、貨幣のアイコンをタップした。
一応、現在の所持金だけは確認しておこう。
必要最低限の物だけ買って、どうにか……
…あれ?
俺は自分の目がおかしくなったかと思い、一度眼を閉じてもう一度画面を今度はしっかりと見た。
『現在所持貨幣
・大金貨…三十枚
・中金貨…五十枚
・小金貨…三十枚
・銀貨…百六十枚
・銅貨…二百枚
日本円換算で三千五百四十八万円です。
※金額が多いので数字表示をします。
現在所持金は日本円で3548万円です。』
………
…………
……………
………………
「はあああああああ!?」
思わず大声が出てしまった。
三千万円!?
なんだそれ?
いやいやいやいや!
女神様どうなってるんですか!?
ブウウン!
「!」
スマートフォンにメール着信のお知らせが入った。
送信者は…女神様だ。
タイミングはいいけど。
まさか、ずっと見ている…訳ないよね。
ええと…なんて書いてるのか。
『お金について
【収納】に入れたお金は困らない程度に用意したから、遠慮無く使ってね!』
だった。
…さて、一度落ち着いて考えよう。
まず、【最新貨幣価値】アプリの情報を信じるとするなら、この宿は一泊三千円となる。
食事付、それに掃除も丁寧にされているから値段としては適切だろう。
次に広場の屋台だ。
しっかりとは見ていないけど、銅貨、銀貨の言葉は確かに聞こえた。
まあ、祭りの出店もいい値段がするし、特に変なところはない。
…つまり、だ。
「…女神様。」
『困らない程度』には違いないけど…
「これ、遊んで困らないだよな…」
と言う訳で、転移して半日。
すごいお金持ちになってました…
ははは…
いや、どうしよう本当に…