3話-5
話は冒頭へ遡る──。そして、遡りすぎたので、三十分単位でスキップし、四回ほどで追いついた。
「以上がペタンクのルールっす。分かりましたか?」
「ウィ」
「ウイです」
「うぃ」
「ウィ」
「……ウィ」
絵茉、チョコ、私、世良先輩、西園寺先輩は返事をした。
「まだ照れがありますが、初日なので良しとするっス! では、片付けるっス!
」
「まさか絵茉がいるなんて思わなかったよ」
「あたしも。多分これを読んでたからだと思う」
絵茉が鞄から取り出したのは「マイナースポーツ大全集」と書かれたルールブックだった。成る程、鴨がネギを背負っていた。
私たちは隣駅のファーストフード店にいた。片付けを終え、そのまま解散するのもなんだからと、宇佐見先輩がみんなに声をかけてくれたのだ。チョコは西園寺先輩、世良先輩と話している。
「この本は先日ウチが教材棚から借りてた本っス。返すのがめんどくさくて……絵茉が借りたそうだったので貸してあげたっス」
──先輩、ほぼ口に出してます。
それにしても、宇佐見先輩と絵茉はよほど仲が良いと見える。先日も一緒に走ってたし、部活中はいつも一緒なのだろうか?
「んなことないよ。あたしもルー先輩も雑食だから、色んな所に顔だしてて、お互い会わない事もしばしばあるし」
「そうなの?」
「あのなぁ、球技って一口にいっても沢山あるんだよ。うちは大会のある時だけ希望の球技の代表として登録して、後はやりたい球技を片っ端からしていていいんだ。といっても、殆どの奴はサッカーならサッカー、野球なら野球だけどな。あたしらは、アレだ。漫画とかでよく見かける、助っ人だ」
「そう、真の主役っス」
きけば、二人とも各球技で大会が行われる毎に参加しているらしい。ピンチの場面だけ出場して、ピンチを乗り越えるとベンチに引っ込む。多くの部員から尊敬と羨望を受け、女子ウケが非常に高いらしい。
世良先輩も話に乗っかってきた。「今年のバレンタインで、月卯のもらったチョコの数ときたら。一週間はチョコで生活できたよ」
それは凄い。
「来年は上原さんも凄いかもね。持ち帰る為の袋を用意しといた方がいいよ」
「あたしはあたしで彼氏にチョコ作るので、その袋に入れる事にしますよ」
絵茉、彼氏持ちの余裕を見せて私にマウンティングをとるのはやめてくれ。
「彼氏って、よく一緒にいる背の高い坊主の子でしょ。いつから付き合っているの?」
「それはですね……」
絵茉と世良先輩は私を置いてけぼりにして二人で恋愛話で盛り上がる。世良先輩もワンゲルに彼氏がいるそうである。恋人同士で同じ部活……さぞ楽しいんだろうなぁ。
女子にモテて彼氏もいる二人をうらめしそうに、いや、うらやましそうに見ていたら、肩を叩かれた。宇佐見先輩がこちらを見て、サムズアップする。
「ストレスは運動で発散するっすよ。ウチも付き合うっス」
大変嬉しいが、男性との恋愛経験なさそうな、そして関心なさそうな宇佐見先輩にフォローされて、少し複雑だった。




