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花束を持って、君と  作者: 雲雀ヶ丘高校文芸部
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3話-2

「よろしいでスカ。これからルール説明をするっス。その後総当たりで実戦をするんで、ちゃんと説明を聴いて、怪我のない様気をつけるっス」

 宇佐見先輩が私たちを順番に見ながら目線で確認をとる。皆頷いたのを目視して話を続ける。

「この」しゃがみこんで用具が仕舞われている箱の中から鉄球を拾う。「鉄球は中が空洞で重さは約七百グラム。主に鉄やステンレスでできているっス。これをこの様に持つっス」

 宇佐見先輩は左手に乗せた鉄球を右手で掴み、掴んだ手をそのままゆっくり後ろに引き、手首を自然に曲げる。手を下ろしたまま猫ちゃんポーズをとってると思えばいい。

 絵茉が地面に爪先で人が一人立てるくらいの円を描き、そこからカラフルな小さい球を投げた。球は教室の端から端位までの距離を飛んでいって、落ちる。

 絵茉が円から出て、代わりに宇佐見先輩がそこに立つ。宇佐見先輩は先程絵茉が投げたカラフルな球の方を向いた。

「そして、目標物に寄せる為に手首のスナップを効かせて、こうっ!」先輩が鉄球を投げる。鉄球は綺麗なアーチを描きカラフルな球との真ん中位の地面に落ちる。落ちてからも勢いが止まらず、そのまま少し転がって、カラフルな球の横にピタッと止まった。

「トレビアンっ!!」多分絵茉は褒め称えたのだろう。先輩とハイタッチしてお互い喜んでいる。

「今のはドィミポルテ。目標物との中間の距離に落ちて、そのまま転がって寄せるポワンテと呼ばれる投球方法の一つっス。

 じゃあもう一度最初からするっス。今度は専門用語で説明するので、同時に動きを見て理解するっス」

 絵茉がカラフルな球と鉄球を拾いに行き、再び箱の中に入れた。宇佐見先輩は先程と同じようにゆっくりと球を拾った。

「まず、プレーを行う地面をテランと云うっス。ラインを引いて、その内側がテラン、テラン外はブールが落ちても無効となるっス」

 ブールとは鉄球の事だろう。先輩が軽くブールを持ち上げた。「テランの横にはコートがあって、競技者以外はそこに待機するっス。では、ゲームを始めるっス。まず、ジャンケンかコイントスで先攻を決めるっス」

 先輩と絵茉がジャンケンして、先輩が勝つ。絵茉はコートに、先輩はテランに立つ。

「先攻のチームはサークルを描くっす。今回は既に描いているので、このまま続けるっス。

 先攻は続いて、このビュットを投げるっス。距離は六から十メートルの間っス」

 先輩はカラフルな球を投げた。ちょうど先程絵茉が投げた位の距離に落ちた。

「そして、ブールをビュットに近づける様に投げるっス。三つのポワンテの一つ、ポルテで今度は投げてみせるっス」

 先輩の手から離れたブールは、先程よりも高く、細いアーチを描いた。ブールはビュットの近くに落ちて、少しだけ転がってまたもや目の前で止まった。

「直接当てるティール・オ・フェールというテクニックもあるっスけど、それはビュットの近くにブールがごちゃついた時が効果的っス。

 次は後攻の番っス。後攻は、先攻が投げたブールよりもビュットに近づける必要があるっス。先攻のブールより近くか、ブールがなくなるまで投げ続けるっス。今回のルールはドゥブレットなので、一人につき三個のブールを投げられるっス。なので、六個ずつで十二個っスね。十二支と同じっス」

 絵茉がブールを放り投げたが、弧を描いたまま、ビュットを越してしまった。もう一度投げて、先輩のブールにあたり、弾き飛ばす。二投目の絵茉のブールがビュットに最も近くなった。

「ブラボー! 一回目のティールは外したっスが、二回目は素晴らしいオフェールだったっス。

 これで先攻の攻撃に戻るっス」

 その後、全てのブールを投げ終えた。合間に「ビアン」や「トレビアン」の言葉が行き交った。

「これで一メーヌの終了っス。ビュットに一番近いのが私、次も私、その次は後攻になるので、二点貰えたっス。

 メーヌを勝ち取ったチームが次の先攻になるっス。ビュットを中心にサークルを描き、ここからビュットを投げるっス! そして、再びブールを投げるっス。

 これを続けて、十三点先取したチームの勝ちっス。理解できたっスカ?」

「「ウィ」」

「……ノン(ぼそっ)」

「自信なさげな返事っスね。まぁ一度やってみるっス」


 その後、総当たりで六メーヌほどやってみて、次第にルールも掴めてきた。フランス語で褒め称えるのが恥ずかしく、普通に「ナイス!」「いいよ!」と云ってたら、「羽月さん! 褒める時はビアン、トレビアン、ブラボーっス! いいですか? まず、最高に良いポワンテを決めた場合は……」普通に怒られてしまった。他のみんなは、「ぶ、ブラボーぉ(照)」とか「とれびあ〜ぁん(照)」と頑張ってるが、恥ずかしすぎるでしょ。

 そりゃ修弥がポワンテしたらそれだけでトレビアンだけど、発音が正しくできているか分からない外国語を喋るのは、日本人である私には恥ずかしいのである。


「以上がペタンクのルールっす。分かりましたか?」

「ウィ」

「ウイです」

「うぃ」

「ウィ」

「……ウィ」

 絵茉、チョコ、私、世良先輩、西園寺先輩は返事をした。

 そう、今回の「下克上」は、南フランス発祥のスポーツ、「ペタンク」なのである!!

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