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花束を持って、君と  作者: 雲雀ヶ丘高校文芸部
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1話-5

「ねぇ、しゅうちゃんっ! 見て見て、桜!」

 今日は入学式。駅から学校まではほんの数分の距離だけど、途中にある川沿いに桜並木を見つけた。上流から沢山の桜の木から舞い落ちたであろう桜の花びらが流れてきて、それが太陽のきらめきと混ざりあって輝いて見える。ふと下を覗くと、鯉が餌と間違えて食べようとしてた。

「しゅうちゃん、嬉しいね。また一緒の学校だね」と私──羽月真央が話しかけるも、「それ、何度目だよ」と、修弥──倉多修弥は何やら文庫本に目を向けたままの様子。でも、今日は彼もいつも以上に表情がやわらかく、先程まで私たちは電車の中で他愛のないおしゃべりをしてた。

 飄々と本を読む修弥に、眼鏡と本が似合うなぁ、恰好いいなぁ、いやいや、このままじゃ事故にあってしまう、と目まぐるしく思考を切り替えていた私だが、あっという間に校門へ着いた。

「真央ーっ! 修弥ーっ!」校門で手を振りながら迎えてくれたのは、中学からの友達の上原絵茉ちゃん。明るい髪をしていて、さばさばしながらも非常に女子力の高い人である。と、その隣にいる背の高いむす〜っとしているのが、水谷大和くん。絵茉の彼氏で、修弥と中学の頃はブラスバンド部に所属していた。運動もスポーツも体育もできる人。頭も良いらしいが、それ以上に周りをよく見ていて、皆からの信頼が厚く、中学の頃も一目置かれていて、クラスメイトからよく相談されていた。

 この浮かない顔は修弥といるときいつもこうだ。本人曰く──修弥といるといつも振り回される。それに毎回付き合わされるせいで、あいつの顔を見ただけでこんな顔になってしまった──そうだ。修弥が学校で部活で伸び伸びできたのは、実際大和の功績が大きい。とりあえず手を合わせておこう。

「やめろ真央。いきなり手を合わすな」眉間の皺が深くなった。

 絵茉と大和が仲良さそうに並んで立っていて、私は思わず右側をそっと見た。私と修弥も周りからそう見られているのかな。修弥の表情を窺うと、彼は「よしっ」と云いながらパシっと本を閉じた。

「おはよう、大和。おはよう絵茉。今日もバカップルやってるか」

 大和は溜息をつく。「お前らに云われたくないわ。それにな、こんな大事な入学式早々にギリギリにくるなっての」

「すまんな。昨日の夜から準備に忙しくてな。これでも頑張った方だ。それにな、先程真央が手を合わせたのは、お前が坊主で、ご利益がありそうだからだ」「なんだと」男たちは朝からジャブを打ち合ってる。ご苦労様です。

「真央、行こー。二人も、早く行くよ!」絵茉の呼びかけで、ようやく動き出す。いつもの感じだ。

 こうして私たち四人は、ぴかぴかの制服を着て、桜に出迎えられて仲良く校門を通り抜けた。

 私たちの新しい冒険が、これから始まる!

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