2話アフター
「下克上」が終わった後、生徒会室に集まりました。時刻は夜十一時、今日はこのまま一泊するそうです。
「とても白熱した戦いだった。お疲れ様」
古都会長がそれぞれに労いの言葉をかけてくださり、その後将棋で云うところの感想戦をした。
「漫研の漫画か。見落としてたな」
「どうぞ、お貸ししますよ」
「いいのか?」
「明日朝返してくださいね」
「俺も読ませてください」
「順番な」
伊吹先輩と羽月さんと会長が仲良く楽しそうに話をしている。一緒に漫画を読みながら、伊吹先輩と会長を中心に、戦法や能力などを分析して盛り上がっている。
「これは生徒会録にも書かれていたな」
「なら見せてくれよ」
「生徒会員なら読めますよ」
「……」
情報を得たい伊吹先輩と、秘匿する会長の目線だけの静かな攻防が始まる。間で羽月さんが「あっ、ここはしゅうちゃんが」「ここ、しゅうちゃんが教えてくれたんですけど」と、空気を読まずに喋り続ける。生徒会の人たちが、放置してそれぞれの作業をしている。
チョコちゃんと私は、一緒にコーヒーを飲んでいた。
「おめでとうチョコちゃん」
「ありがとうございます。ねぇ、一華さん」
「なに?」
「今度、何処か遊びに行きませんか?」
「いいね。私、伊吹先輩の店でバイトしてるの。そこのホットサンドが美味しいから、チョコちゃんさえよければ、一緒に行かない?」
「うん、一華ちゃん。一緒にいこう!」
「!」
私たちは互いに対戦相手だったけど、それ以上にあの時共に体験した出来事を心で共有して、以前よりも距離が近づけた気がする。チョコちゃんと遊びに行くの、楽しみだな。またお父さんとお母さんにお願いしなきゃ。
夕方には、家族で双華と双葉の誕生日パーティーをした、二人とも私と三華からのプレゼントを喜んでくれて、お料理もケーキも沢山食べて最高の時間が流れた。
洗い物を終えて手を拭いている時、双葉がこちらへきて、指でちょんちょんと私の肩をついた。
「姉さん、こっちきて」
「ん」
他のみんなは隣の部屋でテレビを観ている。双葉は、私があげたプレゼントの箱をそっと持ち上げる。
「これ、つけてくれない?」
「いいよ」
鏡の前に双葉が座り、私は後ろに座ってプレゼントの箱をそっと開ける。中にはネックレスが入っていた。
双葉に合うかなと選んだネックレス。鏡に映る双葉は少し緊張していて、口元は穏やかに笑っていた。普段落ち着いている双葉が嬉しそうにしていると、お姉ちゃんも嬉しくなるぞ。
ネックレスの留め具を外し、双葉の背中から手を回して、首の後ろで留める。その時、双葉の耳元で光が煌めいた。
位置を調節し終えて、双葉に尋ねる。
「どう?」
「ん。良い感じ。姉さん、ありがとう」
「どう致しまして。誕生日おめでとう」
それから私たちは、少し話し合った。やがてテレビ番組が終わって家族が動き出したのを見て、双葉はネックレスを外して箱にしまった。
「姉さん、これ気に入ったわ。今度つけてみるね」双葉はそう云って、自分の部屋にプレゼントをしまいにいった。
双葉が離れていって、聞こえなくなる位の距離になってから、私はそっと呟く。
「双葉、おめでとう。彼氏が出来たのね」
ネックレスをつけるときに耳元に煌めいたのは、あの日陽翔くんと私が購入したイヤリングだった。三華と見た後ろ姿も、双葉だったのだろう。双華が着なくなった洋服を彼女が着ていたのだ。
あの日、伊吹先輩の呟いていた言葉を思い出した。
── あいつこないだ双葉ちゃんと一緒にいたけどなぁ。
先輩の洞察力にくすっと笑いながら、私は未来の妹夫婦にエールを送った。




