1話-4
それからが凄かった。
下駄箱で、廊下で、教室で。三年生も一年生も関係なく声をかけられっぱなしだったわたしは、少しずつだが状況が見えてきた。なんでも、この学校の神様のお陰で、選ばれし二人の生徒に猫耳が生えるらしい。二人の生徒は仲睦まじく学園生活を送ること。猫耳とは、二人が永遠に結ばれた証なのだ。
「全然違うっ!!!」
体育館へ朝礼に向かって渡り廊下を歩いている時そう話したら、絵茉にそう言われた。「大和、修弥はこのこと説明してないの?」
「ぜ〜んぜん。あいつは自分の事ばっかり話してたよ」肩を竦めた大和に、絵茉が呆れた様な顔をしている。「さいってー。あいつほんといつも何考えてんだか」
「しゅうちゃんは最低じゃないよっ。最高だよっ! 朝の時も、きっと何か素晴らしい考えがあってわざと口に出さなかったんだよ」 わたしは修弥を擁護する。そして、今ここに修弥が居ないことを再認識して悲しくなる。
「あんたはいつも修弥を褒めてんでしょ」絵茉も分かっていていつも彼を乏しめる。絵茉曰く、わたしが修弥を持ち上げ過ぎなのでバランスをとっているらしい。でも、今は悲しさが増すから、しゅうちゃんのこと悪く言わないで。
「真央、あんたが入学式の最中に倒れて眠っている間に、とんでもない話があったのよ」人差し指を立てながら、眉間に軽くシワを寄せ近づいてくる絵茉。
絵茉も大和も中学からの腐れ縁だ。絵茉はいつも鈍いわたしに説明してくれる頼もしい存在だ。修弥は勢いよく飛び出す馬で、絵茉はその手綱。大和は馬にくれてやる鞭で、二人の塩梅で修弥はどこでだって輝いている。わたしは修弥にまたがってるだけで、後は勝手に面白い方へ行くことができた。だけど、高校からは違う。
わたし、修弥、絵茉、大和。ずっと同じクラスだったわたし達だが、
修弥は今年、別クラスになってしまった。