2話-21
「近いな」
伊吹先輩と私は下見に来ていた。会場内の中央にあまり距離を開けず二軒の家が建っていた。周囲の地面はコンクリートで固められ、その周りには自然が広がっていた。柵はないらしい。家の裏手には庭があり、擬似的な畑や池があり、鯉が泳いでいたり、野菜がなっていた。
「これ、どうするんですかね?」
「意味があるのかもしれないな。」
庭の端っこに大きな物置があり、様々な物が置いてあった。シャベルやスコップなど雪を掬うものから、長靴、軍手、猫車、燃料や木材、その他もろもろが収納されており、伊吹先輩と私はそれらを一つ一つ検品していった。
「衣装はもらえるのか?」
「そのつもりです。服飾研から申し出がありましたので」
「長靴や軍手は被るだろうな。ま、一応持っていくか」
必要な物を持って玄関先へまわる。ドアを開けようとする伊吹先輩の手が一瞬止まって、ゆっくりと開けた。
中は結構広く、家具は充実していた。家電も揃っており、部屋は──、リビング、キッチン、トイレとお風呂、寝室が一つ。
二階への階段を登ると、寝室が二つ、物置部屋と思われる部屋と、そこのベランダから梯子で屋根に登れる様になっていた。二階にもトイレがあった。
「さて、この位でいいかな」
「そうですね」
私たちは確認を終えて、それぞれの家に戻った。必要な荷物──主に着替えを持って、再び会場内に戻る。今回は料理研究会からの申し出もあり、食材や調味料の提供があった。最低限必要なものを揃えれば、二泊三日の楽しいお泊まりごっこができる。
問題はそこだった──。
「おかえり」
「あ、おかえりなさい」
ソファーで寛いでコーヒーメーカーで沸かしたコーヒーを飲んでいる伊吹先輩の表情は、いつもと変わらない様に見える。テーブルの上にはいつものノートパソコンがおいてあり、通常運転の伊吹先輩だ。
「わ、私、荷物置いてきますね」
「待て待て、舞咲、お前どの部屋で寝るつもりなんだ?」
「えっ!? え〜と、二階の右の寝室にしようかと思います」
「それで俺は? 一階と二階のどちらにすればいい?」
じっとこちらを見る伊吹先輩。──そう、今日から二泊三日。私たちは同じ屋根の下、男女で生活をしなければいけないのです。
⭐︎
「勝ったな」
「もう真央さん、さっきからそれしか云ってませんよ」
私たちは家の下見にやってきた。会場内に二軒の家が並んでいた。庭付き一戸建てという奴だ。白い粉を撒きながら庭を歩く。野菜がなっていたので、収穫した。池に鯉が泳いでいたので、物置から水槽を持ちだして鯉をすくった。ポチャポチャ水をこぼしながらも十二支の能力を使って運び、リビングの窓際に置いた。
「真央さん!」
「だって雪が降ったらこいつ風邪ひいちゃうよ」
「だからって家に持ち込む人がいますか!」
チョコは生真面目で冗談が通じないところがある。ま、気にしないけどね。
家の中は広く、冷蔵庫には調理されたものがタッパに入っていて、それがぎっしり詰まっていた。
「本当にご飯が用意されている」
「よかったですね。あ、これ私がリクエストしたものだ」
チョコのリクエストのプリンがいくつか並んである。冷凍庫にはアイスも入っていた、
ジュースも沢山ある。
「こりゃ、毎晩パーティだね」
「楽しみですね。皆を呼べばいいじゃないですか」
「そうだ、しゅうちゃんも呼ぼう!」
部屋を見てまわると、一階に一つ、二階に二つ寝室があった。チョコは一階、私は二階の部屋に決める。
「どうしてチョコは一階なの?」
「お風呂もトイレも近いですからね。それに、朝寝ぼけて階段から落ちないようにです」過去に階段で落ちたのだろう。お子様パジャマを着ながら、寝ぼけたまま階段を踏み外す映像が浮かぶ。
「『下克上』もいいもんですね」
「私たちは負けてもデメリットないもんね。思いっきり楽しもう!」
「そうですね、はいっ」
私とチョコはジュースの入ったコップを当てて、乾杯をした。




