2話-13
「映画、面白かったね」
「ですね。話題になるだけはありました」
今日は陽翔くんとデートです。新百合ヶ丘で朝一番に待ち合わせをして、私が以前から気になっていた映画を観賞しました。彼が映画代を出してくれたので、スナックと飲み物代を出しました。これでイーブン。
映画館を出ると時刻が昼近くだったので、またまた私の希望で近くのマプレへ。マプレには色々なお店が入っていて、飲食店だけでも目移りしてしまうが、今日は迷わず二階へ。お店の前にくると既に二組ほど待っていて、中を覗くと満席。
名前を書いて談笑してたら、今日は回転が良いのかすぐ名前を呼ばれた。席に着くと店員さんが黒板を持ってきてくれる。黒板には十種類以上もの料理が書かれていて、その中から二品選んで、それと別にメインとご飯とお味噌汁がつく。陽翔くんはシェアしてくれるとの事で、計四品私が選ばせてもらった。
独特のお膳の上に、一つとして同じでない小鉢が可愛らしく並んでいる。メインもボリュームがあり、どの料理も生姜が効いている。
はじめは映画の感想を話していたが、次第にこの店の料理の話に変わった。陽翔くんは自身は料理をしないが、味にはうるさいらしい。
「一華さんちの料理の味が好きなんですよ」嬉しい事をおっしゃる。
彼はその後ご飯を三回もお代わりをして、私は店員さんに怒られるのじゃないかと冷や冷やした。「だって、茶碗が小さいし」中学生男子の食欲をなめてた。
うちで食べてる時は遠慮してるのかなぁ。少し気になりはしたが、先程からもっと気になる事があり、うずうずしている。ええいっ、訊いてしまおう。
「陽翔くんはさ、双華の誕生日プレゼント、何を買うかもう決めたの?」
「えっ? な、何を云って……あちゃちゃ」陽翔くんはお代わりした熱々の味噌汁を溢しそうになっている。まだ食べるのか……。
「だって、あの子たちの誕生日月末だもん。それでプレゼント渡して、告白するんでしょ?」
「そんなつもりじゃ。俺はただ、いつもお世話になっている人がいて、その人にプレゼントをあげようと」
「でも、私にアドバイスを求めたって事は相手は女の子でしょ? それも中学生の」
「それは深く詮索しない約束じゃないですか! その為に映画代も払ったんですから、追求しないでください。……自分で稼いだお金しかないので、予算は3000円です」
なんと、陽翔くんは今日の為に親と約束をしてお小遣いをもらう為にしっかり働いたそうな。健気である。3000円は、中学生にしては大金。
「それだけあれば結構なんでも買える気がするけど」
「彼女な喜ぶ品でないと意味がないんです。一華さんのセンスなら満足すると思ってアドバイスを受けようかなって。一華さん、一華さんが今一番欲しいものは何ですか?」
彼女って、女の子って云ってるじゃん。と心の中で突っ込む。それに、私が欲しいものを訊いてきて、これで渡す相手が私だったらどうすればいいのよ……なんだか顔が熱くなってきた。
「……どうしたんですか? 顔が真っ赤ですよ?」
「なんでもないのよ、なんでも。そろそろ出て、外の風にあたりましょう。会計~、あ、この伝票持ってレジに行くのか」恥ずかしいのを誤魔化すかの様に喋り倒してレジに向かう。ご馳走さまでした。