1話-3
「はいっ! 撤収!!!」聞き覚えのある声がする。
煙が晴れると、修弥の後ろに楽器を持った集団が見えた。彼らは修弥を小突きながら一言ふた言いうと校内へ歩いていく。「今度パン奢り、な」「もうこれっきりにして下さいよね」「全く朝から世話が焼けるぜ」修弥は視線をわたしに合わせたまま、見ないふり、聞かないふりをしている。が、後ろからきた男に頭をどつかれた。
「いってぇ〜。何するんだよ、折角恰好良い場面なのに」修弥は痛がり、彼の頭の上の耳がぴくぴく動く。可愛い。
「何だとは何だ。朝練さぼってまで手伝わせたかった事ってこれか」修弥をどついたのは中学からの同級生、大和だった。
「大和くん………」
「真央、ごめんな朝からわけわかんなくて。修、お前ちゃんと説明したのか?」
「ああ? いーんだよ。おいおい分かるんだから。なぁ、真央。お前はこれから色んな奴に絡まれるし、色んな伝説を生み出すと思うが、これだけは云っておく。勘違いするなよ、ヒロインはお前じゃなくて、お前のいってぇっ!!」
「ほら、もう行くぞ。悪いな、真央。俺ら一年だからこれ以上朝練さぼると先輩方にシメラられるからさ」大和は修弥の首根っこを掴んでずるずる引きずって行く。修弥はギャーギャー云いながらも、チューバ奏者の大和の腕力には抗えずそのまま校舎へ消えていった。
「うわぁ、しゅうちゃん恰好悪ぅ」口に出す言葉と反対に、わたしは心臓が鳴りっぱなしだった。まさか修弥とわたしが同じ耳が生えるなんて、運命的にも程がある! 凄い! そう思って頭を撫でてみたが、わたしの頭にはもう猫耳は生えてなかった。