1話-2
スマホに視線を戻しながら、わたしは自分が触れているピンっとしたものを確認した。猫のような耳が生えていた。
「にゃーっ!!!」
驚くわたしの頬から、髭が生えた。
わたしの叫び声に周りが一斉に振り向く。そういえばあまり意識してなかったが、ただでさえ登校時間なので大勢の生徒がいるのに、加えてこの掲示板である。「おい」「あれ、もしかして…」なにやらわたしを指差しながらひそひそ云ってるが、ネコ、ネコって聞こえてるぞ!
「何これ!? どうなっているの!?」バッ、と修弥の方を向くが、………いないっ!?
「ちなみに俺はここだっ!」いつの間にか左端の掲示板の前に修弥が立っている。彼はプラトンの様に、いや少しレイアップ気味かな、頭上を指している。
大袈裟なジェスチャーにいつも通りの修弥らしさを感じながらも、わたしは掲示をみて再度驚いた。彼の名は、花がついてる中で一番上に書かれていた。
「さすがしゅうちゃん。実力があるとは思ってたけど、まさかここまでと「それだけじゃないっ!」
わたしの発言に被せてきた修弥は、おもむろに手元のバッグからフルートを取り出して、美しいメロディを奏で始める。ピィィィィ、小鳥の囀りのような音色が響いて、修弥の周りに煙が出てきた。煙が彼の姿を隠している間に、演奏が段々と豪華になっていき、最終的にファンファーレになって、音色が途切れると同時に、姿を現した。
「にゃ、にゃーっ!!! しゅうちゃん、それって!」
キラキラと光る薄くたなびいた煙の中からゆっくりと姿を現した修弥は、絹糸の様な腰程もあるサラサラと流れる白い髪にルビー色の瞳、陶器の様にすべすべの肌、片側だけ口角を上げて微笑んでいる口元は変わらずに、
頭の上に耳が生えていた。