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花束を持って、君と  作者: 雲雀ヶ丘高校文芸部
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6話-23

「すまん! このとおり!! 頼む!!!」

 帰ってくるなり目の前で手を合わされ戸惑う彩乃。

「いやな、ど、どうしたんだよ一体……」他の助手も見てる手前迂闊に返事出来ない。「まずはきちんと説明するもんだろ? ちょっとこっちこい!」

 彩乃に引き摺られていく克馬の様子を五人の助手が見ていた。

「あらあら、克くんと彩乃ちゃんったらいつの間にそんな仲にねぇ」

「最近克くん変な話し方が少なくなってきたけど、それと何か関係あるのかしら?」

 温かく見守る女性陣に比べ、男性陣は阿鼻叫喚であった。

「ぎゃー!!! 克くんと彩乃が抜け駆けしてるー!!!」

「おいおいおい!! 今、手ぇ繋いでなかったか!!? 顔赤らめてなかったか!!?」

「そんなの眼鏡をかけてたから丸には見えなかったよ! それより仲良くするなら丸も一緒がいいよー!!!」

「あらあら。なら丸、私たちと帰りにクレープでも食べて帰る?」

「そうそう。ちょうど行こうか? って話してたの」

「うわぁ、丸、絶対行くよ!!!」

「今度は丸が裏切ったぁぁぁあ!!!」

「ぎょえぇぇぇええ!!?」

「何云ってるの? 克くんと彩乃も誘ってみんなで行くよ!」



 助手たちが騒いでいる頃、逃げる様にあの場から離れた二人は校舎裏まで来ていた。急いで走ったので、二人とも膝に手をついて息を荒げている。

「克馬……、何やってんのよ……。急にあんな態度取られたら……変に思われるでしょう?」

「すまん……、だが……少し勢いでやらかした事が……あったから……はぁはぁ」

「話ならちゃんと聞くわよ……、何よ、あなたあたしより体力ないの? 変身すればいいじゃないの」

「そうだな……、ふぅ。

 よし、解除っと。なら話すから落ち着いて聞いてくれ」

 変身してあっという間に息を整えると変身を解く克馬。あっけなく呼吸が整う克馬に呆れた顔をする彩乃。「っ本当ずるい能力ね。いいわ、話って何?」


「はぁ!? それであなた、相手に合わせて引き下がれなくなって隠し玉があるとか云ったわけ?」

 『音楽対決』のカードを引いた事で動揺した克馬は、つい自分が強力なカードを持ってるかの様に相手を煽ってしまった話を彩乃に話した。彩乃は先程から呆れっぱなしだ。「それであなた、まさかその隠し玉って……」

 何かを感じとった彩乃。克馬はゆっくりを片膝をついて、両手を組み、上目遣いで彩乃を見た。

「彩乃さん、お願い出来ませんか?」

「っ!!? やるわけないでしょっ!!! どうしてあたしが!?」

 克馬は立ち上がって両手を大きく広げる。「そこをなんとか!」

「いやよ! あなた、あんなヘッドフォン作れる位なんだから、少しは音楽を齧ってるんでしょ? 自分一人でやりなさいよ!」

 突き放される一言を受けて、克馬の眉毛が垂れ下がる。広げていた両手を震わせて、再び組む。「お願いだ。俺はもう一人でやるのが怖いんだ。誰の意見も聞かず自分勝手に作り上げても、また暴走するのが関の山だ」

「……」

(克馬は七月のレースの事を云ってるのだろうか? それともまた別の事……?)

「それに、今回のテーマが『音楽対決』って聞いて動揺したって伝えたよな。あれは自分がまた音楽に(・・・・・・・・)関わる(・・・)って事にびびってたんじゃない。……正直云うと、これを伝えたら彩乃の歌声がまた聴けるからって震えてたんだ。武者震いみたいなもんだよ」

「──っ!!」

 ある意味というべきかどうか。実質告白の様な事を云われて彩乃の顔は赤く染まった。

「な、な、な」

「あの雨の日以降歌ってくれてないだろ? あんなに楽しそうに歌う彩乃の姿を他の奴らにも見せてやりたいんだよ! 今までは俺が独占してたけど、独占していたいけど、でもチャンスがあったらみんなに聴かせたいんだ! 彩乃はこんな良い声で歌うんだぜって! こんな可愛いんだぜって!」

「はわわわわ」

「お前じゃなきゃ駄目なんだ!! お願いだ、彩乃!!! お前が必要なんだー!!!」

「ぎゃー!!! やめろー!!! 恥ずいー!!!」

 彩乃は真っ赤になり克馬の肩をバシバシ叩き始める。そこへ……、

「いやはや、二人の様子を見にきたら、告白中でしたか」

「彩乃ちゃん……お幸せにね……」

「丸は感動で泣いてるよ!! おめでとう!」

「そうだな、丸の云うとおりここは祝わなきゃな」

「そうだぞ、了。こんなめでたい事はない。克くん、美人の彩乃を仕留めるとはやりましたね!!」

 照れる愛美と、むせび泣く他の四人。

「いや……こ、こ、こ……ちがっ!……かつ……かっ、かん、かんけないから!(訳、いや、これは違うんだ! 克馬が勝手に云っている事であたしは関係ないんだから!)」

「そ、そうであ〜る! 我輩は彩乃の事などなんとも思ってないのであ〜るよ!? ごふっ!!」克馬の顎に彩乃のアッパーがクリーンヒットする。

「てめぇはもう少し他人に伝わる話し方をしろー!!!

 日奈子たちもな。ち、ち、ち、違うんだぞ? 最後だけ聞いたら勘違いして当然だけど、この話はもっと長くてだな、」

「そんなに長い告白文句だったのー!!?」

「違うっつーの!!!」

 その時、愛美が間から割って入った。

「私たちは今日は活動を終えて、これからクレープを食べに行こうって話してたの。彩乃たちも行くでしょ? 続きはあちらでしましょ」

「続きも何も、だーもうっ!!! ……こっちは恥ずかし過ぎて溶けちゃうっての」彩乃は後ろ半分を小さい声で云ったので、みんなは聞き取れなかった。

「何か云った?」

「なんでもねぇよ」

「ならいいわ。待ってるから支度を終えたら急いできて! ……その前にそこでぐしゃぐしゃのスチールウールみたいになっている彼を起こしてあげてね」

 云われて振り返ると、先程アッパーを喰らった克馬がゴミの様に地面に転がっていた。

「あっ! 克馬!! どうしたのあなた!!!」

「お前のパンチにやられたんだよ……がくっ」

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