6話-17
──七月、某日。
『さぁ、とうとうやってまいりました!!!
梅雨明け宣言が出てから、今日で半月。辛かった期末試験を乗り越えた私たちを祝福するかの様に、お天道様もその笑顔を振りまいております!!!
ここ、雲雀ヶ丘高校の所有するわくわくアイランドでは、──』
「いつも……ながら……」 彩乃。
「部長は人使いが荒いです……」 日奈子。
「あの……気持ち悪い……話し方も……」 剛。
「やめれば……いいのにね……科学! 科学!」 愛美。
「でも……部長恥ずかしがり屋だから……」 丸三郎。
「これ……どこしまうの? あらら」了。
──みんなぐったりしていた。ここ最近、参加者全員のマシンの調整に付き合わされて疲労困憊していた。昨晩やっと久しぶりにしっかり睡眠を取ったが、それでも疲れは残っていた。
部長は自ら一人でマシンを調整していたみたいだ。他のマシンを担当している皆に迷惑はかけられないと助けを断り、今朝やっと完成して、説明書を渡された。
説明書を渡した後、少し休むと克馬がいなくなった後に残された六人。
「なんだこれ……」愛美が説明書を持つ手がわなわなと震えている。「私ら柱に括り付けられる事になってるぞ? 大丈夫か?」
「丸は部長を信じるよ! それよりこのマシンは恰好良いねぇ!」克馬が組み立てたマシンに頬擦りする丸三郎。
「丸!? お前もうちょっと考えた方がいいぞ? 確かに部長は天才だけど、それと俺らの安全が保証されるかどうかってのは関係ないからな?」
「いいんだよぅ。いざとなったら部長が助けに来てくれるって丸は分かってるから」
愛美と了、丸三郎が話し合っているのを遠目に見ながら、彩乃と日奈子と剛も悩んでいた。
「なぁ、こんなスピード出したら風圧も凄いんじゃないか?」
「丸裸だからね。せめてカバーがあれば違うんだけどな。日奈子はどう思う?」
「ここ最近の克くんの気合いの入れようからみて、勝つ事しか頭の中にないと思うよ。克くんだけに勝つってね!」
日奈子のギャグにため息をつく彩乃と剛。「何云ってんだよ。
あいつは能力で不死身かも知れないけど、あたしらは何かあったらすぐお陀仏だぞ?」
「そうだぞ、日奈子。レース中はヒートアップするぞ? ユニコーンは処女が好きだからこの中に処女がいたらそいつは助かるけど、童貞迄は助けてくれないだろうし」
「つ、剛君! しょ、処女って!?」
「ん? なんだ?」
日奈子が言葉に過敏な反応を見せるが、剛は特に変な事を云ったつもりはない。
シーンとした空気が流れて、彩乃が剛と日奈子に話しかけた。
「はぁ、デリカシーない奴だな。いいか? あたしらは同じ様な恰好してるから大丈夫だ。パッと見なら男か女かわからねぇ、何かあったら全員……だよ」
「彩乃!? ねぇ、一緒にどうなるの!!? 一緒に助かるんじゃないの?」
「そんなのわかんねぇよ。……なんだ剛?」
話している途中で剛の視線を強く感じた彩乃。剛は少し困惑している様子で苦笑いをしていた。
「いや……、蒸し返す様で悪いけど、彩乃も処女って言葉に敏感に反応するんだなって思って。てっきり軽く流されるだけだと思ってたからさ」
「なななっ、なに云ってんだ! あたしは日奈子が困ってたから助けようと思ってだな!」
「だけどお前……さっきから顔真っ赤だぞ?」
「うん……彩乃ちゃん真っ赤」
「えっ?」