6話-10
──翌日の放課後。
「仕事はあらかた片付けたか?」
「まだこれだけあるよ。どうすんだよ、これ」
呆れた顔で両手を広げる女子部員。
女子部員の目の前には、昨日の半分程の仕事が残っていた。
「これくらい大した量じゃない。君たち!」
「「はい!」」
女子部員の見ている前で克馬と助手たちが動き出し、あっという間に仕事を分担し取り掛かっていく。
呆然としている女子部員の袖を引っ張って、克馬が彼女にも仕事を割り振る。
「君はこれだ」
渡された仕事を見て彼女は驚く。ちょうどこれから自分が行おうと考えていた仕事だった。
その日はそれぞれが抱えた仕事を消費していって、そのまま部活が終了する。
克馬は助手たちと女子部員を周りに集めた。
「おっほん! では、これから新しい仲間を紹介する。第六の助手を務める、彩乃君だ。
彩乃君。僕らは皆僕らだけでいる時は下の名で呼び合う。僕の事は克くんと気軽に呼んでくれ」
「呼ばねえよ!!!」
「愛美」「日奈子!」「剛だ」「丸の事は丸と呼んで!」「こいつは丸三郎! 俺は了!」
「……あぁ、よろしく」
彩乃は次々と出された手と握手をする。最後は嫌そうにだが克馬とも交わした。
「彩乃君には主にスケジュール管理や折衝役を担当してもらう。後は雑務だ」
「雑務?」
「つまり何でも屋って事です」
「頑張って下さい!」
「頼りにしてますよ」
「コクコク……丸も」
「よかったぁ。今まで一人で仕事を抱えて大変だったんだ」
「大船に乗ったつもりでいるぞ! これからよろしく、」
「「お願いしま〜す!!!」」
克馬を筆頭に皆で口を揃えて頭を下げる。
「ちょっ、まっ! ちょとまてよっ!!」
「そうだ。これを渡しておこう」
克馬は側に置いてあった荷物を左手で拾い、右手で懐からもう一つの荷物を取り出した。重ねて渡す。
「これは……」
「白衣と丸眼鏡。助手の証だ」
「いや、いらねえよ。おいっ! 離せっ!」
助手の証を返そうとする女子部員を、周りにいた助手が取り押さえて着替えさせる。眼鏡を変え白衣を着た彼女は、他の部員と遜色ない見た目になった。
「うむ。意外と似合ってるな。よし!」
「てめぇら……いい加減にし、うむ゛っ!」
「これからよろしくね!」
ハイテンションな日奈子に急に抱きつかれ、胸を圧迫される新たな助手。
「では! 今日は解散! 明日からまた頼む!」
「「ありがとうございました〜!!!」」
「おいっ! ホント待てよな!! おいってば!!!」
抱きつかれたまま身動きができず、その間に皆帰っていく。
「じゃ。また明日ね! 彩乃ちゃん!」
「……」
そして日奈子も帰っていって、彩乃は一人残された。
「……疲れた」
──こうして、この日は解散となった。