表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花束を持って、君と  作者: 雲雀ヶ丘高校文芸部
156/436

5話-25

 北野川先輩の芸は、予想を遥かに超える出来映えだった。

 超絶技巧──と云っても差し支えないかもしれない。幾本もに増えたかの様な手の動きによって、カップやもこもこが宙に舞い続けた。

 もこもこは出し入れ出来るのか予想もつかない場所から現れ、カップにあらゆる回転や複雑な動きを与える。

 変幻自在に飛び回るカップと、とても柔らかい身体を使った舞は、観る者全てを魅了した。これらの動きが一人の人間の手で出来るのかと、まるで夢でも見せられた気がした。


 ──そう、不可能なのだ。


 この動きは北野川先輩が十二支の身体能力と自身の能力を最大限に用いて行なっている動きだ。その芸には称賛と畏怖を覚えるが、実際にそれらを再現しようとすると、プロの大道芸人でさえ雲を掴む様な物になる筈だ。

 私はアートとしての彼女の芸は楽しめたが、迫力がありすぎて反応に困ってしまった。まるで線引きをされた向こうの世界からやってきて、未知の生物の動きでも見せられているかの様な……そんな動きだった。






(やはり先輩は凄かった。実力も圧倒的だ)

 私は北野川先輩の演技を見終えて、あらためて自分がどの様に芸を披露するべきか確信した。

 職人気質の先輩の様な芸ではなく、あくまで観客に寄り添う為の魔法。かけられた人たちがワクワクして動き出したくてたまらなくなる、そんな芸をしてみたい。

 握りしめる拳に鈍い光が浮かび上がる。芸を終えた先輩に観客席総出で立ち上がって拍手を送っている。

 立ち上がらない私に気づいた一華ちゃんが心配そうな視線を寄こすが、私は安心させる為に笑って首を左右に振る。

 私の瞳に宿る想いが見えたのか、一華ちゃんもやる気に満ちた表情で胸の前で拳を握った。私たちは軽く拳をぶつけ合う。その時、私の拳を包んでいた光がぽっと弾けた。

 光を受け取って笑い出した一華ちゃんの手を借りて私は立ち上がる。つけ髭をつけ、まだ興奮の中にいる同じ列の人たちの前を通る。

 準備はオーケーだ。私たちは私たちの芸を披露するだけ。

「思いっきり楽しもう」

「うん! チョコちゃんの云う魔法を、みんなに沢山振りまいちゃお!」

 そして私たちはステージへ向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ