1話-11
結局、熱は下がらずそのまま土日に突入してしまい、月曜日に久しぶりに登校したら、既に部活に関して手遅れになっていた。
修弥とした約束も、何故修弥が部活のことを内緒にしてたのかもぐるぐるいつまでも頭の中を駆け巡っていて、情報の整理をしようとしても。周りから話しかけられ続けて一向に整理がつかなかった。
自分に猫耳が生えたのも、大好きな人に騙された恨みで化けたのかもしれない。
そんな事を考えながら体育館へ朝礼へ向かう途中、絵茉が話しかけてきた。
「真央、あんたが入学式の最中に倒れて眠っている間に、とんでもない話があったのよ」人差し指を立てながら、眉間に軽くシワを寄せ近づいてくる絵茉。「このことは修弥にきいたと思うけど、希望部活を週末までに決めろですって! あの後クラス内で大変な騒ぎになって、一生懸命部活を調べてさ、部活見学してさ、もう人気の部活なんかは倍率高いから、早めに希望出さないと見学さえさせてくれなくって。陸上はそんなことなかったでしょ。だけど、あたし球技部だったから大変で大変で。今朝の真央が猫になった話も凄かったけど、いくら部活が強い高校だからって、こんな入学と同時に決めさせるのもどうかって思うわけよ。それに」
「決めてない」
「え?」
「決めてないの、部活。しゅうちゃん教えてくれなかったもん」私が不貞腐れて云うと、絵茉の顔が般若の面の様になった。
「あんにゃろぉぉぉ。よくもたばかりやがってぇ」プツン、プツンと血管の切れた音が聞こえるが、気のせいでありたい。「あんたもだよ、真央! あいつに騙されて部活に入れなかったってのに、なんでそんなあいつの肩を持つんだ!」絵茉が私の両肩を掴んで、前後に揺する。やめて、朝ごはん出ちゃう。
「絵茉やめて。出るっ。出るからっ。はぁはぁ……。それにね。この件については肩持たないよ。私だって部活入りたかったし、凄くショックだったよ。でも、しゅうちゃんが何も考えずこんなことしないと思う」
「ならなんでよ」
「多分……私をとっても驚かせたかったのかも……わぁ、やめて絵茉、出ちゃう出ちゃう」
顎に手を当てて、大和が考える様に云う。「修は本当に何も云ってなかったか。土日とか、もしくはその前に」大和も修弥と長い時間を一緒に過ごした仲だし、なにより私たちの共通の疑問──あの時、何故修弥は演奏してまで自分が変身するところを見せたのか。
「──多分、修はこのことを一人で抱え込む気がするな。」
私と大和が今朝の事を絵茉に伝えると、絵茉は納得した。「成る程ね。確かにその行動なら何かありそうだもんね。あいつらしい振る舞いだけど、こりゃまた振り回されそうだね」と云って、大和の方をチラリと見る。大和はやめろやめろーと首を左右にぶんぶん振っている。
こんなに困っているのに、よりによって修弥は違うクラスだった。こんな時こそと思わずにはいられず、私たちはお互いもやもやするものを引きずるように重い足取りで体育館へ向かった。