4話-19
「おいおいおいおい」
(どうしたんだ一体!)
伊吹は信じられなかった。目の前の橋が燃え盛って、炎が躍り狂っている。橋の前にはハーレクイン・シスターズが停まっていて、優穂が何が叫んでいた。
(なんだ? 何て云ってるんだ)
近づくにつれやっと声が聞こえてきた。
「橋の真ん中に舞咲さんが!!!」
「なにっ!?」
こちらに向かって泣き叫んでいる優穂。どうやっても助けるのは無理だと悟ったのだろう。望みを他に託して、隣で血の気のない愛理と二人佇んでいる。
「今消防隊が向かってるって! だけど、間に合わない!」
一刻を争う事態だ。
伊吹はそんな二人に頷いて、マシンごと炎の中に飛び込んだ。荒れ狂う炎に飛び込むのは勇気がいるだろうが、今の伊吹にそんな事は関係なかった。
(一華!!!)
──時は少し遡る。
第二チェックゲートを通り過ぎた辺りで、伊吹は先程の出来事を反芻していた。どうすればあの時妨害をさけて走る事が出来たのだろうか。
自分の能力をもっと状況に合わせて臨機応変に使いこなせないだろうか? 確かに頭の中では何十、何百とパターンが浮かび上がるが、実際の場面に直面してしまうと思う様に動けなくなる。それで陸上部との時も大道芸研究会との時も敗れてしまった。
「くそっ。次はないぞ!」
今回も負けてしまったら他の部員に面目ない。そう自分に云い聞かせる。
分身、炎。筋斗雲。如意棒。マシンに乗りながら色々と試してみる。そして、今まで隠していた巨大化と芭蕉扇。
地煞七十二変化の内、唯一使えた巨大化。そして、火焔山の炎を消す為に、鉄扇公主から奪った芭蕉扇。
羽月との「下克上」では輪っかを締められた時点で能力が使えなくなった。
缶蹴りの時は相性が悪かった。結局使わず仕舞いだったのだ。
だが今回はどうだろう。最後の戦いだと思って全て出し尽くしてしまおうか。
要は引き出しの多さではなく引き出しの使い方なのだ。優穂の綿毛なんて二種類の羊毛を出すしかない能力。なのに彼女はあんなにも能力を使いこなしている。
「俺もなりふり構わず能力使うか!」
そう思ったら、身体の余計な力が抜けてきた。坂道に入る手前でふと見上げたら、一華のマシンが鼻を伸ばして崖に捕まっていた。
「ははは。凄いなあいつ……!」
その時閃いた。自分も分身に崖を登ってもらえば時間短縮になるんじゃないのかと。
(やれるだけの事をやろう)
そう思い、イメージをしながら分身を生み出していく。摩擦を大きくし、壁に対しても滑らない身体。どの崖も登れる柔軟な動き。それらをイメージして生み出した分身は、本当に崖を登り出した。
「いいじゃないか!」
そう思って登り続けていると、突然、崖の左の方から火の手が上がった。急いで登り切ると、信じられない事に橋が燃えている。
「おいおいおいおい」
(どうしたんだ一体!)
伊吹は急いで橋に向かった。