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花束を持って、君と  作者: 雲雀ヶ丘高校文芸部
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4話-17サイド

「おお、すごいっスね。橋が燃えてるっス」

 月卯の進行方向に、燃え盛る山が見える。

 ラクダ山に挟まれて、橋に火がつく事で今しがた生まれたばかりの炎の山。まるで西遊記に出てくる火焔山だ。

「これはハットトリックの真の姿を見せる時がきたっスね。ハットトリック、変形っす!!!」

 月卯はそう叫ぶと、操縦席にある大きなウサギのマークを拳で叩いた。

 次の瞬間、ハットトリックの隙間という隙間から蒸気が吹き出し、内部からスピーカーが出てきて大音量でノリノリの音楽が流れる。

 タイヤが外れ、ハットトリックも人参部分と操縦席が分離する。ハッチが開き、月卯が空中に飛び出す!

 操縦桿などが収納され、代わりにタイヤが変形合体してボールになり、操縦席のハンドルの位置に現れた。

 人参は前後逆さまになり、「卯」と書かれたヘタの部分が開く。開いた穴からキィィィィンと甲高い音が鳴り、操縦席の屋根についていた二つの耳が左右に降りてきてぴんと真っ直ぐ伸ばした翼になる。

 操縦席と人参が再び合体して、平らになった操縦席に月卯がポーズを決めたまま着地する。ヘルメットから色のついたフェイスガードが下りて、鼻から上を覆う。操縦席が盛り上がり、両足を包むと真っ赤なスパイクシューズになった。これでスタンバイは完了した。

「行くっす! ハットトリック、飛行バージョン! ウチのシュートでひとっ飛びっス!!!」

 月卯がシュートモーションに移る。左脚を軸に、右足を大きく後ろに引く。


「すうぅぱあぁぁぁ!」


 月卯の履いている右足のスパイクが振動しだす。


「うるとらあぁぁぁ〜!」


翼となった両耳の後ろ部分に小さな穴が横並びに開き、コォォォという音と光が溢れてくる。


「はいぱぁあぁぁぁ〜〜!」


全体に緊迫ムードが漂い、ギュイィィィンと右足から、キュイィィィンとマシンから音が漏れる。


「しゅうぅぅぅぅうとおぉぉぉお!!!」


 月卯がサッカーボールに蹴りを叩き込む!

 インパクトの瞬間振動が止まり吸い込まれる様にサッカーボールの芯にキックが決まる。そのキックの威力がボールに伝わり、マシン全体を経由してエネルギーを推進力に変える。

 ──ゴォッ!!!

 マシン全体がロケットになり、爆発と燃焼を繰り返しながら一直線に飛ぶ。

 飛び続けたハットトリックは、橋を挟んで向こう側のラクダ山の片割れにその鼻先を突っ込んだ。その衝撃で山肌にひびが入り、いくつかの岩や瓦礫が地上へ落ちていく。

「もういいっスよ。ありがとっス」

 月卯が慈愛に満ちた表情でマシンを撫でる。するとマシンは元の姿へと変形し、ずるずると地面まで滑っていった。

「おスっ! まだまだ追いつけるっスよぉ。急いでレースに戻るっス」

 月卯はそう云うと、再びハンドルを握った。

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