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逆ハーレム補正




 逆ハー補正――略さず言うと逆ハーレム補正――というのは、いわゆる『主人公補正』の一種である。『主人公補正』がわからない人はググってほしい。

 恋愛関係に偏重した主人公補正というか、つまりはとっても異性に好意を持たれやすいようになっているやつだ。

 笑いかけるだけ、頭をなでるだけで異性を惚れさせる場合は、『ニコポ』『ナデポ』などの俗語で表されたりもするけど、詳細は割愛する。

 『逆ハーレム』なので、この場合は男性からの好意を持たれるやつである。

 


 いわゆる逆ハーレムものは好きだ。日常的に画面の向こうで堪能するくらいには好きだ。イケメンおいしいです。乙女ゲーは私のバイブル。

 いかにもな正統派キラキラ美形も派手ではないけど整っている系の陰のある美形もなんでもおいしくいただけます。最近は泥臭く渋いオッサンとかもイけるようになりました。二次元ならね!


 だがしかし、現実にそれはいらない。マジいらない。



 なんでそんなことを大真面目に言うかというと、私は、自分がこの世界の主人公だ! とまでは思わないものの、結論として『逆ハー補正』を得ているとしか考えられないと思っているからである。


 そしてそれは、恐怖でしかない代物なのだ。

 何が恐怖かって思う? 思うよね。私も当事者じゃなかったら思った。

 でも、よく考えてみてほしい。


 モデルもしてるとかいうクール系校内アイドルと人気のない図書室とかで二人きりになって、もちろんコミュ能力とかオタク間でしか発揮できないような底辺オタクだから話しかけるとか無理だし、同じ空間で同じ空気吸っててすいませんって言いたくなるような顔面格差をひしひしと感じながら、無言耐久レースかよって感じにひたすらに無言が続くっていうのを両手の指じゃ足りない位繰り返して。

 度々そのアイドルを探して現れる人間に突き出すのもアレだしと思って適当にごまかしたら、そのうちに「……あんた、何も言わないんだな。俺がここによく避難するっての、全然噂にならないし。誰かが探しに来ても、ごまかしてくれるし。何も聞かないでくれるから俺は助かるけど――変な奴」とか「……なんか、あんたの傍っていいな。安心できる」とか言われて何故か距離が(物理的に)縮まっていって。

 挙句の果てに「なあ、あんたが迷惑じゃないなら、だけど、――その、今度映画付き合ってくれない? いや、ペア招待券もらったんだけど、一緒に行くような奴が思いつかなくて。あんただったらいいかなって」とか言われたらどうよ。

 怖くない? 明らかに勘違いしてるよ安心されてもこっちはちっとも心が休まらないよって思わない?



 偶然が偶然を呼んで顔見知りになった完璧超人みたいな生徒会長様に「自分を飾らないんだね、キミは。そういうの、……好きだな」とか目が潰れそうなキラキラ笑顔で言われても、それただの怠惰だから不精だから女子力低いだけだから! ってならない?

 そりゃあなたに近づく女子は外見にも手ェ抜かないし社交性抜群の人ばっかりだろうけど、だからって物珍しげに興味持たれても困るんですよ! 主に周りからの嫉妬的な意味で!


 しかも出会うイケメンが本当多種多様でキャラも濃いんだ……。顔面偏差値が高い現世においてでも飛びぬけてる容姿なのは当たり前、生まれてくるときに神様から二物も三物ももらってきたんですかってくらい才能に溢れてて、生い立ちとかでトラウマだのなんだのはあるけど根は善良。

 なんなのそのハイスペックっぷり。前世から引き続いての凡人に喧嘩売ってるの? イケメン爆発しろ。


 っていうかそもそも、トラウマ解消イベントとか日常的に起こりうるものなの? おかしくない? 何ゆえ通りすがりの女生徒Dみたいな私にそんな話しようと思った。気分? 気分なの? 自分の個人情報をもっと大事にしてください。


 とりあえず俺様系男子は当たり前みたいに人を拉致るのを止めていただきたい。犯罪だから。私が訴えたら多分負けるよ? 善意だってわかってるからしないけど。

 でも私別に高級料理とか興味無いんで。最新式のホームシアターとかヘリコプターでの空中散歩とかも興味無いんで。

 初めて百均入ったときとかファーストフード食べた時の反応は面白かったけど、正直価値感違いすぎてマジ別世界の人間だわー。


 他にもいろいろいるけど、共通してるのはみんな外見だけでも女が釣れて、中身のスペックでも女が釣れて、むしろうっかり男も釣れそうなくらいの人誑しスキル保持者で、何故か私に好感を抱いているということだったりする。


 それが一般的に言われる恋愛かどうかはこの際関係ない。とにかく当たり障りのない対応(コミュ障的精一杯の努力)をしているだけで何故か好感を持たれるという状況がどれだけ不可解でどれだけ恐怖を煽るものか想像してみてほしい。なんか違うものが見えてるとしか思えない。


 この状況を楽しめるタイプのオタクもいるだろうけど、あいにくと私はそうじゃなかった。むしろ日々起こるゲームのイベントみたいな出来事によって二次元と戯れる時間が減るのが憂鬱で仕方ない。

 そもそもいくら二次元っぽいとはいえ現実リアルの人間と接触せざるを得ないのがストレスだ。人付き合いが苦になるタイプのオタクには罰ゲームでしかない。


 二次元への愛に生きるのに何の不満もないのになんでこうなるって言いたい。相手がいないから言えないけど。転生物でよくある神様だの高位の次元の存在だのが「私が転生させました」的に出てくるイベントはなかったのだ。


 つまり苛立ちをぶつける先すらないので、せめて愚痴れる相手が欲しい。でも共感を得るには前世の記憶があって前世と同じ容姿(not美形)で尚且つ二次元愛のオタクでないとならないんだよ? いるわけないよねー。




 ……なんて、思っていた頃もありました。





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