異世界転生したようですが
私はどこにでもいるような平々凡々なオタク(女性向け特化型・一般向けと男性向けは嗜む程度)である。
容姿はまあ、ふた目と見れないというわけではない。けど間違っても美形の括りには入らない。成績はとある事情により授業中に内職していてもなかなかの成績を維持できる程度。でもまあ、平凡の範囲内である。
ちょっと平凡ではないかもしれないのは、別の世界で生きた記憶があるという一点だ。『とある事情』はここにかかってくる。
とは言っても、二度目(記憶にある限り)の人生の舞台は、ぶっちゃけ前世と大して変わりなかった。文明とかそういうのの点において。
いや私にとっては嬉しかったけども。何せ前世好きだった本とかゲームとか普通に存在してるわけだし。心のオアシスたる二次元が無かったらうっかり絶望して死んでたかもだし。
え、二次元への愛をこじらせすぎだって? 仕方ないよ、いくら変わりないって言っても前世の知り合いはいないわ家族ももちろん前世と違うわむしろ変わりないのは自分くらいってのはわりときつかったんだ。
そんな中、前世好きだったものが現世にもあるとか知ったらのめり込むだろ常識的に考えて。
しかし前世とあんまり変わりない世界とはいえ、いわゆる逆行とか前世の過去時間軸に生まれたとか考えるには、ひっかかる点が幾つもあった。なので私は、現世は前世を基準に考えると別世界――異世界であると結論付けたのだ。
オタクにわかりやすい例で言うと、前世で楽しんだコンテンツが存在するだけでなく、その発売年月が早まっていたり、絶対に前世にはなかったと言えるのに誰もが知ってる的な名作が存在したりしていたのだ。
……まあ、逆だったら血涙を流していたかもしれないけど、つまるところコンテンツが増えてるだけなので、「なんか前世と違うんだなぁ」くらいにしか考えてなかった。私にとって大事なのは楽しめるコンテンツの存在であって、「世界がちょっと違うかも?」くらいは些細なことだったのだ。
そんなこんなで心の支えもあったので、私は特に問題なくすくすく育っていった。
前世とは違う家族に最初は戸惑ったけど、赤ちゃん時代から意識があったので慣れた。
仲もまあ良好だったし。というか気づいたらなんか溺愛されてた。多分末っ子で唯一の女で尚且つ(エセ)病弱っ子だったせいだと思われる。
前世の記憶と意識と子どもの体のバランスがどうとかそういう理由かは知らないけど、幼少期は超ひ弱っ子だったのだ。ちょっと本気出して考えると頭オーバーヒートするとかないわー。
でも、歳を重ねるごとにアレ?って思うようになってきたわけですよ。
だっていくら前世の記憶があるからって、顔まで全く前世と一緒ってなんか変でしょ。どうせなら美少女だったらなーって思ったよ思いましたよ今生の家族が美形ぞろいだから尚更ね! むしろ橋の下で拾われたんですかって訊きたくなるレベル。
で、ここって現実っていうかどっちかっていえば二次元に近いんじゃね? って考え始めたのは中学くらいの時だった。うんつまりショタが二次成長を経て少年になるあたり。美少女が大輪の華として咲き始めるあたりと言い換えてもいい。
要はありえないくらい周囲の顔面偏差値が高かったという。なんのいじめかと思った。マジ異世界だと思ったね。もう種族が違うんじゃねっていうレベル。
とはいえ、見渡す限り美形、美形、美形というだけなら、「二次元かな?」と思うより「顔の平均レベルが激高なのかな?」と思うだけだった。
そう、この世界には、美形以外だってもちろんいるのだ。ただしそれは――いわゆる『モブ』としか表現ができないのである。
「わりあい整ってるのでは?」というクラスメイトから、「え、こんないかにもな悪役顔があっていいの?」と思う不良まで、いろいろ居るには居る。居るけれど、一様に、なんというか……美形の面々に比べて、存在感が弱いのである。これはもう感覚の話なので、そういう感じがするとしか言えない。
でも、まあ、それだって、特に私のオタクライフに不都合があるわけじゃないし、そんなに深く考えたことはなかったのだ。――恐怖の『逆ハー補正』がかかるまで。