プロローグ(仮)
初めまして。システムが全くわからない…
前世、大ブームを巻き起こした乙女ゲームの世界。
「…畏れ多くも、お父様…?」
「どうした、イシュタル」
「…こんなに護衛は…いらないと思うのですけれど…」
「…お前の兄は既に剣技において敵はなく、次期国王…つまり、何か大事がない限り王宮内から出ることはない。よって通常業務内であれば護衛騎士は2人で充分。弟も然り、未だ稽古はつけているものの、既に魔術において敵はない。姉を護ると剣技も続けており、護衛騎士は3人で充分に身を守れると判断した。」
眉ひとつ動かさずこちらを見据える父は、浮世離れした美貌もあってか酷く冷酷な印象を受ける。視線ひとつで全てを従える氷の王。纏う空気は凍てついていて、慣れているはずの私でさえ、目が合えば伸びた背筋に冷や汗が流れるほど。
…それでも、その冷たさは。威圧感は。
私以外に向ける“それ”とは比べものにならなかった。
——いつか、我が国の王はどんな方かと尋ねられたとき、長く仕える臣下はこう答えたらしい。
『王は、常に無表情であり、冷ややかに世界を見下ろす。氷の仮面が溶けることはない。』
続くであろう言葉にしゅんとした私を見て、永久に溶けないとまでいわれた“氷の仮面”は瞬時に溶け去る。
整った細い眉は痛ましげに歪み、どうかわかってくれとばかりに口元が引き締まった。
「…私はお前が心配なんだ、イシュタル。生きていることが幻のような美貌は、数多くの者を魅了することだろう。暗殺は常に影に潜むもの。信頼する騎士を幾人つけてもそれから護れる保証はない。何かあってからでは遅いのだ、相手の10歩先を読め。」
優しく、甘く、けれども諭すように言われては流石の私も折れるしかあるまい。そもそも、一度決めたことを撤回するような父ではないのだから、私が折れることは初めから決まっていたこと。
それでも、それでも!!!
「ええ、わかっているわ。お兄様や弟と違って、私は女の子で、か弱い。それでも、よ?お父様。
……騎士団の団長に、護衛団の団長副団長…それに加えて突貫騎士2人なんて、私の周りの戦闘力、インフレもいいところじゃないかしら!!」
「それの何がおかしい?」
父は私に甘すぎる!!!!!!!